ドラマ『MALICE』主演俳優の1人・高梨臨に単独インタビュー 「それぞれの視点で違った見え方、まるで“SNS社会”」

2023.9.15 15:00

『刑事』『容疑者』『記者』という立場の違う3人の視点を通して、殺人事件の“真犯人”を追い詰めていく様子が描かれるヒューマンサスペンスドラマ『MALICE(マリス)』。

トリプル主演となるこの作品では、正義感が強い刑事・星野尚人役を林遣都、容疑者として逮捕されてしまう大学講師・谷村夏帆役を高梨臨、スクープを狙う週刊誌記者・丸山奏太役を佐藤隆太が演じている。

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今回entax取材班は、潔白を証明すべく事件に向き合う大学講師・夏帆役を演じた高梨臨に、ドラマのみどころや、作品のタイトルにもなっている人間の『MALICE』(悪意、敵意、恨み)をどんな部分で感じるのか思いを聞いた。

◾️夏帆はまわりに「悪意」を向ける“負のキャラクター”

物語の発端となるのは翔東大学の事務局長・小園洋平が自宅から刺殺体で発見されるという殺人事件。現場に駆けつけた刑事の星野(林遣都)はリビングの様子を見て、妻と離れて暮らしていたという小園に別の女の影を感じる。

その女というのが小園と同じく翔東大学に勤務している国際社会学部の講師・谷村夏帆(高梨臨)だ。夏帆はどんな手を使ってでも出世しようとしており、半年前から人事権を持つ小園と不倫関係にあった。その小園が殺害され、夏帆は容疑者として逮捕されてしまう。

――夏帆はどんな人物なんですか?

高梨 谷村夏帆は、誰にも頼らず自分一人で生きてきたという意識が強い女性。上昇志向や出世欲も強く「自分の力でのし上がってやろう」という気持ちがすごく強くて誰も信じられないんですね。

昔、お父さんに捨てられたというか、裏切られたっていう気持ちが強くて、そこから誰も信用できなくなって、自分の力でのし上がってやるみたいな。ちょっと「負のパワー」がある感じに見える役柄ですね。

――出世欲が強いということは男性的な性格のキャラクターですか?

高梨 男性的というよりは、女であることを利用してでものし上がってやるって思っているぐらい強い女性っていう感じですかね。
出世したいという意味では男性へのコンプレックスもあると思います。そして「男ってどうせ女をそういう目でしか見てないでしょ?」と、思っている部分もあったりとか、だからこそ、もう男は利用してやる気持ちもあったりする女性です。

――そういう部分は高梨さんとはかけ離れていますか?

高梨 そうですね。なんか女を利用することって別に、特に私生活でないですけどね。あっ「ご飯おごって!」ぐらいしかないので(笑)

仕事柄、男であろうが、女であろうが、あんまり関係ないっちゃ関係ないので、(俳優は)女性だから出世できないとか、そういうのももちろんないですし、役割が完全にわかれているので、そういう経験はないかもしれないです。

――同性として共感できるというよりは全然違うタイプ?

高梨 全然、自分とは違うなって(台本を)読んでいて思いました。周りの人にどう動かされるとかじゃなくて、自分の中での葛藤とかを大切に演じようっていう気持ちでしたね。それは自分の中では、 “新しい役柄”だと思いました。

――ドラマでは役のプライベートな部分にも焦点が当たると聞いたんですが…

高梨 お父さんが出て行ってしまったことが出てきます。それをずっとトラウマに抱えているので、家族の誰も信用できないし、男性も信用できなくて“人間不信”になっている感じです。

自分の心のぽっかり穴があいた「お父さんのせいで」みたいなところが、何かその人物に影響を与えているものが大きいというか。そこから人を信じられなくなっているし、妹が出てくるんですけど、妹と近づきたい気持ちもあるけど、近づきたくない気持ちもあるみたいな、彼女の人格を揺さぶるのは家族とかプライベートのことなのかなっていう風には思いました。

◾️夏帆が向き合い対時する「悪意」とは…

――夏帆はどういった「悪意」とか「敵意」というものを乗り越えて真相に迫っていく?

高梨 本当に最初は夏帆って、すごい悪意の塊というか、人への恨みとか羨ましさとか、全ての(負の感情を)自分が前に進んでいくためのパワーに変えていくタイプ。

ちょっとずつ父親に対してのトラウマが溶けていくことによって、何か人生終わりだって思う部分も途中であったりするんですけど、それでも「死ぬぐらいなら人を信じてみよう」と最後は思うようになって、悪意というものがちょっと溶けていくというか、変わっていくというか。

でも、その悪意って別の視点から見ると、実は悪意じゃなかったりとか、そういうものもあるんだなっていうのが、このドラマを通じて感じました。

――夏帆はどんな悪意を周囲に向けている?

