吉田都版「ジゼル」幽玄の舞、再演──この夏 英国ロイヤルオペラハウスへ

2025.4.11 13:15
米沢 唯らの写真

2025年4月10日、新国立劇場オペラパレスにて、ロマンティック・バレエの名作『ジゼル』が開幕した。今回の公演では、心臓疾患による休養を経て、プリンシパルの米沢唯が新国立劇場の舞台で全幕作品の主演に復帰することでも大きな注目を集めている。

米沢は2024年7月、心臓に疾患が見つかり、『眠れる森の美女』のオーロラ姫役を降板したことを発表した。その際、「応援していただいている皆様には『アラジン』での突然の降板をはじめ、ご心配をおかけして、本当に申し訳ありません。医師の方と劇場と相談しながら、前に進んでいきたいと思います。見守っていただけると嬉しいです」とコメントしていた。

米沢 唯(ジゼル) 撮影:長谷川清徳

その後、米沢は同年10月の新国立劇場バレエ団『眠れる森の美女』でリラの精役、12月から翌年1月にかけての『くるみ割り人形』ではアラビアの踊りを務めるなど、舞台復帰を果たしていた。しかし、全幕作品での主演は休養後初となる。

米沢 唯(ジゼル) 撮影:長谷川清徳

本作は、2022年に吉田都芸術監督が初めて演出を手掛け、イギリスの振付家アラスタ―・マリオットと共に19世紀の古典を現代的に再構築した作品である。舞台美術はディック・バードが担当し、リトアニアの「十字架の丘」から着想を得た幻想的な世界観を創出している。

米沢 唯(ジゼル)、井澤 駿(アルブレヒト)  撮影:長谷川清徳

『ジゼル』は、生と死、愛と赦しをテーマにした物語である。吉田都芸術監督の演出では、英国バレエの伝統を重んじ、ダンサーの演技に重点を置いている。特に、言葉を使わないマイムを駆使した深い表現が特徴的である。米沢は、2025年4月のインタビューで、「今回の『ジゼル』は、私にとって久々の全幕作品の主演です。しばらく遠ざかっていたので、わくわくしています。振り返ると、この半年間は愛おしい時間でした。つらいこともありましたが、それを上回る素敵なことがいっぱいありました。劇場の対応、監督の言葉、ダンサーたちの励まし、ファンの方々からのメッセージ、舞台に立った時のお客さまのあたたかさ……苦しかったことなんかほんの少しで、その何十倍もの素敵なものをいただきました。何物にも代えがたい時間を過ごしました。感謝を胸に、前に進んでいきたいです。」と語っている。

米沢 唯(ジゼル)、井澤 駿(アルブレヒト)  撮影:長谷川清徳

指揮はポール・マーフィーと冨田実里が担当し、東京フィルハーモニー交響楽団がアドルフ・アダンの楽曲を奏でる。音楽、舞踊、演劇的表現が融合した本作は、まさに総合芸術の結晶といえる。

根岸祐衣(ミルタ)撮影:長谷川清徳

吉田都芸術監督コメント
私が演出しました『ジゼル』を再び皆様にご覧いただけることを、大変嬉しく思います。再演にあたり、指揮者にポール・マーフィーさん、そしてコーチングに初演でもステージングのアシスタントをしていただいた、ジョナサン・ハウエルズさんに来日していただき、バレエ・スタッフとともに綿密にリハーサルを重ねてまいりました。
『ジゼル』は生と死、そして愛と赦しの物語です。このドラマをより深めるために、マイムなど演技のリハーサルにも時間をかけてきました。ダンサーは声を発しませんが、例え踊りの部分であっても、まるで台詞を喋っているかのように感じていただけるのではないかと思います。この作品の世界観やストーリーが皆様の心に届くことを祈っております。

撮影:長谷川清徳

さらに、本作は2025年7月24日から27日まで、英国ロイヤルオペラハウスにて全5回の海外公演が予定されており、新国立劇場バレエ団にとってロイヤルオペラハウスでのデビューを飾る歴史的な舞台となる。

今回の公演は、日本の舞台芸術の成熟と深化を示す象徴であり、米沢唯の完全復活とともに、新たな感動を観客に届けることだろう。ぜひ劇場で、その舞台を体感してほしい。

飯野萌子、山田悠貴(ペザント パドドゥ) 撮影:長谷川清徳

【公演概要】
2024/2025 シーズン
新国立劇場バレエ団『ジゼル』
【公演日程】
2025 年
4 月 10 日(木)19:00
4 月 11 日(金)14:00
4 月 12 日(土)13:30/18:00
4 月 13 日(日)13:30
4 月 18 日(金)19:00
4 月 19 日(土)13:30/18:00
4 月 20 日(日)14:00

【海外公演】
2025 年 7 月 24 日(木)~27 日(日)
英国ロイヤルオペラハウス 全 5 回公演

撮影:長谷川清徳

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