鈴木亮平・宮沢氷魚ら『エゴイスト』公開記念舞台挨拶 天国の原作者を想い涙ぐむ場面も
2023.2.12 18:00映画『エゴイスト』の公開記念舞台挨拶が、テアトル新宿で2月11日(土)に行われ、主演の鈴木亮平、共演の宮沢氷魚、阿川佐和子、ドリアン・ロロブリジーダ、監督の松永大司が登壇した。
エッセイスト・高山真による自伝的小説の映画化となる本作は、田舎町でゲイである自分の姿を押し殺しながら思春期を過ごした浩輔(鈴木亮平)と、シングルマザーである母を支えながら暮らすパーソナルトレーナーの龍太(宮沢氷魚)が、惹かれ合い、愛と運命に翻弄される様を描く物語。浩輔の父親を柄本明、龍太の母親を阿川佐和子が演じている。
映画上映後、観客から拍手がわき起こる中、ステージに登壇した鈴木が「映画はいかがだったでしょうか?」と問いかけると、会場からは再び大きな拍手が。
そして「ついにこの日を迎えたなという心境です。いろいろなことがありましたが、それについては今日、皆さんの前で話せたら」とコメントし、宮沢も「全国公開されたことをうれしく思います。すばらしいキャスト監督の皆さまと一緒にこのステージに立てること、うれしく思っております」と呼びかけた。
この作品についてエゴサーチをしているという宮沢は「『エゴイスト』と入れると、映画の感想がバーッと出てくるんですが、その中に(鈴木)亮平さんのツイートがあって。昨日、劇場に行ってきたと書いてあったんですが『亮平さん、誘ってよ』と思いました」と明かし、「スケジュール的に行けなかったんですが」と笑いながら付け加えた。
一方の鈴木も、ひとツイートも逃さず批判も称賛も全部見たという。「ほとんどの方が褒めてくれる内容でしたし、そうでない方もなるほどなと思わせるような内容でした。中でもうれしかったのは、この映画を観た時に、SMAPさんの『夜空ノムコウ』の「ぼくの心のやわらかい場所を~」という歌詞が頭に流れてきたという感想。それをはじめとした、いろいろな感想を拝読できてうれしかったです」と笑顔を見せた。
龍太の母・妙子を演じた阿川は「この役を演じて何かが変わったと自覚するのは難しいのですが、たぶん今回の経験は、この先にジワジワと自分の中で育っていくんじゃないかなと思います」と語り、「この映画をご覧になった方々が、(劇場の)外に出て、この美しい外の空気と美しい空を見て。これから新しい時間が始まるぞという思いでかっ歩して。おうちに帰ってくださるような。そんなことを考えながら青い空を見ました」とコメント。
さらにゲイ当事者のひとりとして出演したという、浩輔の友人役のドリアンは、同じゲイの方々から「今までの日本映画の中では、描き方にしても、キャラクターにしても、なかなか自分のことと思える映画ってなかったんですけど、この映画に関しては、あまりにも自然すぎて。映画であることを忘れてしまうくらい、本当に自分事だし、明日は自分の身に起こることかもしれないと。本当に今の僕たちの映画だよね」という感想があったと話し、「クィア映画としても、日本映画史上まれにみる傑作だと思います」と当事者の立場から称賛の声をあげた。
それを聞いた松永監督は「映画ってひとりでは作れなくて。原作の高山さんをはじめ、(書籍の)編集の方、プロデューサーなど、いろんなひとたちが関わっている。本当にいいチームでやらせてもらっているなと、しみじみと感じております」と語り、「ありがとう、みんな!」と登壇者たちに呼びかけた。
最後に鈴木が、「この映画には答えがないと思うんです。観ていただいた方がこれを愛と思うか、エゴと思うか、依存しあっているだけの関係だと思うのか。本当に人それぞれだと思います。もしかしたら、これからの人生のどの瞬間に観るのかということによっても、捉え方が全然違う映画なんじゃないかなと思います。分かりやすいものを提示するのではなく、いろんなものを提示しているこの映画を誇りに思っております」とコメント。
さらに「これまで何度か、この映画は作られないんじゃないかという瞬間がありました」と続け、「僕も原作に感動して、ぜひやらせていただきたいとまわりを説得して。演じさせていただくことになったのですが、届いた台本を見て、監督に『これじゃやれない』と電話をしたこともありました」と告白。
その時に監督から「僕を信じてくれ。僕が作るのは、この脚本から役者がリハーサルをして、演じているのを観て、どんどん生き生きとしたものにしていくんだと。僕の作品はこの台本だけでは伝わらないんだ」と説得されたことを明かし、「本当にあの時、監督を信じて良かったなと思います。こんな作品が出来上がるとは思いませんでした。ありがとうございます」と松永監督に謝辞を述べ、頭を下げた。そんなやり取りに、会場からは大きな拍手がわき起こった。
そして「この作品を生んだのは高山真さんという方で。その方がいなかったら、今日ここで皆さんにお会いすることはありませんでした。残念ながらこの映画の最終決定を聞くこともなくお亡くなりになってしまったのですが、ひとりの人間が遺したものが、いかにいろんな人に影響を与えるのか。人生って突然終わることもあるけど、ひとりの人間が世の中に与える影響ってすごいなと、今日あらためて思っています」と、瞳を涙でうるましながら言葉を絞り出すように語った。
「高山さんはあまり天国という言葉は信じていないと思うんですが、それでも今日は天国の高山さんに感謝したいと思います」と呼びかけ。高山さんを生前からよく知るドリアンも、その鈴木の言葉に思わず涙ぐんでいた。
さらに宮沢が、作品が公開されるまでの想いについて「僕たちがやったことが果たして正解なのか。ちゃんと届くのかという不安があって。時には押しつぶされそうになった瞬間もありました」と正直な思いを吐露。「だからこうやって皆さんの前でこうやってこの作品を公開できることがしあわせでいっぱいです。たくさんの方に届いているのもうれしいですし、この作品は10年後、20年後、30年後も生き続けて、より多くの人に届く作品だと信じています。『エゴイスト』という作品は走り始めたばかりなので、多くの方に届くことを願っています」とメッセージを送った。
映画『エゴイスト』は、2月10日(金)より劇場公開中
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