2023年のハーマイオニー・笹本玲奈に単独取材 舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に共感「子育ての悩み、同じです」

2023.8.6 16:00

2022年の夏から、東京・TBS赤坂ACTシアターで舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』が、記録的なロングランを続けている。言わずと知れた“ハリー・ポッター”の、19年後を描いた作品だ。大人になり親となったハリーたちが新たな試練に立ち向かう姿を、小説『ハリー・ポッター』の著者J.K.ローリングがジャック・ソーン、ジョン・ティファニーと共に舞台のために書き下した。2016年にロンドンで初演されて以来、アメリカやオーストラリアなど6都市で公演、7番目の公演としてアジア初上陸となったのが東京公演のこの舞台だ。映画で観た魔法が舞台上でリアルに披露される驚きと深いストーリーが話題を呼び、2023年7月にロングラン2年目に突入した。2年目キャストとしてハリーの親友、ハーマイオニー・グレンジャーを演じる笹本玲奈に舞台の魅力を聞いた。

「本番をやられている方の熱量に負けてしまいそう」 上演中に加わるがゆえのプレッシャーが

インタビューに入る前に “ハリー・ポッター”について少し予習をしておこう。

人気の始まりは1997年、ロンドンで出版された小説『ハリー・ポッターと賢者の石』。全7巻のシリーズで物語が展開し、つど映画化され数十年にわたって世界中で人気を博している。

ロンドンに住む孤独な少年ハリー・ポッターが、11歳の誕生日に魔法界にあるホグワーツ魔法魔術学校からの入学招待状を受け取ったことで、二人の親友を得、魔法使いである自身のルーツと闘いながら成長する物語だ。

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は、小説と映画で10代だった主人公たちの19年後を描いている。舞台制作までに多くのキャラクターが登場し複雑なストーリーが展開されているので、初めて「ハリー・ポッター」に触れる方は次の4人の関係を頭に入れておくとよいだろう。

主人公のハリー・ポッターと、親友の一人で優等生のハーマイオニー・グレンジャー、もう一人の親友でハーマイオニーの夫となったロン・ウィーズリー、ハリーのライバルで犬猿の仲のドラコ・マルフォイ。では、お待たせの笹本玲奈のインタビューに入ろう。

―― いよいよ舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』デビューですね。

はい。いよいよです! 上演中に新メンバーとして加わるという経験が初めてなので、ちょっとプレッシャーを感じています。

今舞台に立たれている方と一緒にお稽古できるようになったのは最近なんですが、本番をやられている方の熱量に負けてしまいそうで(笑)。でも私たちのことは新鮮には感じていただけると思うので、自分たちが新しい風となってロングラン2年目を盛り上げていければなって思っています。

大好きなハーマイオニーはバリキャリの働くママに 「彼女の可愛らしい部分を大切に演じたい」

―― 19年後のハーマイオニーはどんな女性になっているのでしょう。

すごく頭が良くて、先々までちゃんと考えて行動できるところは変わらないんですが、プラスして、ロンとの恋人関係を経て愛情深さが育ってきたんだろうなって思うんです。

舞台では1人しか出て来ないんですけど、実は彼女は二児のママ。子育てをする中で母性が生まれ、子育てする親へのリスペクトもあって、子どもを持つハリーやドラコへの思いがより強くなっていると感じます。

―― 以前からハーマイオニー好きだと聞きました。

そうなんですよ。彼女ってすごく優等生で、最初はちょっと嫌われているじゃないですか。でも、ツンとしながらちゃんと自分を保って我慢している。ほんとうはくじけそうなのに感情を露にせず、耐えて耐えて耐えているっていう姿がすごく可愛らしいと思うんです。

それが、(学生の頃に)ロンに彼女ができた時すごく嫉妬する姿を見せるんですね。ちょっとした女心が出てくると「それ待ってた!」みたいな(笑)。そんな人間らしいところが好きですね。舞台でもそういう姿が時折描かれているので、彼女の可愛らしいところを大切に演じたいなと思っています。

―― ハーマイオニーと笹本さんは似ていますか?

似ているところはあると思います。

ハーマイオニーは仕事上いつも「威厳を保たなきゃ」って思っているし、ハリー共々有名人だからどこに行っても注目されちゃう。それを堅苦しいと思いながらも、みんなが持つ自分のイメージは崩してはいけないって思いながら生活していて、でも友人とか家族とか心を許せる人たちの前では気が緩むんです。

私も、自分では気づいていないんですけど、稽古場とか仕事をしている時の私は「女優・笹本玲奈」って感じらしいんです(笑)。それが「打ち解けたら意外と抜けているところが多いね」ってよく言われるので、そんなところが似ているかなって。

脚本は読んでも読んでも毎回発見が 「舞台に沼る人の気持ちがよく分かります」

―― 舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は1つのキャラクターを複数の方が演じられます。現在のハリー役は藤原竜也さん、藤木直人さん、大貫勇輔さんの3人ですが違いはありますか?

