『北斗の拳』を手がけた原哲夫が“天才現る!”とうなった高校生の漫画作品に、高橋ユウ「生きる希望をもらえる…」と感動

2025.3.28 11:00

一方、荒木さんのライバル・與儀さんも同じ賞に応募しようと構想を練っていた。しかし、まだプロット作りで悩んでいる様子。担当編集者と相談しながらキャラクターの設定等を考えていても、なかなかうまくまとまらない。そこには與儀さんが夏休みを過ごしたことも影響していた。

「夏休み前は“見捨てられたくない”とか“認められたい”とか、そういうの(自分の気持ち)を入れようと思ったけど、今はそういう気持ちが薄らいでいる。(夏休みに)妹と過ごしたから…」と、久々に家族との時間を過ごしたことで、描きたいものがぶれ始めていたのだ。「最近“なんでマンガを描くのか?”というのにそもそも悩んでいて…」と、マンガを描く意味すらも見失いかけていた與儀さんに、編集者は「もしかしたら、ちょっと前の與儀さんみたいな気持ちで苦しんでいる人がいるかもしれない。その人のために描いたら?」「救いがない人が、これを見て自分と重ね合わせた時に“ちょっと、もう少し、頑張れるかも”って思ってくれるとか。それだったら、マンガを作る意味ってあると思う」と語り、與儀さんの目には思わず涙が。彼女もまた真剣にマンガと向き合う漫画家の卵なのだ。

結局與儀さんは、プロットは仕上がったものの、締め切りまでの時間を考えた結果、今回の応募は断念することとなった。

荒木さんの写真

荒木さんは3回目のネーム作り。1回目の要素も生かしつつ2回目のものをさらに進化させ、壮大な見開きページも作られていた。「山口先生の“ちゃんと描きたいものはしっかり残して”という言葉がずっと残ってたから…」という荒木さん。ネームを見た山口先生は「僕はめちゃくちゃ好きだから、何言われても描いた方がいい!」と絶賛。背中を押された荒木さんはここから原稿作りを加速させていく。

締め切り前日の週末も1人学校で黙々と作業を続ける荒木さんに「頑張ってください!」と差し入れを持ってくる後輩も。4月には「全員ライバルなので」と宣戦布告をしていた荒木さんが、年末には「切磋琢磨(せっさたくま)できる友達がいるので、ここに来て良かったです」と言う。間違いなくこの1年で彼は大きな成長を遂げていた。

締め切り当日、ギリギリまで作業を続ける荒木さんの様子を見に山口先生が学校を訪れ、仕上がった原稿をチェック。担任の先生や担当編集者もやってきて、最後の仕上げ作業を見守る。そしてついに原稿が完成。作品のタイトル『海の声が聞きたくて』は最初の愛読者でもある山口先生が考えてくれたという。すべての作業を終えた荒木さんを笑顔で見守る山口先生たち。「これは賞を取って恩返ししないといけないですね」と脱稿直後の荒木さんは語っていた。

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