SUPER BEAVER単独インタビュー 映画『東京リベンジャーズ2』主題歌に込めた意味「命の美しさは儚(はかな)さとは真逆のもの」
2023.7.4 19:302009年にメジャーデビュー、2011年にインディーズに活動の場を移し、その後、圧倒的なライブパフォーマンスでファンの支持を広げ、10年後の2020年にメジャー再契約につなげたバンド、SUPER BEAVER。その実直な生き方と、心のど真ん中を突くエモーショナルな楽曲、観客一人ひとりに寄り添うライブは多くの人に支持され、今、もっとも熱いバンドとして注目されている。
そんな彼らが6月30日放送(25:29~)の『バズリズム02』に登場。entax取材班が独自取材を敢行した。
番組で歌唱する楽曲『儚くない』(読み:はかなくない)は、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』主題歌で、命とは、人生とは、といったテーマに対して、SUPER BEAVERらしく深く向き合い、そこで葛藤した思いをまっすぐに描いたナンバーである。実は初めてプロデューサーを招いて制作したということで、その意図と曲に託した彼らの思いについて語ってもらった。
■幸せを失うことを怖れるより、それを大切にするために今、何ができるかを考えたい
――まずニューシングル『儚くない』という楽曲に込めた思いを、作詞を担当された柳沢さんにお伺いできますか?
柳沢亮太 よく「振り返ってみると、人生って儚(はかな)いよね」と言いますよね。もちろんその言葉の意図しているところは、すごく分かります。でも同時に“儚(はかな)い”と言って終わらせてしまうのは、果たしてそうなのかな?と思って。そんなにあっけないものかというと、むしろ僕は真逆に感じるんです。
たとえば同じ1日にしても、「あっという間に終わった」という人もいれば、「まったく時間が進まない」というぐらい、ずっと頭を抱えている人もいるかもしれない。「明日が来ればいいのに」と思っている人もいれば、「この夜が明けなきゃいいな」と思っている人もいるかもしれない。
それこそ人それぞれで、千差万別の“今”がある。むしろ儚(はかな)いとは真逆の、濃くていびつで、デコボコしたものが人それぞれにあって。そういったものこそが、人生というか、命の美しさとも呼べるんじゃないか、と。この感覚は近年ずっとあって、特に2020年以降は、一層強く感じるようになっていました。
今回、映画の主題歌ということもあり、『東京リベンジャーズ』も“生きる”という部分に、すごくフォーカスが当たっている作品だと思うんです。だから今一度、儚(はかな)さと真逆である「命」や「生きること」について、しっかり歌いたいと思い、『儚くない』という楽曲を作り始めました。
――人生についていろいろ考えさせられる歌詞がつまっていますが、中でも<僕は幸せが年々怖くなくなってる>という歌詞が印象に残りました。幸せが怖い、というのはよく言われますが、逆に“怖くなくなる”といった言葉の背景には、どのような思いがあるのでしょうか?
柳沢亮太 幸せが怖いというのは、いつかなくなってしまうものなんじゃないか、終わってしまうものなんじゃないか、という感覚だと思いますが、これまでの自分、自分たちもそう考えていたところはあります。
でも今はむしろ、その幸せをどれだけ大切にし続けられるか、というところに軸足を置きたい、という感覚があって。もちろんそこに対する不安はあると思いますが、それよりも、どこまでそれを持続できるか。
何なら最後までそれを共にすることができるために、じゃあ今、何ができるんだろうというところに考えの重きを置きたいなと、少しずつ思考がシフトしてきている気がしていて。だからこういったフレーズが書けたのかな、と思っています。
――この“幸せが年々怖くなくなってる”という感覚は、たとえば実体験ではどんな時に感じられますか?
渋谷龍太 少しずつ時間をかけてですが、バンドとしても人間としても強くなっていっている感覚はあります。だから背負ったり、抱えたりするキャパシティは、圧倒的に増えてきていると思いますし。今まではプレッシャーとしてしか感じられなかったことが、年齢を重ねるごとにそれ以外のものに変わっていっている感覚というのはあります。なので、手にすることが怖くなくなるという感覚は、年々増えているという側面はありますね。
――確かにそれは、経験を経て得られる感覚でしょうね。
渋谷龍太 そうですね。ある程度いろいろな方と関わらせていただいて、さまざまな方の人生を見たり、どこかで交わったりという回数が圧倒的に増えているので。そこに関してはやっぱり若い頃では思えなかったことが、今の歳になってかなり増えてきているとは思います。
■新しい景色を見ることができたのは、自分たちにとって大きな財産になった
――『儚くない』はストリングスとピアノが入っていて壮大なアレンジになっていますが、今回の楽曲制作において、レコーディングで意識されたことを教えていただけますか?
