庵野秀明「映画よりこっちの方が面白い」 パッケージ版でのみ堪能できる『シン・仮面ライダー』本来の姿とは?

2024.11.20 19:20

◆“実写撮影”へのこだわり

「一応、昔話をしようかと思っていて…」と庵野氏が語り始めたのは、自身にとっての“アクションの原点”。まず挙げたのは、多くの特撮・ドラマでアクションを務める『大野剣友会』。「仮面ライダーの最初のアクションが刷り込まれている」と話しだすと、聞いている2人もうんうんとうなずいた。

次に話題に挙げたのが、東映などの“80年代のアクション”。特に『仮面ライダーBLACK』(1987年)の第1話は衝撃的だったという。また、『科学戦隊ダイナマン』(1983年)第1話の“クレーン”を使ったシーンや、『ビー・バップ・ハイスクール』(1985年)の“電車から川へ落っこちるシーン”などを見て、「あ、こんなことやれるんだ」と当時驚いたことを明かす。こうした派手なアクションは今回の『シン・仮面ライダー』でもやりたかったそうだが、今は“10メートルの飛び降り”も時代的に難しく諦めたそうだ。

これに、「僕らもやりたいんですけどね」と田渕氏。気持ちとは裏腹に「“飛ばせてくれるところ”も少なくなった。もしマンションなどで事故が起きたら、人も住まなくなる」と現状を把握しつつも、「現場には“たぎっている連中”が多くいる」「正々堂々やれる場所が増えたら、これからもっと若い人とかも増えていく」と業界の未来を見据えた。

尾上克郎、田渕景也の写真

トークの後半では、“CGを多用する現代のアクション”にも切り込んだ。シーンの途中で実写からCGへと変わることは、庵野氏も「まぁ僕も、結局そういう判断になっちゃう」と複雑な心境を明かしつつ、実写で撮影しきることへのこだわりは決して捨てていないようだ。

アクションの見せ場が何度もあるような作品の場合、同じことを繰り返したくないようで、ここはバイクで見せる、ここは肉弾で見せる、ここは血のりで見せる…とひとつひとつのシーンに特徴をつけていくそうだが、それでも“撮影時間の限界”などを理由にCGに頼らざるを得なくなる場面があるという。

これに対し、田渕氏は「ちゃんと詰めて考えると、1個のシーンを1年くらい前から構築していかないと本当の理想には近づけない」と撮影で感じたジレンマを明かした上で、「日本だと、ロケ場所でのトレーニングが難しい」と課題を指摘。CGと実写で分けて制作されているシーンが、もし“一劇”で見せられたら「すごい宣伝になる。海外にも負けないシーンが撮れる気がする」と興奮気味に語る。

すると、「次、やりますか!次はね。頑張ればできる気がする」と尾上氏も前のめりに。庵野氏も、「チャンスがあればね」としながらも笑顔を見せた。

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