島村龍乃介に単独インタビュー 舞台『弱虫ペダル』の主演続投 歴代のキャストが使ったハンドルの傷に「勇気をもらっています」
2024.2.3 11:003月1日から東京 天王洲・銀河劇場で上演される、舞台『弱虫ペダル』THE DAY 2。主人公を演じるのは、本作が3回目となる島村龍乃介だ。ドラマやCMなどここのところメディア露出が目覚ましい、伸び盛りの21歳。今後の活躍から目を離せない島村に、entax取材班は舞台への意気込みや役者としての目標を聞いた。
人生初の舞台から3作連続主演抜てき 「小野田坂道と一緒に成長していると感じます」
「弱虫ペダル」とは、2008年から「週刊少年チャンピオン」(秋田書店刊)で連載が始まり、これまで87巻発売されコミックス累計発行部数3000万部突破。現在も連載が続く人気スポーツ少年漫画である。
その人気は漫画だけにとどまらず、テレビアニメ化、実写ドラマや映画化などさまざまな形で展開されてきた。
物語は、孤独なオタク少年だった小野田坂道が、高校生になったらアニメ研究会に入って友達を作ろう!と意気込んでいたが、 ひょんなことから同じく新入生の今泉俊輔・鳴子章吉と出会い、自転車競技部へと入部することに。自転車を通じて出会った仲間や先輩達と共にインターハイ優勝を目指す!という青春物語。
舞台化は2012年から。「ペダステ」の愛称で親しまれ、2.5次元舞台をけん引する作品。2022年、10周年を機にキャストを一新。新体制として上演された1作目舞台『弱虫ペダル』The Cadence!に主演として抜てきされたのが島村だった。
「The Cadence!」は漫画の最初、小野田がロードバイクに出合うところから描かれた。そこに舞台初出演という島村が挑み、初々しい演技で主人公のキャラクターを引き立て話題に。島村は2作目「THE DAY 1」も主演も務め、本作でも続投する。
――初舞台から1年半、3作連続で小野田坂道を演じられますが、気持ちに変化はありますか?
島村 「The Cadence!」から「THE DAY 1」に掛けて小野田はものすごく成長するんです。不安がありながらも、ロードバイクのことがだんだん分かって仲間と走れる喜びを知り、一丸となっていきます。一方僕も、上手(かみて)下手(しもて)すら分からず固まっていたのが、「THE DAY 1」では自分を俯瞰(ふかん)的に捉えながら演技ができたり、キャストやスタッフの皆さんといろいろ話し合えたりして、役者としてカンパニーと一丸になれたのかなって感じていて、小野田と一緒に成長している気がします。
「THE DAY 2」で小野田はもっともっと成長するので、僕も負けないようにしなきゃと思っています。
ロードバイクのハンドルだけで自転車レースを表現 「毎公演、必ず限界点を迎えるんです」
舞台『弱虫ペダル』の見どころは舞台上での自転車レースだ。ロードバイクのハンドルと俳優のマイムだけでロードバイクに乗る様を表し、可動式スロープを人力で上下左右させることでレースの駆け引きに欠かせない坂道を作る。
演劇界に新たな金字塔を打ち立てたと言われるこの表現手法によって役者達は、スロープを駆け上がったり下りたり終始中腰の姿勢で走り続け、体力との勝負に挑みながら全身でリアルなレースシーンを作り上げるのだ。
――とても体力が必要な舞台だと聞きました。どのような体力作りをしているのでしょうか。
島村 舞台のことが全く分かっていなかった「The Cadence!」では、走り込んだりして体を作って挑みました。でも、いざ稽古に入るとめちゃくちゃシンドイ。それで「待てよ。体の使い方がぜんぜん違うぞ」と気づいたんです。「THE DAY 1」はつらくならない体の角度や動かし方を探ることで乗り切りました。
とはいえ毎公演、必ず限界点を迎えるんです。死んじゃうんじゃないかって思うほどですが、限界を突破した時の達成感はものすごいです。自信にもなって「もう、どんな作品も怖くない!」って気持ちにもなります(笑)。
――その上「ペダステ」の長い歴史。重圧があるのでは?
島村 「The Cadence!」ですべてが新しくなるのかなって思っていたら、ハンドルに傷があったんです。初代・小野田坂道役の村井良大さんから使われ続けていたものだと聞いて、まさにバトンを渡された感じがしました。プレッシャーはもちろんありますが、「僕がこれを持っていいんだ」って感動するし、傷を見るたびに「頑張れって」言われている気がして、ハンドルから勇気をもらっています。
――「THE DAY 2」で小野田はどんなふうに成長するのでしょうか。
島村 ついていくのに必死だった小野田が先輩を引っ張る役割を担い、たくましい一面を見せるんです。でも、強くなりすぎたら小野田らしさがなくなってしまう。弱々しさの中に強い意志があることや、「The Cadence!」からどう成長したのかを、どうお客様に伝えられるかが僕の課題です。
自転車に乗ると格好良い小野田をリスペクト 「ギャップにグッときます」
――小野田坂道のキャラクター作りで工夫されている点はありますか?