藤原“35才”広明 今回の楽曲は、初めてプロデューサーの方、河野圭さんに入っていただきました。ただし、制作のやり方はいつもとほぼ変わらないし、特別、何か他と違う、ということはないんです。今まで僕らがやってきたように、まず4人でアレンジしたものをお渡してから、アイデアだったり、さらに良くなる方法をご相談しました。
ピアノから始まり弦が入るという想定はそもそもあり、最初から壮大な曲に仕上げようという思いはありました。その上での土台、ドラムという立場としては、今までの“SUPER BEAVERのドラマー、藤原という男がここでたたくぜ”というスタンスよりは、“届いたらいいな”という感覚と言いますか。まだ会えてない人にも、もちろん今、僕らのことを知ってくださる方にも届くような曲にしたい。そのための土台というのは、どういうものかな?ということは、すごく考えて作ったと思います。
個人的感情よりは、整っていて、いい音できちんと歌が前面にある。そういう曲になるようにサウンド作りだったり、プレイの仕方だったりを工夫しました。
――今回プロデューサーの方を入れようと思われたのは、どういうきっかけだったのでしょうか?
上杉研太 スタッフチーム全体から勧められたこともあったのですが、基本的にずっと自分たちでやってきたので、単純にこの楽曲を、さらに自分たちの引き出しだけではないものをもってチャレンジしてみたい、という思いから話が進行していきました。
結果的には、一緒にやらせていただいて、本当によかったと感じています。もともと、ピアノとストリングスをバンドで、という形はこれまでにやったことはあったのですが、今回は作っていく段階からアレンジであったり、フレーズやコード感といったものを、一緒にスタジオに入ってセッションするような形で作っていって。「たとえば、こういうのはどうかな?」みたいなやり取りをもって制作していくっていうのは、自分たちにとって、とても身になりました。
何より楽しくて、それがまた新たな経験にもなりましたし。音としてはずっとオーソドックスな、自分たちのど真ん中にあるような音が鳴っているんですけれど、どこか新しさを感じるところがあって。そうやってとても丁寧に1つ1つ、音楽的に自分たちのやりたいことやアプローチに対して河野さんが整理してくださって、アドバイスをいただいた、という感じです。
最初はチャレンジしてみようか、というところもバンドとしては大きかったと思うんですけど、結果的にとてもいい楽曲になったと思います。
渋谷龍太 この年齢まで、この活動歴まで自分たちだけでやってきたので、この先ずっとこのスタンスで、ということではないんです。でも外からご意見をいただいたり、力を貸していただくというのは、新たな挑戦というか。今だからこそ、新たな空気感を取り入れやすくなっていて。自分たちの基盤ができたからこそ、こういったチャレンジにつながっているのかな、と思います。
――たとえば5年前だったら、プロデューサーを入れるということは、考えられなかったでしょうか?
渋谷龍太 たぶんやっていないんじゃないかと思います。それこそ今回は映画の主題歌に選んでいただいたということも、もちろんありますし、そこで多くの方が聴いてくださる時に、“どういう耳ざわりのものがいいんだろう?”とか、そういうこともすごく真剣に考えたので。そもそも「4人でやるよりも、もしかしたらもっと届く方法があるんじゃないの?」という提案だったんですよね。
だったらチャレンジするのもいいし、ダメだったらダメだったって、どうにかなるわけじゃないですか。チャレンジをさせてもらえるというのは、今この活動歴になっていろいろできる上では、それぞれの刺激にもなったと思うし。新しい景色を見るということができたのは、自分たちにとってすごい財産だと思います。
【SUPER BEAVER Profile】
2005年に高校の先輩・後輩である渋谷龍太(Vo)&上杉研太(Ba)、柳沢亮太(Gt)に、柳沢の幼なじみの藤原“35才”広明(Dr)が加わり結成された東京出身4人組ロックバンド。2009年シングル『深呼吸』でメジャーデビュー。2011年に所属レーベル・事務所を離れて、インディーズへと活動の場を移し、年間100本以上のライブを実施。その後、日本武道館、国立代々木競技場第一体育館のワンマン公演を開催し、即日ソールドアウト。2020年に結成15周年を迎え、メジャー再契約を果たす。その後、ドラマやCM、そして映画『東京リベンジャーズ』主題歌を3作連続でつとめる。7月には自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催予定。今最も注目を集めるロックバンド。