カズレーザー『実録!令和のハラスメント裁判』 “嫌がらない”は…“YES”じゃない?法の境界線と賠償額の相場は

2024.7.18 10:45
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カズレーザーがMCを務める『カズレーザーと学ぶ。』が16日に放送された。今回は『大ハラスメント時代の生き抜き方』というテーマ。「実録!令和のハラスメント裁判 訴えたら勝てる?勝てない?」という講義では、実際の裁判例をもとに、法の境界線について解説された。
 
中央大学の法学部長、遠藤研一郎氏によると、そもそも日本ではハラスメントに関する法律が完備されていないとのこと。世代間の認識の齟齬(そご)もあり、ハラスメントを規定する法律を制定するのが、現状難しいと話す。また2019年にパワハラ防止法などが制定されたものの、民法で定められた定義も、実は曖昧な部分があるという。
 

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中央大学 法学部長 遠藤研一郎氏

また民事訴訟によるハラスメントを理由とした賠償額は、日本では少額。これには被害者の受ける損害の種類が関係しているといい、多くの場合ハラスメント被害者に適用されるのは、精神的な損害。精神的に傷ついたことが原因で、休職を迫られるなど、財産的損害を被った場合は賠償額が高くなる場合もあるというが、ほとんどは精神的苦痛が主な争点となるそうだ。この場合、支払われる賠償は慰謝料というかたちになり、約20~30万円が相場となるという。
 
そうした状況を踏まえ、文京湯島法律事務所の弁護士、小野章子氏は、令和ならではの裁判事例を紹介。まず紹介したのは「コミュ力が低い」という理由で解雇された職員が起こしたもので、不機嫌になることや協調性に欠けるといった面があるとして解雇された職員が、不当解雇として団体を訴えた。結果としてこの裁判では、解雇は無効とされ、解雇以降の給料、および残業代が支払われた。
 
遠藤氏によるとこの場合、コミュニケーションが一方通行ではないことが重要になるという。上司が言った「コミュ力が低い」という言葉は、上司自身は悪くないという前提に立って発言している点を指摘した。また東北大学で脳科学を専門とする細田千尋氏は、社会的支配志向性がさまざまなオフィストラブルの原因となっていると解説。差別や偏見など集団間で生じる関係性のことをいい、何らかの点を「自分にとって当然の権利である」と思い込んでしまうことも原因になりうるとした。
 

文京湯島法律事務所 弁護士 小野章子氏の写真
文京湯島法律事務所 弁護士 小野章子氏

次に紹介されたのは、教授と大学が訴えられた事例。この訴えを起こした女子学生は在学中、教授から「卒業したら俺の女にしてやる」といったセクハラを受けていたとのこと。一審ではその違法性が認められ、教授と大学に、合計約60万円の支払いが命じられた。しかし女子学生側は控訴。控訴審ではセクハラを行った教授が、食べかけの食事を自分の箸を使って女子学生にシェアしようとしたことが問題となった。この場合、日ごろから教授がセクハラを行っていた文脈もあり、高等裁判所はセクハラ・パワハラと認定。約99万円賠償命令が下された。
 
遠藤氏はこの事例に関し、立場による関係性について言及。指導教員と学生という立場には絶対的な差があり、立場の低い側は、優位な側の行動を黙認するしかない面があると話す。そして「嫌がらない」ことが、「YES」を意味するわけではないことを強調。「YES」と「NO」の間には、「嫌がらない」という中間領域が存在し、立場の弱い側は、この中間領域が自然と広まってしまう傾向があることに注意が必要とした。
 
いくつかの裁判の事例を踏まえカズレーザーは、「こういうの(慰謝料)ってのは、どういう基準で算出されるものなんですか?」と質問。遠藤氏によると慰謝料は、基本的に裁判官の裁量で決定されるという。ハラスメントの場合、問題となったハラスメントの期間や回数、悪質性などの点を考慮し、相場観から判断されるのだとか。小野氏は、時代によって相場は変化しているといい、比較的にまだ少額になる傾向があるものの、昔に比べれば精神的な被害への賠償額は少しずつ上がっているとした。

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写真提供:(C)日テレ

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