島村 小野田はものすごく真っ直ぐなんです。例えばキャプテンに「これがお前の役割だ」って言われたら何が何でもやり遂げる。それがどんなことでも小野田の気合いと集中力で良い方向へ変えてしまう。その力はすごいです。
普段はヘニャヘニャしているのに、自転車に乗っている時はものすごく格好良くて、「絶対にやるんだ」っていう時の真剣な顔、あのギャップにはグッときますね。
僕も集中するとガーってなるタイプなので、「僕は小野田のようなアニメオタクではないけれど、熱中力を発揮するところは似ている」と共通点を重ね合わせながら、この時の小野田の気持ちはこうなんだろうなと想像を膨らませています。
――小野田は時折、歌いますよね。歌は得意ですか?
島村 そうなんです。インターハイ中も小野田が好きなアニメ『ラブ☆ヒメ』の主題歌(舞台版『恋のヒメヒメ☆ぺったんこ』)を歌う場面があるんですけど、僕、正直、歌は得意じゃないんです(笑)。カラオケにも行かないし。でもこのシーンは漫画で読んでとても感動したので、“面白い”より“感動した”って思っていただけるように歌いたいです。
演出の鯨井康介さんに「言葉を伝えるという意識で歌ったほうが伝わりやすいし、音程も乗ってくる」と教えていただいたので、それを意識して練習中です。僕の感じた感動をお客様に届けられたらなと思っています。
それから、舞台の最後にみんなで歌う『Over the sweat and tears』。めちゃくちゃ好きなんですが、毎回、大千秋楽は泣きそうになるので嫌いです(笑)。あんなにいい歌を書かないでほしかったですよ。「泣かないって決めているのに、このやろう!」って感じでほんとうに危ない。「THE DAY 2」では絶対に泣きません!
――映像に舞台にと活躍の場が広がっていますね。これからどんな役者になりたいですか?
島村 役によって人柄を変えられる役者になりたいです。例えば映像や舞台で僕を観た方が「この俳優、誰?」って調べてくれて、「あっ、この人だったんだ」って驚いてくれるような。
藤原竜也さんに憧れて俳優になりたいと思ったのですが、舞台を拝見して圧倒されました。大きすぎて尊敬しすぎて、今はまだ目標にはできない。いつか「藤原竜也さんを目標にしています」と言える自分になりたいです。
――最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。
島村 小野田の成長シーンはもちろんですが、ぜひキャスト各々の走りを見ていただきたいです。そこには「ペダステ」にしかない本気の汗があります。新しいキャストも増えてみんなで作り上げた「ペダステ」です。ライバルでもあり仲間でありっていう僕らの熱い戦いを目に焼き付けていただきたいです。
【島村 龍乃介Profile】
2002年8月7日生まれ、大阪府出身。2018年にホリプロメンズスターオーディションのファイナリストに選ばれ、翌年ドラマ『TWO WEEKS』でデビュー。以後ドラマ『日本沈没―希望のひとー』、『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』などに出演、Hulu『瑠璃とカラス』で主演を務め、2022年には舞台『弱虫ペダル』The Cadence!で主演として初舞台を踏む。特技はダンス、サッカー、ルービックキューブ。
【公演情報】
舞台『弱虫ペダル』THE DAY 2
日程:2024年3月1日(金)~3月10日(日)
会場:東京 天王洲 銀河劇場(東京都品川区)
キャスト:
<総北高校>
小野田坂道役:島村龍乃介、今泉俊輔役:砂川脩弥、鳴子章吉役:北乃颯希、巻島裕介役:山本涼介、金城真護役:川﨑優作、田所迅役:滝川広大
<箱根学園>
福富寿一役:髙﨑俊吾、荒北靖友役:相澤莉多、東堂尽八役:フクシノブキ、新開隼人役:百成瑛、泉田塔一郎役:青柳塁斗、真波山岳役:中島拓人
<京都伏見高校>
石垣光太郎役:鐘ヶ江洸、水田信行役:田口司、御堂筋翔役:新井將
<パズルライダー>
監督:伊藤玄紀、パズルライダー:村上渉、山口拳生、若林佑太
スタッフ:
【原作】渡辺航『弱虫ペダル』(秋田書店『週刊少年チャンピオン』連載)
【脚本・レース演出メソッド創作/監修】西田シャトナー
【演出】鯨井康介
【音楽】manzo
【作詞・歌】桃井はるこ
【レース演出協力】河原田巧也