美弥るりか独占インタビュー「20年の感謝を込めて…今までにない『脱皮』に挑戦した写真集」【前編】

2023.2.21 19:00

宝塚歌劇団を退団後、ジェンダーフリーな俳優・アーティスト・モデルとして活躍の場を広げる美弥るりか。3月に「REFURBISH=磨き直す、一新する」をタイトルに掲げ、芸能生活20周年を記念した写真集を発売する。美弥の原風景でも撮影を敢行し、ロングインタビューも収録した写真集について、entaxの独自取材に答えた。

―――今回の写真集に込めた思いとは?

元々宝塚時代から写真でも自分でやりたいことを提案したり企画したりしてきたんです。洋服もいつも自分でコーディネートしていましたし、メークも毎回同じにならないように色々勉強していたんですね。海外のファッション雑誌も好きで、そういう研究が苦じゃなくて。人と違うもの、人と違うことをして、自分の個性を写真でも表したいなと。舞台上だけじゃなくて写真からも伝わる個性って自分のプロフィールとして大事なんじゃないかと思っていました。

ただ写真集ってなると、自分のこだわりをすごく詰めなくてはならないという感覚がすごく強くて。なので宝塚卒業して一回スタイルブックっていう形で、やっぱり自分はファッションやメークが好きだと発表するつもりで作ったんです。でも20周年ってなった時にスタイルブックもちょっと違うし、自分の今の姿を残しておきたいなっていうのと、それを感謝の気持ちに変えて皆様にお届けできたらなんていうのもありました。

ただ内容が凄く迷いまして、やっぱり皆さんに期待されるというか。私イコール結構個性的なものを発表するという印象があるだろうなというので、結構毎回プレッシャーではあるんですね。より格好いいものとかよりアートっぽいものとかっていうことをすごく今回も考えまして。私の考えと感性が近い方にカメラマンさんとして入っていただけたら、すごく心強いんじゃないかなって。

そんな中で磯部昭子さんと出会いました。写真を見るともうアートに近くて、テレビなどで活躍しているような女優さんが写っていても、その方と気付かないぐらいに。それを私、すごく好きだなってビビッときまして。こちらからオファーをして「よかったら撮っていただけませんか」という感じで、ドキドキしながら「OKいただけますように」とお願いしたんです。

実際お会いしたらこちらの意見も尊重しつつ、だけど「いや私はこれがいいと思います」ということも、すごくいいタイミングでこだわりを言ってくださって。初めて撮った日がこのベージュの表紙のカットだったんです。

©︎磯部昭子

試しにまず撮ってみるじゃないですか。もうその1枚を見た時に「ああ、もうこれは大丈夫だ」と。絶対格好いい写真集になるなっていうものを確信できるぐらい。試し撮りでさえすごく格好よかったので、これは絶対皆さんに喜んでいただけるんじゃないかなっていう気持ちになりました。

―――写真集のテーマについて

「REFURBISH」というのはもちろん、表の題名ではあるんですけども。自分の中で入れたい要素は、今までの20年間の歩みを支えてくださった皆さんへの感謝。さらに(次の)21周年っていうものを、20周年に1年足していくのではなくて、また芸歴1年目みたいな気持ちでスタートしたいなっていうのがありまして。

ある意味数字に乗っかりたくないというか、自分でそこに安心感を持ちたくない。20って結構言葉にすると長いなと、自分の中の歴史は感じるんですけどもそこに甘えることなく、1年目のつもりで新しいことに足踏みしないで半歩ずつでもいいからちょっとずつ「新しい自分」に自分も出会いたい。それを皆さんにも伝えていくことで、ちょっとびっくりしていただいたり、もっと素敵だなって思ってもらえたりするような姿に近づけるようにしたいです。

「脱皮」みたいな裏テーマも持ってまして、ファッションとしても今までにはないような露出をしています。でもその肌見せも格好よく肌見せをするっていう自分のこだわりがありました。ただただ素敵なドレスを着て腕やデコルテが出ているというよりは、すごくデザイン性のある服を着て、そのファッションの一部として肌が露出されてるっていうような。生々しい肌見せにならないような格好いい露出というものを絶対取り入れたいなと。

