映画『銀河鉄道の父』出演の豊田裕大に単独取材 主演・菅田将暉の立ち居振る舞いをずっと見ていた
2023.5.3 12:005月5日公開の映画『銀河鉄道の父』に出演する、モデルで俳優の豊田裕大。菅田将暉演じる宮沢賢治の弟・清六役を演じた豊田に、entax取材班は単独取材を実施した。以前から憧れていた役所広司や菅田将暉との共演を経験して、現場で感じたこととは――?
■役者として役をもらった初めての作品が『銀河鉄道の父』
――『銀河鉄道の父』では、菅田将暉さん演じる宮沢賢治の弟・宮沢清六役で出演されました。役が決まった時はどんなお気持ちでしたか?
豊田 役者として、まだ何もやっていない時期に監督とお会いし、決まったんです。役が決まってから撮影まで少し間が空いたので、撮影に入る頃にはすでに何作品か出演させていただいていましたが、お芝居の仕事として役をもらったのは、この『銀河鉄道の父』が初めて。なのですごく大事な作品として印象に残っています。
――実在の人物を演じるにあたってはどんな準備をされましたか?
豊田 はい。年表などの資料をいただいたので、それを読み込みました。また、『兄のトランク』という清六さんが書かれた本がありまして、それを読んで準備をしました。
――豊田さんから見た清六は、どんな人物でしたか?
豊田 兄や家族のことが大好きで、それでいて兄とは対照的な性格の方だと思うんですね。賢治が自由奔放だからこそ、清六はまじめに堅実に育っていったという部分があると思います。そして清六はわりと、一般の目線に近い人間なのかなと感じました。
■まじめと評される部分が清六役と自分の似ているところ
――ご自身も、お兄さんとお姉さんがいる弟という立場として、共感できる部分はありましたか?
豊田 賢治は、長男だけど自由気ままでちょっと末っ子っぽいなと僕は思っていて。ちょっと普通の兄弟とは逆転していて、弟の方がお兄さんっぽいですよね。だから、兄弟関係で共通する部分は少ないんですけれども、兄に代わって家業を継ぐような堅実な清六の人柄の部分では、僕自身よくまじめだと言われたりするので、そこは似ているような感じはしますね。
――まじめというのは友達から言われるのですか?
豊田 そうですね。兄や姉から見たらまじめではないと思います(笑)。何かに集中すると、そのことにまっすぐになってしまうので、それでまじめに見えるんじゃないかなと思います。
■撮影現場は落ち着いていて居心地が良かった
――映画は明治から大正、昭和初期にかけての時代を描いていました。着物での演技や、当時の家を再現したセットなどはいかがでしたか?
豊田 衣装は時代に合った着物や下駄を身に着けていて、セットの小物も当時のものが置かれていました。例えば金魚鉢も鉢全体がガラスではなく、木の板でガラスを挟んだようなものだったり、タンスも年季が入っていたり……そういう部分では当時の雰囲気を感じることができました。
――撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
豊田 キャストの皆さんはテンションの上下があまりないというか、(撮影終了に向かって)ずっと一直線に真っすぐに向かい続けているような感じがしました。シーン毎に集中しながら、フラットで落ち着いた現場でした。ただ、ずっと静かにしているわけではなくて色々と話をする時間もありましたし、居心地の良い現場でした。
■菅田将暉の立ち居振る舞いや芝居をずっと見ていた
――賢治役の菅田将暉さんは事務所の先輩でもあります。演技について何かアドバイスがあったのでしょうか?
豊田 そうですね。アドバイスはいただいたのですが、具体的な言葉は……自分の中で大切にしたいので取材ではお話ししていなくて。ただ、菅田さんが芝居に取り組む姿勢や、かもし出す雰囲気をダイレクトに生で受けられる現場というのはなかなかないので、貴重な機会でした。また、役所広司さんという大先輩がいらっしゃる中での菅田さんが見られるのも貴重でした。なので、現場での立ち居振る舞いも、芝居する姿も、ずっと見ていました。
■お芝居の神様・役所広司は気取らずフレッシュ!
――父・政次郎役の役所広司さんとは、共演されてみていかがでしたか?
豊田 なんて言えばいいのか……すごくフレッシュな方でした。自分からしたら雲の上の存在というか、お芝居の神様のような方。だけど、役所さんご自身はまったく気取らず、僕と同じ目線でフラットに芝居をしたり、会話を交わしてくださいました。親子という役の関係性もあったとは思うのですが、一緒にいてすごく心が落ち着く方だなと思いました。
――祖父・喜助役の田中泯さんの存在感もすごかったですね。
豊田 本当に素敵な方でした。映画の完成披露会見の挨拶で、キャスト全員に“おバカエピソード”を聞かれる場面があり、そこで「ずっとバカでした。これからもずっとバカが続くと思います」というようなことをおっしゃっていて。いやー、そんな言葉、なかなか出ないですよね。
――成島出監督の演出はいかがでしたか?
豊田 僕自身に対しては積極的にご指導くださって、「豊田、今のじゃ伝わらないよ」「もっと強く賢治と政次郎を止めて」とか、「本当に思っているように聞こえないから、今ここで思ってることを叫べ」と言われたのが印象に残っています。清六がまだ幼い頃に宮沢家の家族で食卓を囲むシーンがあって、そのシーンには僕は出ていなかったんですけれども、出演する皆さんと監督が現場に入る前にじっくり練習しているのも見ていました。なので、どんなシーンもおろそかにしないで丁寧につくり上げる方でした。愛にあふれた監督だなと思います。
■宮沢賢治を身近に感じ、家族愛に共感してほしい
――これから映画を観る方へ、見どころやメッセージをお願いします。
豊田 宮沢賢治という人物は、僕達(20歳前後の)世代には、そこまでなじみがないという印象を持っていたんです。でもこの作品で賢治を知ることもできるし、家族を政次郎さんという父親目線で見ることができる。どの時代のどんな人物でも家族はいて、家族愛に共感しながら宮沢賢治を身近に感じることができる作品です。ぜひ劇場で、賢治という人物や、家族愛を感じていただけたらと思います。
【豊田 裕大(とよだ ゆうだい)Profile】 1999年4月10日生まれ、神奈川県出身。学生時代はバスケットボールに打ち込み、プロ選手を目指していた。20歳の時に雑誌『MEN’S NON-NO』専属モデルオーディションに合格。2021年、ドラマ『じゃないほうの彼女』(テレビ東京)で俳優デビュー。現在、ドラマ『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ)に出演中。映画は5月5日公開『銀河鉄道の父』、5月12日公開『劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ』と待機作が続く。
【作品情報】
『銀河鉄道の父』
5月5日全国公開
主演:役所広司 / 菅田将暉 森七菜 豊田裕大 / 坂井真紀 / 田中泯
監督:成島出
<STORY>宮沢賢治の父・宮沢政次郎。父の代から富裕な質屋であり、長男である賢治は、本来なら家を継ぐ立場だが、賢治は適当な理由をつけてはそれを拒む。学校卒業後は、農業や人造宝石、宗教と我が道を行く賢治。政次郎は厳格な父親であろうと努めるも、賢治のためなら、とつい甘やかしてしまう。やがて、妹・トシの病気を機に、賢治は筆を執るも―。