永瀬廉 緊張した教授をフォローし会場を和ませる 映画『法廷遊戯』特別講義イベントリポート
2023.10.30 09:306日に現役法学部60人に向けて映画『法廷遊戯』特別講義in専修大学が行われ、原作者の五十嵐律人、深川栄洋監督、専修大学の関正晴教授が登壇。さらにイベントの中盤に、主演を務めた永瀬廉(King & Prince)がサプライズで登場すると学生たちからは悲鳴に近い歓声が上がった。永瀬の発言を中心に熱気に包まれたイベントの模様をリポートしていく。
イベント冒頭のトークでは、原作者の五十嵐律人が小説を執筆した経緯を「法律っておもしろいんですけど、なかなか法律に携わってない人に伝わらない。そこで、小説という形で法律のおもしろさを書けないかなと思った時に、今回の映画にも出てくる無辜(むこ)ゲームという実際のロースクールでも行われている模擬裁判を思いついて、アイデアの着想になった」と語った。
■関正晴教授「一問一答の尋問の仕方が現実の裁判に近いものを感じた」
また、映画化で気をつけたことを深川栄洋監督は「原作の法律用語がとても難しかった。法律の知識の無い若い人たちにどういうふうに広く法律のおもしろさ、危うさを感じさせるかが難しかった」と映画化への苦労を吐露した。これに対し、五十嵐は「事件が起きるところだけでなく、そこまでの過程や裁判のパートも飽きさせない工夫、展開の仕方などを、よりエンターテインメントに仕上げてくださった」と褒め称えた。法律家としてこの映画の感想を聞かれた関正晴教授は、「監督の苦労を感じた。巧みな編集力がすごい」と絶賛し、「話題が変わる場面で法律の制度や手続きが出てきて、うまく使っているなと。特に証人尋問が一番感心した。一問一答の尋問の仕方が現実の裁判に近いものを感じた」と映画のリアルさに感心した様子だった。
■永瀬廉 「えげつない訓練ですね、今からは」と苦笑
そして、イベント中盤で主演の永瀬廉がサプライズで登場すると教室は驚きの声と歓声に包まれた。裁判長席に座った永瀬は「なんかちょっと、ここ(裁判長)の席に座るのは緊張しますけど、似合っているということで、助かります。ありがとうございます」と照れながらも挨拶。60人の法学部生を目の前にした感想を聞かれると「実際、少しだけですけど弁護士役をやらせていただいて、ロースクール生の頃の時も演じさせていただいた。その中で、弁護士になるために並々ならぬ努力をしないとっていうのを、この作品を通して学んだので、みなさんの大変な思いも少しだけ気持ちがわかる。親近感が湧いています」と微笑んだ。
主人公の久我清義(セイギ)を演じるうえで意識したことを質問された永瀬は「シンプルにセリフがめちゃめちゃムズいんで、ごっちゃにならないようにプラスかまないようにってことですかね。法廷のシーンももちろんあったので、ピリッとした空気が流れていてそのプレッシャーを感じながらも演じた。謎が解けていくうちに、セイギが感じたものをどこまで表情や仕草に出していくのかっていうのは、監督と話し合いながらバランスを調整した」と弁護士役を演じる上での苦労を語った。
ここで、司会が関教授に永瀬の演技がどうだったか質問すると、「一問一答のシーンで、スギ…スギモト…杉咲花さんですね」と映画に出演している杉咲花の名前をかんでしまうという場面も。すかさず、永瀬が「緊張してらっしゃいます?」と声をかけ会場を和ませた。また、永瀬がいい弁護士になれそうかという質問に「訓練を積んでいけば」と関教授が答えると、永瀬は「えげつない訓練ですね、今からは」と苦笑するも「役作りで裁判の傍聴にも人生で初めて行かせていただいたんですけど、そこで感じた空気感とかはちょっと最後のシーンでも出せたんじゃないかなと。たぶん、この作品に携わってなかったら人生で裁判の傍聴に行くことは無かったと思うので、この作品に携われて人生の新しい経験をさせてもらったことが多いなと感じる」と役作りの成果が実ったようで照れながらも喜びをかみ締めた様子だった。
■永瀬廉 「見て下さった方に考えていただくところも多々ある」
イベント後半では学生たちとクロストークが展開された。映画に出てくる無辜ゲーム(模擬裁判)を実際に行ったことがあるかという問いに学生が「おとぎ話の『ヘンゼルとグレーテル』を題材にして模擬裁判を行い、魔女を殺害したことは立証できるのか?という裁判」と答え、司会者から「裁判長、判決は?」と振られた永瀬は「僕ですか!?」と驚きつつも「『ヘンゼルとグレーテル』をそこまで知らないんですけど、殺害したのは良くないので有罪で!」とあっさり判決を言い渡した様子に教室は笑いに包まれた。その後も法律を学んで役立ったことを生徒から聞いた永瀬は「そういう知識って僕らの生活にも絶対切り離せない存在。学んでおくと今後にだいぶ活かせそうで良いですよね。知識があると行動もできますもんね」と改めて感心した様子だった。
学生から「法律を勉強してる女性の印象は?」と聞かれた永瀬は「どのようなイメージ…」と少し返答に困りながらも「他の学生よりも、何倍も勉強して知識をつけていかないといけないと思うので、過酷な状況に耐えられる。忍耐力があって、強い女性かなって」と答えた。質問の中には「映画の主題歌がKing & Princeの曲(『愛し生きること』)ですが、一番好きな歌詞・フレーズは?」とユニークな質問もあり、永瀬は「好きな歌詞ですよね? “綺麗な嘘で抱き締めるから”というところがあって。今回の主題歌が、この映画のために作られてバシッとハマった感覚があった。この歌で救われた自分がおるというか。“綺麗な嘘で抱き締めるから”という部分が、セイギ(永瀬)が二人(杉咲花演じる織本美鈴・北村匠海演じる結城馨)に対する思いに通ずる部分があると思っていて、そこが好きですね」と真剣な表情で答えた。
最後の挨拶では、「清義(永瀬)と美鈴(杉咲)と馨(北村)がメインとなって物語が進んでいく。それぞれが抱えた過去の部分であったり、思いであったり、この映画を通して人それぞれ抱えている正義感・信念を突き通す苦しさ、辛さ、難しさがしっかり描かれている。あまり、(法律に)近くない存在の人でも楽しんでいただける。この映画をきっかけに法律に興味を持ってくれる方がいるのではないかと思っています。(映画が)余白を残して見て下さった方に考えていただくところも多々ありますので、見に行った方と感想を話し合ってそれぞれの意見を交換しあっても面白いのかなと思います」と静かに熱く語り熱気に包まれながら行われたイベントを締めくくった。
本作は、原作者の五十嵐律人が第62回メフィスト賞を満場一致で受賞後、現役司法修習生時代に刊行。裁判ゲームで実際に起こった殺人事件をきっかけに、3人の仮面の裏に隠された真実が暴かれてゆく。二転三転、四転五転する新たな真実、そして最も神聖な場のひとつである”法廷”で待つ、常識を覆す驚愕(きょうがく)の結末。実力派俳優を迎えたノンストップ・トライアングル・ミステリー。
出演:永瀬廉(King & Prince) 杉咲花 北村匠海 戸塚純貴 黒沢あすか 倉野章子 やべけんじ タモト清嵐 柄本明 生瀬勝久 筒井道隆 大森南朋
映画『法廷遊戯』は11月10日(金)公開
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