超ベテラン声優・堀内賢雄×チョー×堀川りょうがやりがいを感じる瞬間とは? 『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』同世代SP鼎談

2025.3.21 19:15

――おっしゃる通り、人物の立場によって見え方が変わってくるのが大奥という場所ですが、本作のストーリーをどうご覧になりましたか?

堀川:正室との間に男の子がないので、側室が産んだ子が次の天子様になるという、時代劇によくある世襲争いの話ではありますが、『劇場版モノノ怪』ならではの絵と雰囲気で表現すると違う魅力が出てくるなと感じました。実写と比べるとすごくファンタジーに見えますよね。おどろおどろしさを感じない、魅力的な大奥の物語だと思いました。

堀内:それぞれの人物に思惑があって、一人ずつの思いを紐解いていくと、ちょっとわかるな、なんて思うわけです。忖度(そんたく)しなければ今の生活を維持できないなら、忖度するのも仕方ないよなって。一方で、『四谷怪談』などで育っている自分としては、このタッチで時代劇をやると、新たな怪談になるんだな、これはホラーだなとも感じていましたね。

チョー:僕は1回ではわからなくて、全部で3回観たんですよ。最初は、あれよあれよで終わった。後半なんてすごいテンポだし、原色が次から次へとやってくるので、目がショボショボしちゃって(笑)。

堀内:おじさんだからね(笑)。

幸子(cv_種﨑敦美)
幸子(cv_種﨑敦美)

チョー:音もすっごく面白い。女性の叫び声に和楽器を重ねたり、音の使い方もすごくよくて。それに翻弄されちゃって、観終わった後は「何だったんだ」と呆然となりました。ストーリーはもちろんわかります。けど1回だけじゃ細かい部分がわからなくて、2回、3回と観るとわかることがありましたから。冒頭のシーンで将棋を打っているのは、大友と藤巻ではなく……。

堀内:あそこで大友の相手をしているのは、歌山ですね。

歌山(cv_相馬康一)
歌山(cv_相馬康一)

チョー:そうでした。歌山と打っていて、大友が「詰みだ」って言う。

堀内:そう。歌山に向かって、「お前はもう終わりだ」って言ってるんですよね。僕も3回観たからわかった(笑)。

チョー:1回目は、これは大友が勝つんだなと思ったんだけど、3回も観たら混乱してしまった(笑)。

堀内:観れば観るほど細かい部分が気になってくるからね。

チョー:これって原作のないオリジナル作品なんですよね。中村健治総監督の頭の中はいったいどうなっているんだろうと驚愕しました。

――演じたキャラクターの胸中も感じられましたか?

堀川:藤巻は、権力に言われるがままの人。こうでしょと言われたら、「さようでございます」としか返さないんですよね。最初からずっとそんな感じだったけれど、ラストで「あれ? 変わったな」と思いました。任命権を持って、権力のそばではなく、もはや権力の中枢になっている。その過程は描かれていないので詳細はわからないですが、時代劇の定説からすると、藤巻もいずれは潰されるのかもしれません。

堀内:でもそれってすごい技術を持ってるってことだよね。

堀川:普段の堀川りょうみたいなことかな。相手の顔を見て右往左往して、「はいっ!」って(笑)。己を見る思いでしたね。

藤巻(cv_堀川りょう)
藤巻(cv_堀川りょう)

チョー:僕も藤巻はすごいと思う。忖度を考えながらも、今の自分はどうしたらいいか、最適な道を選ぶわけだから。しっかりとノウハウを持ってるすごい官僚だと思いますね。時田は本当に庶民なんです。娘のフキが天子様に気に入られて、そのおかげで成り上がっただ
けの家ですから。今の自分の立場にもまだ戸惑っていますよね。大友の将棋の相手をしているのも、言われるがままにやっているだけ。

時田フキ(cv_日笠陽子)&時田良路(cv_チョー)
時田フキ(cv_日笠陽子)&時田良路(cv_チョー)

堀内:大友は小狡(ずる)いですよね。自分で動くこともできるのに、動かない。殺せとも言わず、勝手に動くように仕向ける人。ただ彼の心の奥底にあるのは、大奥の歴史を守っていかなきゃいけないという思い。そういう思いを抱く人はどの世界にもいますよね。最後に大友が死んでいくとき、弱い彼の本音が出ている。「俺だって」みたいな気持ちもわかるし、自分がもし大友の立場だったら同じようにしていたかもしれない。だからただの悪役にはしたくありませんでした。

老中大友(cv_堀内賢雄)
老中大友(cv_堀内賢雄)

チョー:『劇場版モノノ怪』って次の第三章もあるんですよね。藤巻と良路はまた出るのかなぁ。

堀内:大友はさすがに死んじゃったから。もし次も出たらそれこそモノノ怪になっちゃう(笑)。

チョー:僕は最初、大友がモノノ怪だと思っていました。この人の顔って何かに取り憑かれているのかなと思ったから。

堀内:この作品は女性陣もいいんです。僕はおスズ(西条スズ)が出てくるとすぐ泣きそうになっちゃうんですよ。切なさ、悔しさ、いろんな思いを感じた。許せなかったときの顔と声もよかったですね。特におフキとオーバーラップする場面は心情を感じて、泣きました。
チョー:おスズは大友のことが許せないのかと思ってたけど、自分のことが許せないっていうね。そうだよな、そこだよなって思った。

堀内:おフキの口だけ動いているカットがあって、何を言ったんだろうと思っていたけど、完成した作品を観たら、ああそういうことかと。最後まですごい作品です。

西条スズ(cv_杉山里穂)
西条スズ(cv_杉山里穂)

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