【単独取材】『天狗の台所』主演の駒木根葵汰「自分の生活を改めて考え、豊かになるきっかけになるドラマ」

2023.11.9 14:00

2023年10月5日からBS-TBSでスタートした木曜ドラマ23『天狗の台所』。(読み:天狗(てんぐ))天狗の末裔(まつえい)である兄弟の隠遁(いんとん)生活を描いた物語で、美しい自然に囲まれた日本家屋でともに暮らしていくうちに、心の距離のあった兄弟関係に少しずつ変化が表れる。そんなハートフルなドラマの主人公で、食材や料理に人一倍のこだわりを見せる飯綱 基を演じるのが、注目の若手俳優である駒木根葵汰(こまぎね・きいた)である。スーパー戦隊シリーズ『機界戦隊ゼンカイジャー』や映画『ネメシス』などに出演して存在感を発揮した彼に、ドラマのみどころと自分のポリシーなどについて語ってもらった。

■主人公と共通しているのは、食に対する思い

――『天狗の台所』の主演が決まった時の心境を教えていただけますか?

まず、主演という大きな役を任せてもらえることがすごく光栄でしたし、僕自身は実写をこんなにもしっかりとやる機会が初めてだったので、多少の不安と心配もありました。原作に忠実にする部分と、どこまで自分色に染めるのかというバランス感覚がまだあまりなかった状態だったのでそれは少し悩みました。

――ご自身が演じられた飯綱 基という役に関しては、どのように解釈されて演じられましたか?

食事に対するこだわり、それから自然や動物といった豊かなものが、心の底から好きな人間なんだなと思いました。彼が隠遁(いんとん)生活を送っている中、弟の飯綱オンがニューヨークからやってくるのですが、やはり他の部分で完璧な分、逆に人間らしさがあるものが表現できるのがオンとの兄弟関係だなと考えて。

基は14年間一人で隠遁(いんとん)生活をしていた分、人とのコミュニケーションがうまく取れなくて、感情を表に出すことが苦手な人間なんだろうなと感じていました。オンも成長するし基も成長するというのが、「天狗の台所」の魅力だと思っています。

――番組プロデューサーは、記者発表会で「駒木根さんは基の透明感と重なる」と言われていました。

それは僕も初めて聞いてドキッとしました(笑)。でも基は、とても純粋な人間で。何にも毒されていなく、本当に好きなことをして暮らしているというのが全面的に表現できればいいなと思っています。

――ちなみにご自身の性格と通じる点は、どんなところでしょうか?

共通している部分は、食に対する思いですね。僕もうどんが好きだった時は、自分でこねて作ったりしました。実は小さい頃から自分で調べて餃子(ぎょうざ)の皮などを作っていました。一から作り上げるというこだわりを持っていたので、そこは少し似たものがあるなと感じています。

■食事のレッスンを受けた影響で、箸置きとお箸を購入

――『天狗の台所』は料理の描き方が秀逸と言われていますが、食に対してこだわっていると感じられたのはどんな時でしょうか?

また撮影に入る前に、何日か食事と料理のレッスンも受けさせてもらった時に、監督の皆さんがいらっしゃって。料理だけではなく、お皿もすべて自分の目で見て、「これとこれ、どっちが合うかな?」と試行錯誤されていて、そういうすごく細かなところまで気を遣っていることを最初の時点から感じました。

料理をよりよく引き立てるために、お皿があるんですね。僕自身はあまりそういったところを考えていなかったので勉強になりましたし、スタッフの皆さんの熱い気持ちによって、より「頑張ろう!」と思えました。

――駒木根さんも食器に対するこだわりが出てきましたか?

より丁寧な暮らしという面で、まず食事用のちゃんとしたお箸、さらに箸置きも買いました。

――料理のレッスンもあったということで、所作にもこだわられましたか?

例えば卵を溶く時、普段だと箸を使ったりするじゃないですか。でもそこは細かい泡立て器みたいなもので溶いたりだとか、“これには何々を使う”という、決まった道具を使うんですよね。

たとえば摺る(する)作業とかも、今だとフードプロセッサーや、いろいろな便利なものがあって、僕はすりこぎ棒の使い方も知らなかったんです。そういうのも一から教えていただきました。それから包丁の使い方・切り方や、分かってはいたけれど、改めて猫の手なども教わって。所作というより、食器について、物の使い方といったことを一から学びました。

――越山敬達さんが演じる弟の飯綱オンとの関係で、意識したことはありますか?