高梨 結局みんな「自分のことしか考えてないんでしょ?」みたいなのが、すごくベースにある人なので、別に悪意を持って言われてないことでも、それを悪意に感じてしまったりなど基本的には誰にも好意を寄せないというか、みんなに対して悪の気持ちをベースに持っているのかなっていう風に思います。

◾️それぞれの視点で違った見え方、まるで“SNS社会”

――事件の容疑者として世間から向けられる視線だったりとか、そういった「悪意」も描かれているんですか?

高梨 世間の目は一番大きいと思いますね。私が容疑者になって「絶対お前がやっただろう?」みたいな目で見られて、それですごく悪意を持って叩かれるけど、結局ニュース(の論調)が変わっていくと「最初から信じてた」みたいになったりとか、それってもう本当に典型的な今のSNS社会といいますか。それはこの作品の大きなテーマの1つでもあるのかなって思います。

――そういうのは普段テレビの報道なんか見ていても、思うところはありますか?

高梨 何も知らないのに悪意を持って言う。それは良くないですよね。政治のことなどを意見するのは良いことだと思いますけど、それ以外の個人的なことでもインスタグラムとかツイッターとか、誰でも何でも言えちゃうじゃないですか。

――どういったが作品のみどころになりそうですか?

高梨 このドラマは3つの視点から描かれているドラマなんですけど、星野(林遣都)と谷村(高梨臨)と丸山(佐藤隆太)がいて、それぞれの視点の見え方がSNS社会じゃないですけど「この人から見たら、この人の味方になるよね」「この人から見たらこう見えるよね」みたいな、その体験っていうのは、なかなか一つの作品の中ではできない体験なのかなって思って、そこは楽しんでもらえるとうれしいなと思います。

◾️林遣都さん、佐藤隆太さんの印象は?

――トリプル主演ということですが、高梨さんから見た林遣都さん、佐藤隆太さん、それぞれの印象を教えていただけますか。

高梨 林遣都くんはすごく久しぶりにお会いしたんですけど、もともと静かなイメージがあって、今回はお互い駆け引きするような役柄だったので、いっぱい話したってわけではないんですけど、何かすごく不思議…良い意味の不思議じゃなくて(笑)すごくミステリアスというか、まだ分からないことがたくさんある感じの方です。

でも佐藤隆太さんと一緒にいるとちょっとふざけたりとかもするんですよ。冗談言ったり。だから自分の中ではまだ全然わかっていないんですけど、実は面白い人なんだなって、すごくクールな感じに見えているんですけど、実は面白い一面があるんじゃないかなって今思っているところです。

佐藤隆太さんは本当にすごくフラットな感じで、お芝居もフラットに入られますし、普通に話かけてもくれて、現場のムードも作ってくれて、すごく自然体な方という印象です。明るいですし、みんなを自然と一つにしてくれる感じが、一緒にいて居心地を良くさせてくれるのだと思います。

◾️私生活で「悪意」を感じた経験は?

――タイトルが『MALICE』(悪意、敵意、恨み)ですけど、何か悪意に翻弄されるみたいなことってありますか?

高梨 いやーでも基本的に恨まれるようなことはしてないつもりなので、ないと思うんですけど…本当にこの職業柄、理由もないのに何か嫌われることももちろんありますし、何か嫌なこと言われたりとかも、もちろんありますけど。でも別に根拠がなければ何とも思わないので、プライベートでは「ない」と信じています。

基本的にすごく平和主義なのでケンカもしないんですよ。ケンカする前にあきらめちゃうタイプというか。ケンカする体力すらもったいないと思っちゃうタイプなので、平和主義です。

【高梨 臨Profile】
1988年12月17日生まれ。千葉県出身。A型。
身長:166cm
出演作品:映画『ライク・サムワン・イン・ラブ』(2012年)主演:明子役、NHK連続テレビ小説『花子とアン』醍醐亜矢子役(2014年)、MBS『バツイチがモテるなんて聞いてません』主演:小野和葉 役(2023年)、TBS 日曜劇場 『VIVANT』乃木明美役(2023年)、日英合作映画『Cottontail』メインキャスト:さつき 役(2024年日本公開予定)など

U-NEXT 制作ドラマ『MALICE』
配信開始:2023年9月14日(木)19時~
配信形態:見放題
主演:林遣都、高梨臨、佐藤隆太
番組公式X(旧ツイッター):@MALICE_UNEXT

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