音楽劇『SHINE SHOW! シャイン・ショウ!』出演の柳美稀　めちゃくちゃきれいな歌声に囲まれ「一生聴いていたいです」

8月18日（金）から東京・日比谷のシアタークリエで舞台『SHINE SHOW!』が始まる。複合オフィスビルの管理会社が主催するカラオケ大会を舞台に、運営スタッフやテナント企業社員の苦しみや喜びを描くコメディだ。身近なテーマに見えて、出演者がすごい。カラオケ大会の運営スタッフに元宝塚歌劇団宙組トップスターの朝夏まなと、カラオケ大会の出場者に元宝塚歌劇団花組トップ娘役の花乃まりあや、シンガーソングライターの中川晃教がいちサラリーマンとして名を連ねる。ただの“カラオケ大会”ではなさそうだ。中川の恋人役であり、最近精力的に舞台に挑み始めた柳美稀に、稽古の様子や作品の魅力を聞いた。

稽古は和気あいあい　休憩中の話題はもちろん「カラオケでどんな歌うたうの？」

「歌声が素晴らしくて！」と柳美稀が興奮気味に語り出した。インタビューしたのは、稽古が始まってまだ2週間程度という時期だ。

「皆さんまだ本域では歌っていらっしゃらないと思うんですけど、それでもすごいんです。めちゃくちゃきれいな歌声で気持ちが良くて、心が落ち着く気がして。ずっと聴いていたいです！こんな素敵な歌声を隣で聞けるなんて、稽古に参加できて幸せです」と言うのだ。

朝夏まなとは宝塚退団後も､『マイ・フェア・レディ』、『天使にラブ・ソングを～シスター・アクト～』で主演を務めたほか、『SPY×FAMILY』など話題のミュージカルにも出演。一方中川晃教も、ミュージカル『モーツァルト！』の主演をはじめ、高い歌唱力が求められるミュージカルで俳優としての力を確かなものにしてきた。その二人の初共演が『SHINE SHOW!』の“カラオケ大会”というのだから、“普通”の枠に収まらないコメディの匂いがプンプンする。

脚本は、屁理屈（へりくつ）シチュエーションコメディ劇団・アガリスクエンターテイメントの冨坂友。1つの場所で起こる事件や状況の食い違いで笑わせる喜劇を得意としている。演出は、ウェルメイド・プレイと呼ばれる洗練された喜劇を得意とする劇団・東京サンシャインボーイズで数々の作品を演出してきた山田和也だ。役者の反射神経が試されそうだ。

大変な稽古場だが“和気あいあい”なのだと教えてくれた。「舞台がカラオケ大会のお話なので、普段はどういった歌うたうの？とか話したりしています」と言う柳の十八番は、「よく歌うのは新世紀エヴァンゲリオンの『残酷な天使のテーゼ』。それから、中島みゆきさんの『空と君のあいだに』はよく歌うし、よく聴きます。犬目線で書かれた歌詞だって知ってから、犬好きとしては泣きながら歌ったり聴いたりしています」だそうだ。

好かれるように演じたい　「小出さんみたいな人は憧れです」

柳が演じる『小出由梨』は、中川が演じる『和歌山翔』の交際相手だ。2年間の付き合いを経て、カラオケ大会でプロポーズされるらしい。小出とはどんな女性なのだろうか。

「（脚本を読んで）私が思っていたよりは、サバサバした子なのかなと思っています」と柳。「私だったら選ばないであろうことを選ぶんですよ」とネタバレしないように教えてくれた、その人物像は意味深だ。

「彼氏が考え過ぎちゃうタイプなので、それを引っ張っていく、しっかり自立した女性という感じがしました。女性から好かれるタイプの女性だって思うので、観に来てくださる方にも好いてもらえるように演じたいです」

クールビューティーのイメージがある柳とは似ているかと聞いたところ「似ていないです」と全否定だ。「こんなにしっかりしてないし、人を引っ張っていけないです。小出さんは物事に対してパキパキって切り替えられるけど、私はちょっと引きずってしま うところがあるので、小出さんみたいな人は憧れです」という答えに驚いた。

