ピーター・パン卒業の吉柳咲良に単独インタビュー 目指すのはやっぱり石原さとみ。でも異色でもありたい

2023.3.1 12:00

【エンタメの未来を彩る光をキャッチ! シリーズ「未来予知」】

2016年、ホリプロタレントスカウトキャラバンで深田恭子、石原さとみに続く3人目のPUREGIRLに輝いた吉柳咲良。ミュージカル『ピーター・パン』の主演を6年間務めると当時に『初恋ロスタイム』で映画デビュー、映画『天気の子』で声優デビューを遂げる。俳優“吉柳咲良”の誕生と、映画『かがみの孤城』、ドラマ『星降る夜に』と話題作への出演が続く今を通して、個性を磨き始めた吉柳の心の内を聞いた。

■何も知らずに決まった『ピーター・パン』。「怖すぎでした」

――ホリプロスカウトキャラバンでグランプリを獲得したのは12歳。歴代最年少と話題になりましたね。

自分で言うのも変なんですが、ランドセルしょってたぞって(笑)。驚きというか、がんばったなって思います(笑)。

オーディションを受けるまで演技の勉強をしたことがなかったんですが、ドラマが大好きでよく見ていたので、合宿審査で監督から指示を受けたりするのを「ドラマってこうやってつくるんだ」って楽しく思っていました。

その時の監督が『初恋ロスタイム』の河合勇人監督。ドラマ『未来への10カウント』でもご一緒したんですが、「こうしてみると次どうなるかな」とか優しく教えてくださったので、演技初めてという緊張感がありながらもやりやすかったです。

――小さい頃から俳優になりたかったということですが。

たぶん最初は歌手になりたかったんだと思うんですよ。誰かの前で歌って踊るとか、何かを披露するというのが好きでした。それが、ドラマ好きの家族が録りためたビデオを見ているうちに、石原さとみさんのお芝居がすごく素敵で、この人みたいになりたいという漠然とした夢ができて。女優さんになりたいって気持ちが芽生えたと思います。

ミュージカル『ピーター・パン』 撮影:宮川舞子

――最初のお仕事がミュージカル『ピーター・パン』で、願ったり叶ったりでしたね。

余裕なさ過ぎでした(笑)。歌や踊りに加えて「飛ぶの?」「アクションやるの?!」「こんな長いセリフを区切らず全部やるの!!!」って、怖かったのを覚えています。

グランプリを取った時はピーター・パンをやるって知らなかったんです。後でマネージャーさんが実家に来てくれた時に「ピーター・パンやります」って言われて、「ピーター・パンって何?」って(笑)。それまでミュージカルに触れたことがなかったんですよ。

それで初めて観た舞台が『ミス・サイゴン』。歌や舞台のエネルギーを知って、「これを自分がやるのか。 楽しそうだな」ってまだぽわぽわしてました。

そこからピーター・パンの歴代の先輩方のDVDを見て、『ピーター・パン』がホリプロの舞台の中でどれだけ長く続いているかをちゃんと知って、稽古に入って、やっと責任感みたいなものを感じ始めて。

でもその後は、まわりはベテランの大先輩ばかりだから迷惑をかけられないって気持ちがどんどん大きくなって、立ち稽古になっても台本を離せなくなって。マネージャーさんに「大丈夫。覚えているから」って言われて恐る恐る台本を外してって感じだったんです。

気づいたらこうなっちゃったという感じで、気持ちが追いついていませんでしたね。

©entax

■監督に助けられた声優の仕事。「声優デビューが『天気の子』で良かった」

――そんな『ピーター・パン』を6年間務めつつ、映画や声優デビューをされています。演技の違いで困ったことはありましたか。

『初恋ロスタイム』の時は、『ピーター・パン』の本番と並行して撮影していたので、声が舞台のボリュームになっていたり、言い回しが独特になっていたりして指摘されたことがありました。

それが、コロナ禍で『ピーター・パン』が中止になった時に『青のSP―学校内警察・嶋田隆平―』(関西テレビ・フジテレビ)と『ここは今から倫理です。』(NHK総合)とドラマを2本、藤原竜也さんや山田裕貴さんとご一緒させていただいて演技の違いを身に付けたられたかなと思います。

特にスポリでは同年代が多かったので、他の役者のセリフを「こんなおもしろい演じ方もあるのか」って見たり、こういうのを身に付けたいと思ったらやり方を盗んでやってみたりしながら、舞台とこう違うんだ、映画ともまた違うな、みたいなのを確認していった感じです。そういう捉え方もあるんだなって気づきも多かったです。

――声優への挑戦はどうでしたか?

