庵野秀明「映画よりこっちの方が面白い」 パッケージ版でのみ堪能できる『シン・仮面ライダー』本来の姿とは?
2024.11.20 19:20◆各話完結こそ、“本来の姿”
“実写撮影”の難しさに付随して、話題はやがて“バイク撮影の裏側”へ──。サイクロン号がジャンプして変形するシーンでは、「バイクが重すぎて…飛ばしたんですけど、1回でマフラーが折れちゃったんですよね。着地した瞬間に」と庵野氏が明かした。
『シン・仮面ライダー』では、街を走る通常のバイクに無理やりオフロード用の車輪をつけているようで、尾上氏は「そもそもジャンプさせちゃいけないバイク」とツッコミ。会場の笑いを誘った。庵野氏いわく、バイクを飛ばして壊してしまうのは“昔の時代”からの名残。『兄弟拳バイクロッサー』(1985年)でも「バラバラになった」という。
実は、『シン・仮面ライダー』の1号と2号が“同じバイク”なのも、「もし転倒して傷がついても、直す間はこっち(もう1台)でやれる。そういう予備も兼ねていた」と庵野氏は告白。さらに、“左右対称の機体”に仕上げているのも、片面を擦った時のためだそうで、「(擦っていない方で撮影して)“裏焼き”にすれば大丈夫(笑)」と冗談めいた発言で会場を盛り上げていた。
──最後に、今回映画本編を全5話に再編集しエンディングを追加した『各話フォーマット版』について、庵野氏は「実は最初からこっちをやりたかった」と本音を吐露。今回の新規撮影・再構成で庵野氏の中の『シン・仮面ライダー』は一応の完結を見るという。
「これが僕の中では、本来の姿なんだろうなと。やっぱり仮面ライダーって、映画じゃなくて各話完結のお話なので、そういう自分が望んでいた形に再構成できて本当に良かった。こういう言い方はアレですけど、映画よりこっちの方が面白いと思いますのでよろしくお願いします(笑)」
【庵野秀明(あんの・ひであき)】
1960年、山口県生まれ。監督・プロデューサー。学生時代から自主制作映画を手掛け、その後TVアニメ『超時空要塞マクロス』(1982年)、劇場用アニメ『風の谷のナウシカ』(1984年)等に原画マンとして参加。1988年、OVA『トップをねらえ!』でアニメ監督デビュー。1995年にTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を手掛け、1997年の『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』と共に社会現象を巻き起こす。
2006年、株式会社カラーを設立し、代表取締役に就任。自社製作による『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ及び、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2007年〜2021年)では、原作、脚本、総監督、エグゼクティブ・プロデューサーを担当。2016年には実写映画『シン・ゴジラ』で脚本・総監督を努めた。
【尾上克郎(おのうえ・かつろう】
1960年6月4日生まれ。鹿児島県出身。映画『爆裂都市 BURST CITY』(石井聰亙[現・岳龍]監督/1982年)で美術担当としてデビュー。その後、『仮面ライダーBLACK』(1987〜88)など“仮面ライダー”シリーズ、“スーパー戦隊”シリーズ作品に携わり、1993年より特撮監督となる。以降、映画・TVを中心に多くの作品の特撮を手掛け、『シン・ゴジラ』(庵野秀明総監督、樋口真嗣監督/2016)では准監督・特撮統括として活躍した。他の主な担当映像作品に『陰陽師』(滝田洋二郎監督/2001/特撮監督)、『のぼうの城』(犬童一心監督・樋口真嗣監督/2012/セカンドユニット監督・特撮監督)、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN前後編』(樋口真嗣監督/2015/特撮監督)、『パンク侍、斬られて候』(石井岳龍監督/2018/特撮監督)、『シン・ウルトラマン』(庵野秀明企画・脚本、樋口真嗣監督/2022/准監督)などがある。
【田渕景也(たぶち・けいや)】
1973年6月15日生まれ。10代でスタントマン、時代劇の斬られ役としてキャリアをスタート。その後、20歳でアメリカに渡り、スタントマンとして『パワーレンジャー』に参加。帰国後、殺陣師・スタントマン・スタンドコーディネーター・アクション監督として、さまざまな作品で活躍。近年の参加作品に、『仮面ライダーアマゾンズ』(2016〜17)、『シン・ウルトラマン』(庵野秀明企画・脚本、樋口真嗣監督/2022)、『島守の塔』(五十嵐匠監督/2022)などがある。