今一緒にお稽古しているのは、藤木さんと大貫さんなんですけど、藤木さんはストレートプレーやドラマのお芝居の経験が多い方なので、心理的に訴えかけるものが多いんですよね。大貫さんは、体で表現するのが得意な方なので、身体的に「うわっ!」て見せることが多いなって思います。

藤原竜也さんもまた違うハリーを演じられているし、それぞれに良さがあって、それぞれが「あっ、ハリーだ」って思います。

―― 休憩中はみなさんで話されたりするのですか?

しょっちゅうしていますね。 稽古が始まって2カ月近く経つんですけど、未だに「あそこってこういう意味だったのかな」とか、「ここの時間軸はこうだから、あの時のあの人は……」とか話が尽きないです。掘り下げられることが多い、すごい本(脚本)だなって思うんですよ。

―― 休憩中も舞台の話なんですか?

そうですね(笑)。底なしに明るい人たちが多くて笑いが絶えない現場なんですけど、話している内容のベースは、やっぱりハリー・ポッターです。

私自身も普段は、お稽古場を出て家に帰ったら、あまり役のことを深く考えるタイプではないんですけど、今回はずっと考えちゃっているんですよね。2部作の原作も、読んでも読んでも毎回発見があって楽しい。こんな経験初めてで、舞台に沼っている人の気持ちがよく分かります(笑)。

ファンタジーとリアルの融合が演劇として面白い 「現代を生きる大人に刺さると思います」

―― 舞台は映画や小説とも違う親子愛がテーマだと思いますが、お母さんでもある笹本さんは親としてシンクロする点などありましたか?

ありますね。ハリーにしてもドラコにしても、彼らが子どもたちに対して抱える悩みが自分と同じだなって。それに、親だけでなく現代に生きる大人たち皆に刺さるシーンも多いんじゃないかなって思います。

小説や映画は時代も分からないしファンタジー色が強いですが、舞台は現代のお話なんです。現代人が抱える悩みや問題が反映されていて、ハリーやハーマイオニーの生き方が今を生きる人たちの励みになると思います。

―― お子さんはどうおっしゃっていますか?

子どもとは『ハリー・ポッター』の映画を一緒に観たんですけど、怖いシーンがあったようで途中で断念してしまいました。だから、舞台は観に来られるかどうか分からないんですが、ハーマイオニーをうちのママがやるっていうのはすごく嬉しいらしくて、いろんな人に「ママはハーマイオニー」って言っています(笑)。

―― では、最後に皆さんにメッセージをお願いします。

ファンタジーとリアルの融合が巧みで、魔法界で繰り広げられるお話が身近に感じられる。演劇としてすごく面白いと思います!

専門的な言葉が多かったり、小説や映画を見ていないと分からない登場人物もいるのですが、何の知識もなく観に来てくださった方から「出てくる人物や言葉は100%は分からなかったけれど、あまりにも舞台がすごいから後で詳しい人に「あの人ってこういうこと?」って確認するのがまた楽しかった」と言われ、そういう楽しみ方もあるんだって思いました。

時間が許せば舞台のホームページで用語や登場人物の解説もご一読いただき、ぜひ劇場に観に来ていただけると嬉しいです。

【公演情報】
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』
日程:上演中~2024年3月末
※2024年3月以降も上演予定
※2023年12月公演分までチケット販売中 会場:TBS赤坂ACTシアター(東京都港区)

キャスト:
ハリー・ポッター役       =藤原竜也/石丸幹二/藤木直人/大貫勇輔
ハーマイオニー・グレンジャー役 =中別府 葵/笹本玲奈
ロン・ウィーズリー役      =エハラマサヒロ/竪山隼太/迫田孝也/石垣佑磨
ドラコ・マルフォイ役      =松田慎也/内田朝陽
ほか ※石丸幹二は2024年1月以降の出演予定、竪山隼太は2023年10月以降の出演予定となります。

オリジナルストーリー:J.K.ローリング
脚本・オリジナルストーリー:ジャック・ソーン
演出・オリジナルストーリー:ジョン・ティファニー
インターナショナル演出補:デス・ケネディ
演出補:コナー・ウィルソン
翻訳:小田島恒志、小田島則子 主催:TBS、ホリプロ、The Ambassador Theatre Group

写真:©entax

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