若手注目俳優・奥平大兼 完全オリジナル言語ウーパナンタ語に大苦戦「監督がOKといっても中野先生が…」
2023.12.27 17:0012月20日から配信がスタートしたディズニープラスオリジナルシリーズ『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』。中島セナとW主演を務める奥平大兼に、entax取材班が単独インタビュー! 実写とアニメで描かれる2つの世界を舞台にした、ファンタジー・アドベンチャー大作。中島セナが現実世界<横須賀>に住む空想好きな女子高生ナギを、奥平大兼は異世界<ウーパナンタ>からやって来た落ちこぼれのドラゴン乗り・タイムを演じた。オリジナル言語「ウーパナンタ語」に苦戦し、“言語OK”待ちだった現場や、CG撮影の裏側を奥平が語る。
(前編・後編の後編/前編はこちらから)
■アニメパートのアフレコではプロの声優のすごさを実感
――『ワンダーハッチ‐空飛ぶ竜の島‐』は、現実世界とアニメの世界を行き来する作品。落ちこぼれのドラゴン乗り・タイム役の奥平さんはアニメシーンからの登場でしたが、声の演技は初体験ですよね。いかがでしたか?
奥平 やはり声の演技は普段の芝居とは違う形だったので、ものすごく手応えがあったかというと、正直自信はないです。撮影順としては実写シーンの方が先だったので、タイムという役をすでに4か月ほど演じてきていたということもあり、キャラクターに関する理解という意味では心配ありませんでした。でも、表情や体の動きがアニメーションですでに決まっている中に声を吹き込むというのは、なかなか難しかったです。
先に声入れをされたプロの声優さんの音声を聞きながらアフレコしていたのですが、改めて声優さんのすごさを思い知りました。普通の芝居ではなかなか出会えないような表現方法で声の演技をされていたので。おもしろかったし、勉強になりました。
――特にどういう部分に難しさを感じましたか?
奥平 声だけで感情を表現するところ、セリフを言い切る時間が決まっているところですね。いつもだったらセリフを言うスピードや言い方も自由ですが、声の演技だとそういった決まり事がある中での表現を見つけなくてはいけなかったので、初めての体験でした。
声を入れる時の映像は、まだ完全にアニメーションが完成していない状態なのですが、その線画を見る機会ってなかなかないですし、アニメ制作の裏側が見られてうれしかったです。家で何となくアニメを観ている時と違って、こうして仕事としてアニメをとらえるのは新鮮でした。
■オリジナル言語「ウーパナンタ語」のOK待ち撮影も
――タイムは異世界<ウーパナンタ>から現実世界にやってきますが、作中では「ウーパナンタ語」という、この作品のためだけに生み出された完全オリジナル言語が出てきます。覚えたりセリフとして言うのは苦労されたのではないですか?
奥平 難しかったですね……(と、しみじみ回想)。ウーパナンタ語は映像で見聞きするより、演じている側は体感4~5倍くらいの文字量をしゃべっている感じなんですよ。特に緊張したのは、新田真剣佑さん演じるアクタと対峙(たいじ)するシーンです。ウーパナンタ語をいっぱい話すシーンでもありましたが、そこが真剣佑さんと初めて共演する日だったんですね。かなりの長台詞を通しで撮影する予定だったので、まずウーパナンタ語をちゃんと覚えて発音しなくちゃいけないし、さらに真剣佑さんと初めて会うという緊張が重なって、前日は「明日どうしよう」とプレッシャーでした。幸い、ウーパナンタ語をつくった言語学者の中野智宏先生が毎回現場に立ち会ってくださっていたので、当日は何とかなりましたが。
中野先生には「いくら芝居が良くてもウーパナンタ語の発音が悪かったら台無しなので、ダメなものはダメと言ってください」とあらかじめお願いしていました。実際に、監督が「OK」を出してくれて、周りもみんなOKだな、という感じになっていた時でも中野先生が「ちょっと今のは発音が……もう1回お願いします」ということもありました。でも、ウーパナンタ語の正解をほとんどのスタッフは知らないから、何がだめだったのかわからない。僕もわからない時すらありました。そういう時でも中野先生はちゃんとこだわってくださったので、全体のクオリティが上がったと思います。なかなか撮影中に「もう1回」とは言いづらいですしね。
――実際、とてもリアルにこういう言語があるように聞こえました。
奥平 そこは監督とも中野先生とも話して、ウーパナンタ語はきちんとやっていこうという方向でやってきました。
■ウーパナンタ語ネイティブ用のテキストで猛勉強
――覚え方はどうされたのですか?
