八村倫太郎 “慶應卒で完璧主義の負けず嫌い”からの挫折も…、そこから学んだ“弱みを見せる生き方”を語る

2023.8.1 15:30

7月28日に1st写真集『record』を発売したダンス&ボーカルグループ・WATWINGの八村倫太郎に、entaxが単独インタビュー。昨年、慶應義塾大学を卒業した八村はこの仕事を「天職」だというが、この世界に飛び込む際に迷いはなかったのか。とあるオーディションをきっかけに大きく変わったという、“弱みを見せる生き方”についても語ってもらった。

■大学卒業時の密かな目標とは? 「ちょっと現金な話ですけど…」

――八村さんは大学に入ってからダンスを始めたそうですが、周囲と比べると少し遅いスタートですよね?

すごく遅いです(笑)。なので、もっと早くダンスやっておけばよかったと悔やんでいます。ただ、ダンスは昔から好きだったんですよ。運動会のダンスとかも、一生懸命踊っていました(笑)。本当に赤ちゃんの頃、やっと自分の足で立てるくらいのときから音楽に乗せて踊ったりしていたらしいので、きっと音楽に乗せて体を動かすのが好きなんでしょうね。だから、自然と入ってきたんだと自分で勝手に思っています。

――そこからデビューして活躍しているというのは、改めてすごいことだなと感じます。

いやぁ、僕としては周囲と差を感じるばかりです。自分より若くて、第一線でやっている人とかもたくさんいるので、「あ~ぁ」と落ち込みながら。同じグループのメンバーを見ていて、「ダンスうまいなぁ」「歌うまいなぁ」と思うこともありますし。でも、好きだったものを仕事にすることができたからこそ、もっともっとがんばらなきゃいけないなと思います。

――八村さんは慶應義塾大学を卒業されていますが、もっと安定を求めたり、同期生と比べて焦りを感じるようなことはなかったのでしょうか。

大学2年の時にWATWINGのオーディションを受けてこの世界に入ったんですけど、最終面談で「慶應だよね? 大丈夫? 絶対にこの仕事じゃない方が安定的に稼げるよ?」と言われて、一瞬、心が揺らぎました。でも、昔からやりたかったことだし、就活の時期までにこの世界に進めなかったら潔く諦めようと思っていたので、まずはやってみようと。しかもそのとき、もしデビューできたら絶対に自分が生き生きできるだろうなって、自信があったんです。実際、今は天職だと思いながら活動しているので、そういう意味ではこの道に進むことができてよかったなって思います。

ただ実は、自分の中で勝手に目標としていたことがありまして…。ちょっと現金な話ですけど、同期が卒業して新卒として働き始めたときに、「みんなと同じぐらいの月給ではいたいな」という密かな目標がありました(笑)。

――すごくわかる気がします(笑)。

母は、僕のやりたいことをすごく応援してくれていますけど、その母からも「好きなものを好きなときに食べられる人でいてね」と言われていました。自分の力でしっかり生活していくことは、今まで無条件に応援してくれた家族への“信頼”という恩返しだと思うので、そこは目標でしたね。だから家族に「パシフィコ横浜でライブができるんだ」とか、報告できることがすごくうれしいんです。もちろん会場のサイズがすべてではないけど、「ちゃんと俺、進んでるからね」と伝えられている気がして。今回の写真集発売もすごく喜んでくれました。

■根拠のない自信がへし折られた瞬間「人に頼れない人間のほうが弱い」

――大学受験もものすごく努力されたと思いますが、もともと負けず嫌いな性格ですか?

負けず嫌いです(笑)。でも、今までの自分の価値観で捉えると、この業界に入ってからは“勝ち負け”でいうと、負けることしかないんです。もちろんそれをバネにもするけど、「俺はできないんだ」って素直に認めることも大事だと思うようにもなってきました。「何クソ!」と思う自分もいるけど、そこを認めないと自分が苦しんじゃう。だから今は、負けず嫌いの種類が変わってきた感じがしています。

――何かきっかけがあったのでしょうか?

ありましたね。WATWINGの活動をしながら大学にも通っている中で、あるオーディションがあったんです。そのオーディションのために、日頃お世話になっている先生がワークショップを開いてくれたんですけど、大学でも進級にかかわる重大な提出物がたまっていて、オーディションの準備もできていなければ、WATWINGとしての活動もあって…みたいな状況に追い込まれて。でも完璧主義で負けず嫌いだから、誰かに頼りたくもなかったんですよね。

それで、準備ができていないのに「僕はできます」って根拠のない自信を持ってワークショップに臨んだら、まったく何もできなくて。その先生も、そういう僕をわかっているからこそ、詰めてくるわけですよ。そのときに、初めて過呼吸を起こしてしまったんです。でも、周りにはそんな自分のことを支えてくれる仲間がいて、そこで「俺は人に頼れない人間なんだな。その方が弱いな」と初めて思いました。その頃から「できないって認めよう」、「できないんだったら頼ろう」と思い始めましたね。できるようになることを諦めるわけではないけど、どうしようもないときもあるから、そういうときには周りに頼って、自分の弱いところも見せていこうと。そうしなければ、相手を支えたいときにも支えてあげられないなって気づきました。

――そう考え方を変えて、生きやすくなりましたか?

生きやすくなったと思います。でも、だからこそ“過去の自分すげぇな”と思う部分もあります。なので、僕は過去の自分をよく褒めます(笑)。大学受験をがんばった自分もすごいと思うし、他に頼らずに強く生きていた自分もすごいなと思うし。今でも、そういう自分を認めているのかもしれないですね。

――“過去の自分”が“今の自分”を支えてくれてるって、最強ですね。今までやってきたことは、間違いじゃないと思えているわけですから。

たしかにそうですね…今、すごく良いことを聞きました。ありがとうございます(笑)。

――(笑)。八村さんがアーティスト、俳優として活動する際に、心がけていることも聞かせてください。

今の僕の人生観みたいな話になりますけど、弱みを相手に見せるって、“素直であること”だと思うんです。今、自分が壁にぶつかっているとしたら、それを素直に表現することで、同じく壁にぶつかっている人を救うことができるかもしれない。逆に、乗り越えてきた自分がいるなら、そこを表現として伝えれば、誰かの背中を押してあげられるかもしれない。僕はスーパーマンにはなれないので、これから先も“みんなと一緒だよ”っていうマインドをずっと大切にしていきたいです。ファンの方を先導してるような感覚はまったくなくて、自分自身も一緒に進んでいけたらいいなと思っています。

【八村倫太郎 Profile】
1999年7月28日生まれ、神奈川県横須賀市出身。2019年、ホリプロ主催のオーディション「Star Boys Audition」を経て同事務所に所属。2020年、ダンス&ボーカルグループ・WATWINGとしてデビュー。現在はラジオ『ZERO–8』にレギュラー出演中。役者としての出演作には、ドラマ『ホメられたい僕の妄想ごはん』、『君の花になる』、映画『サバカン』がある。2023年7月に1st写真集『record』を発売。WATWINGとしては、8月22日にパシフィコ横浜にてワンマンライブを予定。8月30日にはメジャー1stアルバム『Where』をリリース。11月11日より全国9か所でライブツアーがスタートする。

写真:©entax

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