大学院での研究とアーティスト二足のわらじで進化を続けるmiwa単独インタビュー ドラマ『厨房のありす』主題歌「それでもただ」に込めた思いとは

2024.2.22 16:00

現在放送中のドラマ『厨房のありす』の主題歌「それでもただ」を歌うのは、今年3月3日にメジャーデビュー15年目という節目のスタートを迎えるmiwa。なんと、アーティスト活動の傍ら、昨年3月に大学院の修士課程を修了し、ますます進化を遂げているそう。2月23日(金)放送(24:59~)の『バズリズム02』に登場するmiwaにentax取材班が話を聞いた。

■誰かを全肯定できる言葉で寄り添える曲にしたかった

―――最新楽曲「それでもただ」はドラマ『厨房のありす』の主題歌ですが、この曲はどのようにして生まれたのですか?

miwa:この曲はドラマの主題歌としてオファーを頂いてつくることになったのですが、ドラマの脚本を読んで作品が伝えたいメッセージやコンセプトを伺い、約1か月ほどかけて曲を書いていきました。

門脇麦さん演じる主人公のありすは自閉スペクトラム症の料理人の女の子。彼女は大好きな化学でお料理し、料理で人を幸せにするというお話なんですけど、彼女の周りにはお父さんがいて親友がいてバイトに来る男の子がいて、でもそれぞれが自分の中に他者から理解されない部分やうまくいかない部分を持っているというドラマなんですね。

その中で人と人の関係によって温かさが生まれるというのがドラマのメッセージかなと、そこに寄り添えるような曲をつくりたいなと思って完成したのが「それでもただ」です。

脚本を見たときに「普通は素晴らしい」というありすのセリフがあって、とても心に刺さりました。誰でも人と違う部分やうまくいかない部分があって、それは人と違うからこそ「普通」をみんなが認識できるわけですから、「普通」ってすごいことですよね。

違う部分をお互いが思いやる気持ちだったり、理解しようとしたり、わかろうとするところに愛が芽生えているんだという、そんなメッセージもこの楽曲に込めています。

―――この曲を聴くと、自分に当てはめても前向きになれますし、大切な人へのエールとしても送りたくなる曲ですね。

miwa:そうですね。この曲はありすからの目線、みんなからありすへの目線、どちらにもとらえられるように書きました。落ち込んでいる自分自身にあてて共感してくださる方もいれば周りにいる誰か大切な人に思いをはせながら聴いてくださる方もいると思います。改めて人に寄り添うことや温かさに気づいてもらえる楽曲になっていたらいいなと思います。

―――もしmiwaさんが、ありすのお店に行ったなら、どんなオーダーをしますか?

miwa:そうですね、ありすに「あっかんべー」をして、体調を見てもらいお料理を出してもらいたいです(笑)ドラマでは貧血気味のメニューとかありましたね、様々な体調に合わせたメニューが登場するので見ていると参考になりそうです。

■アーティスト活動をしながら大学院へ進学

―――miwaさんは昨年3月に慶應義塾大学大学院修士課程を修了されたことをSNSでファンのみなさんに報告されていましたが、大学院ではどのような研究をなさったのですか?

miwa:私は「音楽神経科学」という分野で研究しているのですが、ライブをやっている側と観ている側の気持ちや感情ってリンクしている部分があるんじゃないかなと思うことがあって。私が届けたいという思いを、お客さんも受け取ってくれていると思いますし、盛り上がってくださっている姿を見て私自身もパワーをもらっていて、その関係性で生まれる現象を科学的に調べるような研究をやっています。

―――ありすは科学的に料理していますけど、まさにmiwaさんは科学的に音楽の力を分析されているんですね!

miwa:ほんとですね、ドラマともリンクしていましたね!(笑)

■「やってみたい」という気持ちで大学院に飛び込んでよかった

―――アーティスト活動の傍ら、大学院への進学を決めたときは両立への葛藤などあったのでしょうか?

miwa:そうですね、もう自分の「やってみたい!」という気持ちを大事にしようと思い進学を決めました。振り返っても、その勢いってすごく大事だなって思いましたね。多分あのときちゅうちょしていたら今も大学院には行ってないでしょうし出会えてない人もいて、そこで話さなかったら生まれなかった視点みたいなものがあったなと思います。

実際入学してみたらヴァイオリン奏者だったりオペラ歌手だったり何かしら音楽と関わっている方が研究していらっしゃるんですね。私はメジャーデビューして十何年活動してきたアーティストとして、世の中に役立つような研究をして何かにつなげていきたいと考えているんですけど、面白いことに一人一人ジャンルも違うし問題提起も違っているのにどこかわかりあえるところがあったり。そうした関わりの中で視野も広がりました。

今まで読んだことがなかった論文を読んだり、学会では英語で論文を発表したりすることもあり新しい経験となりましたし。また、もともと大学では文系だったのにプログラミングとか理系の分野でやることに初めて挑戦することになったりと苦戦した部分もありましたけど、やはりすごくたくさんの刺激をもらったので「あの時飛び込んでよかった」と思うことの方が多いです。

―――むしろ大学院に進学したことでさらにアーティスト活動も進化したと言えそうですね?

miwa:そうかもしれません。実際、作品やライブに対する姿勢などにもフィードバックがあって、実は大学院に行ってからの方が歌詞を書くスピードがものすごく早くなったんです。本当にいい刺激をもらっているなと実感しました。この後、博士課程へ進んでさらに研究も続けつつ、音楽で世界をもっと明るくすることができたらいいなと思っています。

【miwa Profile】
2010年大学在学中にデビュー。翌年発表した1st アルバム「guitarissimo」でアルバムチャート1位を獲得。2012年には「ヒカリヘ」が大ヒット、大学の卒業式と同時期に初の日本武道館公演を開催し、翌年にはNHK紅白歌合戦に初出場を果たす。日本武道館や横浜アリーナでのアコギ一本の弾き語りライブの成功、日本最大規模の合唱コンクール『NHK全国学校音楽コンクール課題曲』(中学校の部)の作詞曲を担当するなど幅広く活動を続けている。2023年5月24日リリース「ハルノオト」でTVアニメ「MIX MEISEI STORY~二度目の夏、空の向こうへ~」エンディングテーマを担当し、最新曲「空っぽ」は「ぶらり途中下車の旅」7-9月テーマソングに起用される。、2023年4月から全国12都市を回る弾き語りライブツアー「miwa acoustic live tour 2023 “acoguissimo 5”」や3年連続となるビルボードライブツアー miwa Billboard Live Tour 2023 “miwa CLASSIC Ⅲ”を開催し成功させるなど、今なお第一線で活躍し続けている女性シンガーソングライター。
最新曲「それでもただ」は日本テレビ系日曜ドラマ『厨房のありす』主題歌に起用されており、2024年3月9日(土)にはmiwa -39 live- 2024 “sing dance enjoy!”を開催する。

【ドラマ『厨房のありす』】
2024年1月スタートの日本テレビ系・新日曜ドラマ(毎週日曜夜10:30放送)。門脇麦演じる 「料理は化学です」が口癖の自閉スペクトラム症の天才料理人・ありすと、様々な生きづらさを抱えた人々が織りなす、クスッと笑えてグッとくる少し切なくて温かいハートフル・ミステリー!

写真:©entax

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