さらに今の心境は「ちょっと不安だけど、稽古が本当に楽しい」と言う。「私は舞台出演も少なく、経験のないコメディですが、共演者の方はプロフェッショナルな方々ばかりなので、日々の稽古で沢山学ばせていただいています。皆さんに必死に付いて行って、全力でしがみついて、より良い姿をお客さんにお見せしたいです！」。

柳は、2016年にテレビ戦隊シリーズ『動物戦隊ジュウオウジャー』で映像デビュー。ストイックで負けず嫌いなサメの化身『セラ』を好演して以来ドラマや映画への出演が主だったが、昨年のミュージカル『世界でいちばん美しい～鎌倉物語～』への出演を皮切りに、今年は『SHINE SHOW！』が3本目の舞台となる。秋からは日本テレビ開局70年記念舞台『西遊記』への出演が予定され、舞台俳優としての階段を駆け上がっている最中だ。

『SHINE SHOW!』への出演も、これらの舞台出演をきっかけにオファーされたと言うから、今後の期待も大きい。「きっとこれから通し稽古がたくさんあるので、もっと試して自信をつけたいです」と柳自身も力が入っているようだ。

そんな俳優魂を見せる一方で、稽古場近くのラーメン屋を調べては空き時間に「ちょっと行ってきます」と出かけるらしい。「ラーメンは豚骨が好きなんですけど、最近は中華そばにはまっていて、ニンニクを大量に入れるのが大好き！」と柳。案外肝が据わっているようだ。

舞台を観て楽になってほしい

『SHINE SHOW!』には、そこまで考えなくても大丈夫だよって思う人がたくさん出てきます。でも、会社員の方にとっては共感する場面もあるのかなと思うんですよね」と話す柳の役柄も会社員だ。

実生活で会社員経験のない柳は役柄に接して「（会社員は）素直に感情を出さないで、自分を押し殺しているのかな」と感じたらしい。「例えばスケジュールを変えてほしいって電話してダメだった時、本当は落ち込んでいても“無理言ってすみません”って相手に気持ちは見せない。普通の電話のやり取りとは違うなと思いました」

だから観客と作品の接点を敏感に感じるのだろう。「私には考え過ぎだよって見えることも、観客の皆さん、特に会社員の方には“分かる、分かる”って自分とリンクすることが多いんじゃないかなと思います」と柳は言う。「お話が進むとそれぞれの悩みが解消されて、考え過ぎだったんだって本人も思える。だから、舞台を観ている方も一緒に気持ちが楽になっていただけたらいいなって思います」と締めくくった。

【柳 美稀 Profile】
1997年8月24日生まれ、愛知県出身。B型。
2016年、テレビ朝日の戦隊シリーズ『動物戦隊ジュウオウジャー』のシャーク／セラ役としてドラマ初出演。その後、俳優として活躍の場を広げる。
近年の主な出演作は、映画：『刀剣乱舞-黎明-』、『ハニーレモンソーダ』、『賭ケグルイ』シリーズ、舞台：ミュージカル『世界でいちばん美しい～鎌倉物語～』、Disgoonie presents Vol12『玉蜻～新説・八犬伝』、劇団マカリスター『なんだコイツ』（Ｗ主演）など舞台作品に積極的に挑んでいる。
また、11月からは日本テレビ開局70年記念舞台『西遊記』への出演が控えている。

【公演情報】
舞台『SHINE SHOW!』
日程：2023年8月18日（金）～9月4日（月）
会場：日比谷 シアタークリエ（東京都千代田区）

出演：朝夏まなと、小越勇輝、花乃まりあ、木内健人、石坂勇、増本尚、柳美稀、栗原沙也加、西村直人、久ヶ沢徹 ／ 中川晃教
作：冨坂友（アガリスクエンターテイメント）
演出：山田和也
製作：東宝

写真：©entax