『星のカービィ』生みの親・桜井政博が思う、“日本のゲーム業界”の理想像「好きなように作って、それを受け入れられる人が楽しむ!」

2025.3.13 18:45
桜井政博氏の写真

『星のカービィ』シリーズや『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズなど、これまで数々の大人気作を手がけてきたゲームクリエイター・桜井政博 氏(有限会社ソラ 代表取締役社長)が3月11日(火)、文化庁主催「令和6年度(第75回)芸術選奨贈呈式・祝賀会」に出席し、メディア芸術部門・芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。entaxでは桜井氏に独自インタビュー。受賞のきっかけになったYouTubeチャンネル『桜井政博のゲーム作るには』の“続報”や、桜井氏が考える“日本のゲーム業界の今後”について語ってもらった。

芸術選奨文部科学大臣賞は、芸術各分野において毎年優れた業績を挙げた者、又はその業績によってそれぞれの部門に新生面を開いた者を選奨する。桜井氏は、自身自ら出演しゲーム制作にまつわるノウハウを発信するYouTubeチャンネル『桜井政博のゲーム作るには』の成果を称えられ、選出された。

詳細な受賞理由としては、これまで桜井氏が培ってきたゲーム制作の知見を広く共有し、ゲーム業界の発展に大きく寄与したところにある。YouTubeを通じて、分かりやすく一貫したストーリー性を持った親しみやすい形で公開したことで、ゲーム制作に関心のある若者だけでなく、幅広い層へと伝わっていった点。また、英語版も公開されており、国内にとどまらず、海外でもその影響が波及している点が、芸術選奨を受賞するに当たって十分な功績を残したと考えられた。

桜井政博氏の写真
(中央)桜井政博氏

同チャンネルの記念すべき1本目の動画がアップされたのは、2022年8月24日。そこから約300本の動画が公開。現在、チャンネル登録者数は76万人以上にのぼる。

2024年10月22日に公開された“最終回スペシャル”は222万回以上再生(2025年3月12日段階)されており、動画の概要欄には「最終話を出しましたが、このチャンネル自体は残しておきます。 とくにゲーム作りにかかわるかたや目指すかたは、ひとつの虎の巻として取っておいていただければ幸いです。」と、桜井氏の思いがつづられている。

YouTubeチャンネル『桜井政博のゲーム作るには』はこちらから

桜井氏は、授賞式後に開かれた祝賀会でもスピーチに登壇。「皆さん、こんにちは。桜井政博と申します。ゲームディレクターが本職です」と“恒例の挨拶”で話し始めると、これまで手がけてきた『星のカービィ』『大乱闘スマッシュブラザーズ』に触れつつ「割とその辺もいい線いってるとこだと思うんですけど、今回はユーチューバーとして受賞をもらいました。世の中、面白いですね」と笑顔を見せた。

桜井政博氏らの写真
メディア芸術部門・大臣賞 (左から)『名探偵コナン』作者・青山剛昌氏、桜井政博氏

◆日本のゲーム業界の進路は? 桜井政博「好きなことを突き進んだ方がいい」

──今回の受賞のきっかけは“ゲーム”ではなく、ご自身のYouTubeチャンネルでしたが、どのように感じてらっしゃいますか?

桜井 私個人としては大変面白がっています。面白いと思いますね!今までゲームディレクターをずっと続けてきたわけですけれども、YouTubeチャンネルが評価されて受賞になったということで、とても興味深いと思います。

──YouTubeでの投稿は一旦終わりを迎えましたが、今後第2弾、第3弾の予定は?まだまだ発信していきたいこと、教えていきたいことは桜井さんの中に詰まっているんでしょうか?

桜井 いやぁ〜また作ろうとは、実は思ってないんですね(笑) お見せしたことは本当にゲームディレクターのごくごく一部のノウハウや知見に過ぎないですから、ネタにできることは恐らくいっぱいあります。ですけど、やっぱり作るのが大変すぎるんですよね(笑)

桜井 なので以後、同じように続けることはできにくいとは思うんですけど、形を変えて色々なノウハウを伝えていくことはあり得るのではないかと思っています。また、せっかくチャンネルを持っていますから、他の色々な告知に使える可能性も考えています。

──昨今、海外では主に中国のゲーム市場の盛り上がりを感じます。日本のゲーム業界について、桜井さんが「こうすればいいのでは」と考えていることはありますか?

桜井 自身のアイデアというわけではないんですが、ゲーム業界の傾向として、日本人は日本人の好きなことを突き進んだ方がいいぞ!と思っています。

桜井 ちょっと前に、アメリカで色々な作品がうけているからアメリカナイズされた物を作ろう…とか、そういう文化は確かにあったんですね。「デファクトスタンダード(市場競争の結果、事実上の標準とみなされた製品や規格)」に寄せる、と言いますか──。

桜井 ですけれども、意外と海外の“日本のゲーム好き”は、そういう所は求めていなくて、日本の独自性やそのおもしろさみたいなものを求めているように感じます。つまりは、好きなように作って、それを受け入れられる人が楽しむ…というのが理想ではないかなと思いました。

──今後、ゲーム業界を目指す人々にメッセージをお願いします。

桜井 やっぱり「自由にやれ」ということが一番言いたいことですかね。今回、色々な番組、チャンネルを作るにあたって、自分の考えのおしつけは良くないと実は思ってるんですね。自分の思っていること、伝えてることはあくまで1つの考え方に過ぎないので。チャンネルでも言っていますが、それぞれの人の“下駄を履かせる”という目的のもとにできています。

桜井 あくまで、それをヒントにしてその人たちはどう受け入れるのか、何をするのかが大事だと思っています。それぞれの人たちが、自分が信じる方向に突き進んで、色々な方向に対する作品を尖らせてくれるといいなと思っています。なので、『お互いに頑張りましょう!』ということで!

桜井政博氏の写真

写真:(C)entax

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