今まではかなり気をつけて露出を控えていたんです。中性的な、ジェンダーを行き来できるような自由さが欲しかったのであえて避けていたんですが、写真だからこそ挑戦できる格好良さもあるんじゃないかなっていう意味を込めて。なのでファンの方的には「おぉ!」という写真もあるかもしれないです。自分的には、うん、下級生の頃のラインダンスくらいだな、みたいな(笑)

今回、ヘアメークさんとスタイリストさんのお二人に入っていただいて、フラワーアレンジメントの方も。ほとんど皆さん初めましてだったので、今までの私を知らずに「こういうのはどうですか」と、フラットに提案してくれるからすごくありがたかったです。

やはり宝塚の世界をよく知っている方だったりすると「男役とはこうであってほしい」とか「娘役さんだったらこういうかわいさを欲しい」とか、省いてるつもりでもついつい入ってしまう概念があるじゃないですか。なのでそれが取り除かれた状態で今回、奇抜なヘアメークやアイテムなどすごく面白いものを提案してくださいました。

―――「今の美弥るりか」という表現者に向き合ったチームだったんですね

磯部さんがよくご一緒してる人たちを呼んでくださったんで、それはもう信頼しかなかったです。私自身も一応前もってこういう不思議なまつ毛をしたいですとか、目の周りに不思議なアイテムを付けて写真撮りたいです、とかいうのは資料や写真をいっぱい集めて送ったんですよ。

だけどそのまま用意してくださるんじゃなくて、それを更に「美弥さんだったらこういうものがいいかな」というのを持ってきてくださって、メークさんも現場で「急にひらめいちゃった」という感じで「やってみよう!」って。

不思議なメガネみたいな、仮面みたいなものをしたいという要望も出していて。ほとんど顔が隠れているような写真が結構好きなんです。ちょっとポップなキラキラしたものを提示していたんですけど、実際来たものはもうとんでもなく面白くて。ファンの方的にはこれ「美弥さんの顔が見えない!」ってなるかもしれないんですけど。でも素敵なアートさは出たので楽しみにしていただきたいです。

―――撮影中の思い出深いエピソードはありますか

父の実家がお寺なんですね。幼少期から日曜日とかはずっとそのお寺で遊んでいて、自分が長く過ごした場所だったんです。茨城県にあるんですけど、土井利位という雪の結晶の研究で有名な藩主が建立したお寺で。本堂の天井に雪の結晶の模様が入っていたり、雪の結晶のものが本堂にアイテムとして置いてあったりするんですよ。私は小さいときからずっといたから、そのお寺のすごさというものに慣れちゃっていたんですよね。

実は以前から洋と和のコラボが大好きで、今回も「すごく奇抜な服を着て畳や和の空間で撮影したいです」というのを伝えていたんですが、撮影場所をどうしようかというお話をした時に「実は父の実家にお寺もあるんですけど」と言ったら「そこへ行きましょう!」って急に決まったんですよ。ノリで。私も、それなら古河(市)でも他に撮影できるところはあると思うから、いろんなところで撮ってその一部としてお寺が1カットか2カット入ればいいかなと思っていて。

そうしたら磯部さんがもうすごくお寺を気に入ってくださって「ここで全部いきましょう」ということになりました。お寺のいろんな場所、赤門や本堂でも撮影しました。小さい時になにげなく歩いてた廊下や控え室みたいなところがこんな格好いい写真になってちょっとびっくりしちゃいましたね。

©︎磯部昭子


―――原点に近い風景で、写真が撮れるというのはどうでしたか

そのお寺、お寺なんですけど弁天様が祭られていて。弁天様は芸能の神様じゃないですか。ずっとそこに宝塚に受かりますようにってお願いしてたんです。受験に出発する前の日とかもお願いして、受かった後もお礼を言って。

宝塚の新人公演で主演できますようにとか、ずっと何かお願いをしてきたんですね。そこで自分がこういう風に撮影をして、茨城県まですごくたくさんのスタッフさんが来てくれて写真集を作るというのは「こんなことあるんだ」としみじみと色々なことを思い出しました。小さい頃から宝塚入って卒業して今っていう実感があって、振り返りながらその1日を過ごしていました。

©︎磯部昭子

【作品情報】
美弥るりか 芸能生活20周年記念 写真集 『REFURBISH』
発売日:2024年3月10日(日)
A4版 80ページ/4,950円(税込)

ファンクラブ限定のブルーver.など、写真集の表紙のみ異なる3ヴァージョンを発売(内容はすべて同一)
詳細はこちらまで

©︎entax

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