声優デビューが『天気の子』で良かったなってすっごく思います。新海誠監督が細かく丁寧に教えてくださったので、今までで一番怖がらずにできた気がします。あとは、森七菜さんや醍醐虎汰朗さんがサポートしてくださったのも大きかったです。

私が演じたのは男の子の「凪」ですが、私の素が女の子女の子していないかったり、ピーター・パンをやっていたり、声も高い方じゃないので困ることはなかったです。声を新海監督に評価していただけたことも、変につくらずやれた理由ですね。

あとすごいのが、アフレコをする前に新海監督から、全員の声を監督自ら入れた絵コンテの映像みたいなのをもらったこと。それがあったからある程度の正解が見えていて、あとは付け足していく作業で進められました。新海監督はほんとにすごい方です。

映画『かがみの孤城』アキ役 ©2022「かがみの孤城」製作委員会

――entaxのインタビューで原恵一監督が、『かがみの孤城』の吉柳さんは「抜群に上手かった」と評されていました。

『かがみの孤城』で演じさせていただいた「アキ」ちゃんは、原作を読んだ時に印象に残っていた子でした。まさか自分ができるとは思っていなかったんですけど、原監督が「アキちゃんは吉柳さんだ」ってずっと言っていましたってスタッフさんから聞いて、責任もってがんばります!って言えた役です。

原監督とはアフレコする前に少しお話させていただいたんです。アキちゃんの特に後半のシーンは、冷静にコントロールできなくなるくらいの辛さを抱えていて、いい意味で役の重みを受け止めて演じられたと思います。監督とお話できたのがすごく良かったです。

■「こういう人だという固定概念を持たれたくないんです」

私、このお仕事を始めるまでは何も考えていなくて、自分のことができていればそれでいいってタイプだったんです。まだ子供だったというのもあるんですが。だけどこのお仕事は一人ではできないということに気づいた時に、周りを見ることのほうが大事かもしれないと思うように。その気づきがあってから、ものごとを俯瞰してみようって冷静に考えるようになってきたと思います。

考えるようになったのは、『ピーター・パン』をやり始めた頃、13歳の頃かな。大人と関わる機会が増えたからだと思います。中学校に通いながら、稽古場に行くとお兄さんお姉さんばかり。同級生といる時の自分と、大人とお仕事をする時の自分。1日の中でギャップがある日を何日も過ごしていて、その感覚の違いの中で気づいたのかなと思います。

©entax

――昨年ピーター・パンを卒業、今年は高校卒業ですね。これからの目標を教えてください。

具体的な目標ってあまり掲げていなくて、おっきな目標というか、漠然としているんですが、自分だけの色みたいなものは確実に出していきたい。オンリーワンを取りたいと思っています。

それって誰かに勝とういうのではなくて、突出しているというか、異色だったりするのがうれしいって感じです。こういう人だという固定概念みたいなものを持たれたくなくて、「こういう一面もあるけど、こっちもあるからね」みたいに、つかめるようでつかめない人になりたいです。

でもずっと言っているように、本当に石原さとみさんみたいな女優さんになりたいというのはあるんですよ。人間としての素晴らしさ、女優さんとしての素晴らしさを尊敬しています。

なんでしょうね。私がまず私が何なのか分かっていないんですよね。私も私を見つけていきたいと思っているので、今はどういう女優さんになりたいというより、どういう人になりたいかのほうが強いのだと思います。でもそんな自分探しみたいなのは、生きていきながら探せばいいかっても思いますけど(笑)。

【吉柳咲良 Profile】
栃木県出身。ホリプロ所属。第41回ホリプロタレントスカウトキャラバン「PURE GIRL 2016」グランプリ。2017年から2022年8月公演までミュージカル『ピーター・パン』で10代目ピーター・パンを務める。2019年から『初恋ロスタイム』(KADOKAWA)、『天気の子』(東宝)、『かがみの孤城』(松竹)など劇場公開映画に出演、2021年からは『青のSP―学校内警察・嶋田隆平―』(関西テレビ・フジテレビ)、『未来への10カウント』『星降る夜に』(共にテレビ朝日)など話題の連続ドラマへの出演が続く。

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