新時代アイドル『NFT IDOLE HOUSE』プロジェクトの知られざる舞台裏
2023.4.15 11:00応援するアイドルの、プロモーション活動についてアイデアを言いたい。ライブのセットリストに自分の意見を反映したい。そんな思いを実現できるのが、日本テレビとプラチナムピクセルが立ち上げた“NFT IDOL HOUSE”というプロジェクトである。ガールズバンドSILENT SIRENのギター&ボーカルのすぅをプロデューサーに迎え、アイドルグループを結成。メンバーをイラスト化したNFTが販売され、そこには購入者が運営に参加できる特典がつくという。このプロジェクトの全貌について、企画者である日本テレビのMOTOKI氏に話を聞いた。
■推し活、古参…アイドルとNFTの文化にはいくつもの共通点がある
――今回のプロジェクト立ち上げた背景を教えていただけますか?
これまで日本テレビではオーディション番組『Nizi Project』などさまざまなアイドル発掘プロジェクトを行い、それぞれの時代に世の中を熱狂させるスターを輩出してきました。そこで日本テレビとして、令和の今であるからこそのアイドルを生み出す方法があるのではと思い、今回新たに立ち上がったのが『NFT IDOLE HOUSE』です。昨今、特に国内のイラストNFTが盛り上がっているので、ここを基盤としてアイドルと掛け合わせたら、今までにない活動ができるのではないか、と考えました。
――アイドルとNFTの世界は、どんなところに親和性があったのでしょうか?
そもそもNFTの文化は、応援文化の色が強いんです。特に大手企業より、圧倒的に個人クリエイターの参加者が多い。個人のクリエイターがイラストを描いて、そのクリエイターさんを応援したい、という思いで購入する。そのクリエイターが有名になったら、「自分はあのクリエイターさんが卵の頃からこのイラスト持っているんだ」と自慢できる。これがアイドルで言うところの古参といった存在に近いなのかなと思います。推し活、古参という、今までのアイドルの文化とかなり近い点がありますね。そのため、今回はメンバーをイラスト化したNFTを販売し、それに購入者が運営に参加できる特典がついてきます。
――このプロジェクトでは、会員権を持っている人が運営に関われるそうですね。
例えば“プロモーションプランの検討に参加できる”といったことです。よく海外のアイドルだと、ファンが自主的に広告を出したりしていますが、ファンが応援、推し活をするプランを考えて、みんなが出した案から投票で決めたものを実際にやるとか。ジャケットはAパターン、Bパターンがあるけれど、どちらがいいか、ファンで決めたり、衣装や楽曲、ライブの演出面の一部をファンの皆さんが決めたものにするとか。今までだったら運営が決めたものをファンが受け取るという一方通行だったけれど、NFT IDOLE HOUSEは “応援文化でファンの人も運営と同じ気持ちになってアイドルを育てていこう”という新しいコンセプトなんです。そのために既存のアイドルのNFTではなく、1からオーディションでアイドルグループを作ることになりました。
■NFT IDOLE HOUSEのプロデューサーはすぅさん以外に考えられない
――企画側としては、当初どんなアイドルを作りたいと考えていらしたのでしょうか?
NFT IDOLE HOUSEはプロデューサーとしてガールズバンドSILENT SIRENのすぅさんにお願いしています。もともと彼女はアイドルをプロデュースしたい、と思っていたそうで、このお話をしたところ、「ぜひ一緒にやりましょう」という話になりました。正直、すぅさんと一緒にやれたのは、本当良かったです。こちら側はアイドルを作るという発想はありましたが、どんなアイドルを作るかまでの考えには至っていなかったんです。
今回、「孵化(ふか)」がテーマになっているんですけれど、どんな人が孵化するかとか、何を伝えたいアイドルなのかとか、番組作りでもよく行うコンセプト決めといったことは、対面で3時間ぐらい時間を取って話し合いました。模造紙にすぅさんが考えていること、こちら側の考えていること、NFTの文化といったことをペタペタと貼っていって、共通項が見えたところをまとめていきました。
アイドルの売り出し方、歌やダンスといったことは、すぅさんに頼りつつ、NFTアイドルということで、NFT周りについては、私が見ているという分担になっています。今まで誰もやったことがないような状況なので、いろいろなアイデアを出しつつ、リアルなアイドルとの掛け合わせのプランをどう作っていくのか。そういった面で、私たちはすぅさんを全面的にバックアップしていきます。
――プロデューサーであるすぅさんに期待されていることを教えていただけますか?