奥平 最初は丸暗記しようと思ったんですけど、タイムは十数年間その言葉を使って生きているわけだから、それじゃダメだなと思って、中野先生に文法書をつくってもらったんです。英語のテキストみたいに単語や用例集も載っている本で、ウーパナンタ語ネイティブのためにつくられたものをもらいました。それを見ながら、先生にリモートで教えてもらったりしました。あとはヘッドホンをつけて先生が話すウーパナンタ語を繰り返し聞き、脳にすりつけるようにして覚えました。現場に入ってからもやりながら覚えていましたね。なので、最初の頃話していたウーパナンタ語と、最終話近くのウーパナンタ語では全然違うと思います(笑)。
■気持ちをつくるのに苦労したCG撮影は常に“本番2回”
――壮大な冒険ファンタジー作品なので、グリーンバックでの撮影もあったのではないでしょうか。巨大なシャボン玉のような球体から飛び出したり、相棒のドラゴン・ガフィンに乗って空を飛ぶシーンなど体験されていかがでしたか?
奥平 こうしてCGがふんだんに使われている作品に出演するのが初めてだったので、規模の大きさや撮影方法はとても新鮮でした。例えばタイムの相棒、ドラゴンのガフィンは映像だといつも隣にいますが、実際に芝居をする際にはいないんですね。でも、タイムにとってのガフィンは、なくてはならない大切な存在。安らげる存在でもあるし、今まで苦楽を共にしてきたバディなので、実際にはいないのにそういった気持ちを持つのが難しかったです。動きよりも気持ちのつくり方ですかね。ないものを想像しながら芝居をするという経験がなかったので、いつもとは違う頭を使いました。
CGのシーンは、本番が2回ありました。ガフィンの動きをつけてくださる方がいらっしゃって、その方と一緒に1回。その動きを覚えた上でもう1回、ガフィンなしの本番があるんです。本番2回というのは初めての経験でした。だんだん慣れてきましたけど、終わった頃に「そういえば普通は本番1回だったよな」と思い出しました。
――何のために本番が2回あるんですか?
奥平 CGを後から編集するためだと思います。本番1回目の動きに沿ってCGをつくって、2回目のガフィンがいないバージョンにはめていくためだと思います。
■演じたタイムの「あきらめない心」を見習いたい
――アクションも含め初挑戦が多くて大変だったとは思いますが、奥平さんが感じる、この作品のおもしろさ、演じていて楽しい部分を教えてください。
奥平 伝えたいおもしろさはいっぱいあるのですが、とにかく他にない作品だと思うので、まずは純粋に楽しんでほしいです。映像の美しさ、ファンタジー、アクション、友情など楽しめる要素がいっぱいあります。
僕が演じるタイムがあきらめない心を持って選択していくことによって、自分が進む道が変わっていく物語。タイムのように人を信じる心、人を疑わない心を持つというのは言葉にすると軽くなるけど、すごく大切ですごく難しいことですよね。実際に僕だったらできないと思います。でもタイムにとってはそれが普通なので、演じていて見習いたい部分でした。
【奥平 大兼(おくだいら だいけん)Profile】
2003年9月20日生まれ。東京都出身。2016年、スカウトで芸能界入り。2018年、演技未経験で受けたオーディションに合格し、映画『MOTHER マザー』(2020年)で長澤まさみの息子役に抜てきされる。2020年『恋する母たち』(TBS)でTVドラマに初出演し、以降も映画やドラマ、CMなどで活躍。2023年は映画出演が相次ぎ、TAMA映画賞で最優秀新進男優賞を受賞。現在ディズニープラスオリジナル『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』に出演中。2024年3月8日に鈴鹿央士とW主演の映画『PLAY! 勝つとか負けるとかは、どーでもよくて』の公開を控える。
【作品情報】
『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』
ディズニープラス「スター」で独占配信中
<ストーリー>
現実世界<横須賀>に住む空想好きな女子高校生ナギ(中島セナ)はある日、異世界<ウーパナンタ>からやって来たという落ちこぼれのドラゴン乗り・タイム(奥平大兼)と出逢う。別々の地で、ふたりは周りと少し違う自分に生きづらさ感じている似た者同士だった。そして2つの世界に滅びゆく危機が迫るとき、遥かなるふたりの出逢いは、壮大な運命のはじまりだったことを知る——。