“心で踊る” 世界的人気舞台で仕掛けた『夢のオーディションプロジェクト』

2023.3.8 13:30

小説からはじまり、映画、舞台演劇、漫画など世界中で親しまれてきたスペインを代表する文学作品、セルバンテスの『ドン・キホーテ』。

そのセルバンテス版を翻案して1869年にモスクワ・ボリショイ劇場で初演されたのが、スペイン・バルセロナを舞台に旅宿屋の娘・キトリと床屋のバジルを中心に繰り広げられるラブコメ作品・バレエ『ドン・キホーテ』。個性的なキャラクターが多く登場し、どの場面を切り取っても楽しい作品のため、発表会やコンクールなどでも選ばれることも多く、その人気ぶりは三大バレエ(眠れる森の美女、白鳥の湖、くるみ割り人形)に匹敵する。

この『ドン・キホーテ』が日本で最初に上演されたのは、今から58年前の1965年、場所は東京・上野にある東京文化会館。当時、上演するにあたっては、日本バレエ界の草分けであり、後に日本バレエ協会の会長を務め、紫綬褒章(しじゅほうしょう)や勲四等宝冠章(ほうかんしょう)を受章したバレエダンサー・谷桃子の活躍を抜きには語れない。谷は、ロシアのボリショイ・バレエの伝統を受け継ぎながらも、日本との違いを踏まえ、振り付けを行い、そして自ら主演を務めあげた。

キトリを演じる谷桃子(初演:1965年) 撮影:榎本大輔
キトリを演じる谷桃子 撮影:榎本大輔
キトリを演じる谷桃子 撮影:榎本大輔

谷は2015年に94歳で亡くなったが、その彼女が創設したバレエ団『谷桃子バレエ団』が今年1月、新春公演として『ドン・キホーテ』を国内初お披露目の地・東京文化会館で上演した。谷の薫陶(くんとう)を受け、今の谷桃子バレエ団の芸術監督を務める髙部尚子が「私の中でピンときた」と今回主役キトリをオファーしたのが、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のプリンシパル(最高位のダンサー)平田桃子。

去年、バーミンガム・ロイヤル・バレエ団で上演された『ドン・キホーテ』でも主役のキトリを務め、今回のオファーにつながった。今回の公演では少ない練習期間の中、恋仲の相手・バジルを演じた牧村直紀との相性もぴったりで、“心で踊る”をモットーにする谷桃子バレエ団らしい『ドン・キホーテ』となった。

キトリを演じる平田桃子とバジル役・牧村直紀 撮影:羽田哲也

そんな谷桃子バレエ団がこの公演で仕掛けたのが、子役のオーディション。これまでバレエ団では、子役はそれぞれの団が運営するバレエ教室や系列の教室などから出演していたが、髙部は門戸を広げ、所属に関係なくオーディションを行い、140人を超える応募から44人が夢をつかんだ。

プロのダンサーと同じ舞台に立つ子役ダンサーたち 撮影:羽田哲也
舞台に立つ子役ダンサーたち 撮影:羽田哲也

44人の子役ダンサーたちはプロのダンサーと同じ舞台に立ち、その踊りを間近で感じ、オーケストラの奏でる音楽と共に夢のような時間を過ごした。

髙部芸術監督は「谷桃子が作り上げた“心で踊る”を体現するためには、心を磨く必要がある。子供だけの発表会ではなく、プロの舞台に立つことで心は磨かれる」とその狙いを語る。

谷桃子バレエ団 髙部尚子芸術監督
撮影:羽田哲也

谷桃子バレエ団が仕掛けるこの夢のオーディションプロジェクト、次回は今年の夏、日生劇場の開場60周年記念公演『くるみ割り人形』で実施する。小学1年生~中学3年生のバレエ歴2年以上の男女が対象で、書類審査を通過すると、3月21日(火・祝)に行われるオーディションに臨むことになる。8月25日(金)~27日(日)に夢の舞台に立てるのは果たして…。

撮影:榎本大輔、羽田哲也

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