彼女自身がSILENT SIRENで成功しているというところが背景にあって、「すぅさんのプロジェクトだから」ということで応募してくれた人もたくさんいます。そして応募者の人たちに対する向き合い方を見て、彼女が本気なんだなということがすごく伝わってくるんですよ。時に厳しく、時に優しく、1人ひとりにアドバイスをして。あの様子を見ていると、他の人はできないな、という思いがあります。
「孵化」というテーマに対しても、1年以上前から考えていたそうで、すごく思いが入っているんです。実際にすぅさんが作詞作曲している曲をテーマソングで使うんですけど、本当にすぅさんが考えたからこその歌詞とメロディになっています。だからこそみんな“私がアイドルになるというのは、殻を破る行為なんだ”と、「孵化」というテーマに対してものすごく共感している。すぅさんありき、この曲ありき、このテーマありきだからこそ、応募者たちが“アイドルになりたい、ここでデビューしたい”という思いが強まっているんだな、と感じました。
――すぅさんだからこそのプロジェクトになったんですね。
本当にそうです。ずっとすぅさんは「どうしよう。もう全員合格にしたい」とか言いながら、真剣に向き合った上での選定だったので。
――イラストは、それぞれ装飾アイテムや柄・表情の異なるジェネラティブ(コンピュータによって自動生成される)NFTとして販売されるそうですね。この絵柄についてはイラストレーターである、あおいあめさんが担当されていますが、彼女にお願いしたのはなぜでしょうか?
今NFTのジェネラティブという大量発行の形式で言うと、線の太いポップなイラストが多いんです。その中で新規性を出したいということと、リアルなアイドルと絡めるので、リアル寄りの絵を描く人にお願いしたかった。それでNFTかつ、このプロジェクトに関わっていただくには、シンプルにイラストレーターとして活動されている方より、NFTを分かっている人の方がいいな、と思っていて。あおいさんはすでにNFTイラストですごく実績のある方だったので、今回お願いすることにしました。
またあおいさんはすぅさんのファンで、彼女のプロジェクトだったから、ということも、おそらく引き受けてくださった理由の1つだと思います。
■時代を先取りしたプロジェクトだから今後の活動に期待していただきたい
――先日、メンバーが決定されましたが、どんなグループになりそうですか?
アイドルとして売れるためには、ただ歌とダンスだけではなくて、人柄だったり、演技やバラエティ力など、いろいろなものが必要だと思います。それに対応できる人が集まったという印象を受けました。もちろん、ダンスがすごくうまい人もいれば、“ボーカルはこの人だよね”といった人もいて。似たような人を集めたというより、みんな個性も違って。顔や表情もそれぞれなので、似顔絵のイラストNFTとしても素敵な仕上がりになると思います。
――今後の動きが見逃せないプロジェクトですね。
コンセプトは「コミュニティで育てるアイドル」です。NFTコミュニティの中の、デジタル上で終わっていたコミュニケーションが、現実のアイドルを動かしていくというオフラインの体験にまで波及するのは、なかなかないと思います。そして運営にかなり近い立場でいろいろな参加ができるのは、NFTという仕組みを使っているからこそ実現しているものであって。かつ、すぅさんがこのアイドルを引っ張っていくという期待感もあります。新しい時代を先取りしたプロジェクトで、これからどんどんいろいろな施策をファンの皆さんと一緒に決めていきます。“こんなことができたらうれしいよね”といった意見をどんどん吸い上げていく予定ですので、期待していただきたいです。
【MOTOKI氏 Profile】
2016年に日本テレビ放送網に入社。バラエティ番組のAD・ディレクターを経て、2019年よりICT部門でYouTube戦略を担当。その後2021年からNFT事業担当。2022年3月には史上初の地上波生放送NFTオークション特番を企画・放送。プライベートでもNFTコミュニティを運営しながら、日本テレビ×プラチナムピクセルによる「NFT IDOL HOUSE」プロジェクトファウンダーを務める。