近藤麻理恵 自著の片づけ本が世界的ベストセラーになった“偶然”を語る 成田悠輔は「超常現象ですか」
2023.10.19 17:00毎月末の月曜深夜25時59分から日本テレビで放映されている『夜明け前のPLAYERS』は、経済学者・成田悠輔が“未来の日本を作る変革者=PLAYERS”をゲストに招き、気になることをぶつけるトーク番組だ。河野太郎デジタル大臣をゲストに迎えた第1夜に始まり、ファッションデザイナーの小泉智貴やYouTubeを席巻する中田敦彦などが、業種を問わず成田からの忖度無しの質問責めを浴びている。
第9夜のゲストは、片づけコンサルタントの近藤麻理恵。2010年初版の著書『人生がときめく片づけの魔法』は世界40か国で翻訳され世界的なベストセラーに。“こんまりメソッド”を引っ下げて世界に羽ばたいた。初対面の成田は最初、同世代だからドキドキすると漏らしてはいたものの、あっと言う間に我を取り戻し「片づけ」が日本の未来に関わるといった仮説にまで行き着く。
■営業ウーマン近藤が著書執筆前に突然立てた大きな志 「絶対ベストセラーにする」
成田と近藤の収録は2時間近くに及んだ。トークの序盤は近藤が“こんまり”となるルーツをたどり、近藤の不思議ちゃんな一面に苦笑しつつも「片づけ」を哲学するまでに昇華した。哲学に至る要因は、アメリカでの近藤の著書の扱われ方だ。日本では生活関連の一実用書に分類される本書が、アメリカでは「禅・フィロソフィー(哲学)」の棚に置かれる。
そして10年強の時間をかけてシリーズ累計1,400万部以上を売り上げるに至った。その裏にはち密に計算された戦略があるのではないかと考えたのだろう成田は、世界進出メソッドを近藤から聞き出そうとするのだが近藤は「世界に行くつもりはなかったのに、いつのまにか」とふんわり返答するばかりだ。
そこで「何がきっかけで、こんなことになっちゃったんですか」と著書出版前後数年のエピソードを近藤に求めたことで、新たな近藤の生態がつまびらかになった。
中学生で片づけに開眼して以来、片づけが趣味となった近藤は大学に入ると、一人暮らしの友人宅を「片づけをさせて」と訪れるようになったのだとか。すると「こんまりちゃんが来ると部屋がきれいになるらしいよ」とうわさが広がり、見知らぬ人から「お金を払うから片づけてくれ」と依頼がくるように。趣味が仕事へと変化した。
副業OKの会社に就職してからも、平日は営業ウーマン、土日は片づけコンサルタントと二足のわらじで活動していたのだが、人の性とは隠せないもの。本業の提案先である中小企業の社長の机が散らかっているのがどうしても気になり「片づけさせてください」と申し出てしまった。
そこから平日の出社前、朝7時から9時の社長向けの片づけセミナーが始まる。するとこれまた口コミが広がり人づてに顧客が増える。結果、独立を決意するわけなのだが、ここまでで意図的に仕事を広げようとしただとか、虎視眈々(こしたんたん)と独立を画策したといった話は出てこない。
ただ1点「明確だった」と近藤が豪語したのは、著書『人生がときめく片づけの魔法』という本を絶対にベストセラーにするという大きな志を立てたということだ。ただこれも、目標を立てて準備しゴールに向かうという営業ウーマンの振る舞いに所以するものとも明かしている。
成田は納得がいかない様子で、「そこから40か国語に翻訳されるって、だいぶギャップがありますよね」と迫るが、近藤は、本の書き方セミナーに通ったり、マーケティングの勉強はしたりしたと話すものの「そうなんですよ。びっくりです。100万部を売る、ミリオンセラーにするってPRとかさせてもらっていたら、超えちゃったんですよ。100万部」とコロコロ笑った。
■日本発の片づけ本が世界を魅了した理由は日本の“それ”と変わらなかった
さらに自著が世界の本屋に並ぶことになったのも、出版社が海外の出版に力を入れていた関係で原稿を海外のブックマーケットに持っていったからだと近藤は言う。それがたまたま『ニューヨーク・タイムズ』の記者の目に留まり、記事化されたことで世界のメディアに広がり、あれよあれよとニューヨーク・タイムズのベストセラー総合1位になった。
「偶然が重なってたまたま生まれてしまった超常現象なんですか」と成田。ならば著書の何が、“こんまりメソッド”の何が世界の人の心に響いたのかが気になる。
なぜそんなに気になるのかと言うと、日本発の実用書的な書物が国外で売れることはほぼないということを成田は知っているからだ。「前例がないようなことをされているけれど、それが謎の志を突然立てたことでかなうのか」と詰め寄った。
著書のPRでアメリカをブックツアーした際、最初の講演からつかみが良かったと近藤が振り返った。“こんまりメソッド”の根底にある精神的な側面や、心を整えるというメッセージが日本と同じようにアメリカでも伝わった感触があった。アメリカでも片づけが必要とされていると、その時知ったのだと近藤は言う。
「モノを通して自分の心の状態を整理しながら環境を片づけていくことで、心の中で1番大切なもの、人生にとって1番ときめくものは何かがはっきりします。このプロセスが片づけ。片づけって自分の心を整えることなんだ、ただの片づけじゃないんだって皆さんが思った時に(世界のこんまりへの風が)動いた」と確信する。
■日本の重要な社会課題の1つは片づけ?! “こんまりメソッド”で国を片づけてみる?
成田の興味はさらに、“こんまりメソッド”が他で活用できないかという点に移る。「オフィスとか街とか、都市とか国とかの片づけは考えたりしますか?」と質問。成田の思いは「日本の人口減少、高齢化を踏まえると今後、インフラや交通網、建物とかは少しずつ片づけが必要で、順番や方法をどうしたら良いかが1番重要な社会課題の1つだと思っている」ところにある。
成田は、“こんまりメソッド”で確立された身の回りのローカルな片づけから、国土というグローバルな片づけまでには普遍的な片づけのレイヤー、階層みたいなのがあるのではないかと推測。カオスな状態を魅力とする都市を例に持論を展開した。
意見を問われた近藤が「(“こんまりメソッド”的には)カオスがあっても良いし、無くしてすっきりするのも都市の魅力だから、どちらでもいいです。重要なのはその場所をどうしたいのかといったビジョンかな」と答えるとそこから成田は「日本はGDPや株価や地価といった世界的な尺度の元で比較され不利な状況だから、これからは自分たちが尺度を定義することが大事」「“こんまりメソッド”には日本発の定義や尺度のようなものが埋め込まれているんだ」と“ふと”思った、という話が止まらない。
そして話は、埋め込まれた定義の1つであり、“こんまりメソッド”の象徴でもある”ときめき”という言葉が、“こんまりメソッド”が世界で大きく広がるためのフックとなったことに至る。
第9夜の様子ほか「夜明け前のPLAYERS」の全話は、公式YouTubeでディレクターズカット版が、公式HPでノーカット版が配信されている。
『夜明け前のPLAYERS』
公式HP:PLAY VIDEO STORES
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