近藤真彦「この日を待っていた!」声出し解禁&“さよなら中野サンプラザ”の特別なステージをリポート①
2023.3.8 12:00歌手・近藤真彦のライブツアー『Masahiko kondo Live Tour「M5K8」Final-Episode』の東京公演が3月3日中野サンプラザホール(東京都・中野区)で開催された。このツアーは、2022年9月から11月にかけて行われた全国ツアー「Masahiko kondo 2022 Live Tour「M5K8」Fifty-Eight」の第2弾であり、第1弾と同様に「全部ヒット曲ばかり」というセットリストが組まれ、会場に集まった約2300人の観客を大いに楽しませた。entax取材班は、このライブの模様を独自にリポート。2回に分けてお届けする。
■ファンから直接届く声援に「この日を待っていました!」
会場となった中野サンプラザは1973年の開業以来、多くのアイドルがコンサートを開き、アイドルの聖地として知られてきたが、老朽化のため7月2日で惜しまれつつ閉館予定となっている。近藤にとっても、単独としてはこの日が同所での最後のステージ。15周年や、昨年独立してリスタートを切ったライブもここで行われた。さらに1988年には市川猿之助(現在の市川猿翁)演出のミュージカル『イダマンテ』で主演を務めた際もこの舞台に立っていて、非常に思い出がつまった場所である。
18時。ステージ後方に2つ設置されたスクリーンに、近藤の中野サンプラザ公演の軌跡、歴代シングルのジャケット写真が映し出される。ライブは1988年にリリースされた25作目のシングル『Made in Japan』でスタート。マスクは着用しながらも声出しOKだったため、ファンの歓声と揺れるペンライトで最初から会場は熱気にあふれる。直接届く声援に対して近藤は「やばいね、声出したね。やったね! この日を待ってました!」と、喜びの気持ちを伝えた。
■豪華なバンドを一つにまとめ上げていく、近藤真彦の存在感と表現力
「今日はみんなを10代、20代の頃に戻します!」と宣言。「それじゃあまず、つべこべ言わずに、この曲を聴いてください」と言って始まったのは、ソロデビュー曲の『スニーカーぶる~す』。続けて2ndシングル『ヨコハマ・チーク』、3rdシングル『ブルージーンズ メモリー』と初期の曲を次々に披露した。バンドはギター、ベース、ドラム、キーボード、パーカッション、そしてストリングス、ブラス、コーラス隊も加わるという豪華な編成。なるべく原曲に忠実なアレンジで、という近藤のこだわりが貫かれながらも、各楽器のソロ演奏など、バンドメンバーの見せ場もたっぷり設けられていた。そんな彼らをしっかり背負って一つにまとめ、近藤真彦は歌の世界を軽やかに、力強く表現していく。
11曲目の『アンダルシアに憧れて』(1989年リリース、30作目シングル)では、冒頭の緊張感のみなぎるバイオリン、ギターと対峙(たいじ)しながら歌い、次第に激しくなるリズムに合わせて情熱的なボーカルを響かせる。一方で次の『夕焼けの歌』(1989年リリース、27作目シングル)では、故郷に思いをはせながらも強がる男の切なさを、心を込めて観客に届けた。
そして、翌日に盟友、野村義男とのコンサートが控えていたため、彼の話題も。「本当にしゃべりが長いの。僕が短くしようとすると、よっちゃんは話が脱線しちゃう。食べ物の話とか。だんだん、ファンの人もさめてきちゃうの(笑)。最初の頃は、『よっちゃん面白い』と言っていても、だんだん『早くマッチの歌聴きたい』となっちゃう」という話に、2人をよく知っているオーディエンスは苦笑いをしながらも、「ああ~」と納得したようだった。
■規模が拡大する中野サンプラザに思わず質問「小ホールはないんですか?」
換気タイムを経てライブ後半に入る前に、近藤はMCで中野サンプラザホールへの思いを語る。
「中野サンプラザの思い出は本当にありすぎて。『イダマンテ』もそうなんですけれども、実は87年くらいからスタートして、スタッフと一緒に『どのくらいやっているんだろうね』と数えたら、ステージとしては50回以上やっているんですね。やっぱり忘れられないホールになりました」
さみしさをにじませながらも、「でもね、どういう形でも、俺はまた中野サンプラザに戻ってくるぜ」と、ファンに未来への約束をした。
また建て替え後は会場の規模がアリーナクラスになっていると知った近藤は、「『小ホールはないんですか?』と(会場の人に)聞いて。そっちの方だと3回くらいコンサートできるんじゃないですかって(笑)」とジョークを飛ばす。「そのくらいの方が近くていいんじゃいかなと思って。ぜひまた新しくなった、リニューアルの中野サンプラザ、小ホールでお会いしましょう」と言うと客席から大爆笑が起こった。
ファンのあまりにも素直なリアクションに、近藤は思わず苦笑。「笑いすぎじゃないですか? シャレになっていないってことでしょう(笑)? いいも~ん」とかわいくすねる様子に、客席からは思わず悲鳴のような歓声が上がった。
■最後まで自分のステージを彩ってくれた会場へ敬意を表す
アンコール1曲目は『ギンギラギンにさりげなく』。楽曲の途中でバンドメンバーの紹介も行い、会場のテンションはMAXに。近藤は客席に向かって「サンキュー、ありがとう! 愛してます!!」と叫ぶ。そのままラスト曲『また明日』へ。彼の現在の心情をくみ取って書かれたというこの曲は、さまざまな苦難を乗り越えてきたからこその重み、そしてそれを受け入れる懐の広さ、といったものを優しく温かいメロディにのせてファンに伝えた。
近藤がステージを後にしてから、彼にとって最後の中野サンプラザの映像が流れた。大勢のファンの声援に応えながらに会場に入る様子や、ホール入り口にある赤い階段で、バンドメンバーやスタッフたちと記念写真を撮影するシーンなどが収められていて、ファンはじっと見つめていた。そして「ありがとう 中野サンプラザホール 近藤真彦」と記した直筆の文字が降りた幕に投影されて、最後まで自分を見守ってくれた会場に対して、感謝と敬意を表した。
【近藤真彦Profile】
1964年生まれ。神奈川県出身。1979年TBSのテレビドラマ『3年B組金八先生』の生徒・星野清役でデビュー。1980年『スニーカーぶる~す』でソロ歌手としてデビュー。1987年には『愚か者』で第29回日本レコード大賞を受賞した。レーサーとしても活躍し、2000年からレーシングチームの監督兼代表取締役社長を務める。