14年ぶりに会った兄弟は、きっと無言の時間もあったりするんじゃないかなと思って。“何かしゃべりたいけれど、今言っていいタイミングなのかな?”とか。普段は分からないところがあったら、相手の俳優さんに「これってどういう感じ?」と聞いていたりしていますが、今回はあえてあまり聞きませんでした。僕はオンとしても(越山)敬達としても初めて会う関係性だったので、その時の空気感を大切にして、久しぶりに会う兄弟のリアルな間を大事にしたいと考えていました。

――今回のドラマに関して、この辺はぜひ見てほしいというポイントを教えてください。

自然豊かな場所はもちろんなんですけれど、古民家の中の作りもぜひ見ていただきたいです。もともとは中に何もない状態から美術さんが丁寧に1から作り上げてくださって。台所のダイニングテーブルの裏側に、いろいろな食材が置いてある棚があるんです。よく見てみると、郷土料理や、北九州の豆を使った煮物とか、そういうものが置いてあって、ものすごくこだわって作ってくださったんですよ。お芝居のほかにもそういう世界観に合わせた作りがあるので、何度見ても楽しめるようになっています。

■武道精神から学んだ、自分の人生を自ら背負う生き方

――駒木根さんが芸能界を目指したきっかけを教えていただけますか?

有り難いことに、事務所のマネージャーさんに高校2年の時にスカウトの連絡をいただいたのがきっかけです。周りがいろいろな進路のことを考えている時に、ちょうどお話をいただいたので、面白そうだなと思ってそれほど深く考えないで突っ込んでいきました。

――当時は演技というものに対して、どのような思いを持っていましたか?

僕は茨城で生まれ育ったので、そういうものに縁を感じていなかったです。俳優は自分がやる職業だとは思わず、あくまでもエンターテインメントとして見ていました。

――ちなみに学生時代は何に熱中していましたか?

空手とバスケです。空手に関しては武道なので、武道精神が根付いたと思います。幼稚園の年長からやっていたので、体に染み付いていて。やることはしっかりやろうとか、そういうのが当たり前の生活で、自分の生きてきた根本にあるのかなと思います。

僕は全ての選択に関して、しっかりと自分で考えて生きていきたいんです。だから自分の意思というか、自分の信じたものは、基本的に信じようと思っています。例えば何かに迷った時、誰かに背中を押してもらうのはもちろん大事。でも最終的に自分で決めないとそれがもし違った時、誰かのせいにしてしまう可能性もある。

だからしっかりと自分の人生は自分で背負っていきたいという考えがあって、何かに悩んだり迷ったりした時は、自分自身でしっかり責任を持って考えて行動しようと思っています。そういった気持ちの強さを獲得できたのは、やはり空手の影響が大きいのかもしれないです。

――今後はどのようなことを目標にされていますか?

特にこれまでと変わらずに、いただいた役を本当に一生懸命やっていくのみです。きっとそれが良ければ、どんどん道は広がっていくと思います。

――『天狗の台所』を楽しみにしている方に、メッセージをお願いします。

『天狗の台所』は、現代を生きる忙しい方たちにとって、安らぎや、安心をお届けできるような作品で、毎日の皆さんの生活の部分に関して改めて考えるきっかけにもなるのではないかと感じています。疲れた時に見ていただければ、ちょっとしたリラックスにもなって皆さんの生活が少しでも豊かになる手助けができると思うので、ぜひ楽しんでいただけたらうれしいです。

【駒木根葵汰】
2000年1月30日生まれ、茨城県出身。高校時代に始めたInstagramをきっかけにスカウトされて芸能界入り。映画「ジオラマボーイ・パノラマガール」や、「NO CALL NO LIFE」に参加したのち、2021年からスーパー戦隊シリーズ「機界戦隊ゼンカイジャー」の主人公・五色田介人役に抜擢された。2022年からは同名の役で「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」に出演。現在はBSテレ東「たそがれ優作」にも出演し、文化放送「レコメン」の月曜パーソナリティとしてレギュラー出演中。

【ドラマ『天狗の台所』】
NY育ちの少年・オンは、ある日自分が天狗の末裔(まつえい)だと知らされる。天狗(てんぐ)のしきたりにより、14歳の1年間、日本で暮らす兄・飯綱基と隠遁(いんとん)生活を送ることに。天狗といっても特別な力はなく、兄の関心はもっぱら日々の食と素朴な暮らしに向けられるのだった。しかしある時、オンは天狗の秘密を目の当たりにする。

写真:©entax

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