シンガーソングライターAnly 単独インタビュー 今思っていることを詰め込んだメッセージソング『CRAZY WORLD』とは

2022.12.15 12:30

英語詞や日本語詞、様々なジャンルの音を楽曲の随所に感じさせ、パワーのある圧倒的な歌唱力が魅力のシンガーソングライター・Anly。TikTokでは関連動画が12億回再生とバズり、人気アニメの主題歌も手がけるなど、いま注目の彼女が10月12日に、4thアルバム『QUARTER』をリリースした。ミクスチャーロックから壮大なバラードまで彼女の多様な音楽性を表現した1枚となっており、このアルバムに込めた思いをentax取材班が聞いた。

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■嫌いな人に向けて書いた曲は“自分の怒りを和らげる曲” 

——『Do Do Do』は相手に対して強い感情をぶつけている楽曲ですが、この曲ができたきっかけは何ですか?

『Do Do Do』に関しては、怒りの感情を音楽に変換できたなっていう楽曲で、歌うとすごくスッキリするし、その怒りのパワーをどうやって消化できるかという意味で、私は音楽がぶつけやすいので、それでできあがった曲です。あまり人を嫌いになったことがなかった時期に、初めて人を嫌いになったんです。すごい不思議だなと思いますね。嫌いな人のために曲を書いてるっていうね(笑)。(その嫌いな人は)友達だった人。今はもう友達じゃないんですけど、ずっと小さい頃から遊んだりしていて、ちょこちょこ「私のこと、もしかして気に入らないのかな」って思うことがあった。酔っ払ってたのかわからないですけど、私の顔を見ながら無言でタバコの煙を吹きかけてきたことがあって、その行動が理解できなかったんです。そこで、この人は嫌いになってもいい人だって認められて、すぐLINE消しました。覚えてなくてもいいし、この曲を聴いて何も感じなくてもいいけど、私はこの歌の中ではいつも怒ってる(笑)。でも、そういうのもあっていいんじゃないかなと思いますね。だから音楽があると思うし、音楽こそ無法地帯でいいと思うんですよね。“人を傷つける曲”じゃなくて、“自分の怒りを和らげる曲”だから、仲良くしたいなら全然寄ってきてもいいですよ、嫌いだけど! みたいな感じの曲です(笑)。

■SNSでは言えないけど、音楽だったら今思っていることを乗せられる

——『CRAZY WORLD』は今の世界とAnlyさんの意思表示が描かれていますが、この曲にはどんな思いが込められていますか?

よくループ・ペダルでライブをまわってたりするんですけど、そのライブの練習をしてる合間に自分が思いついたギターのリフとかリズムとかを適当に入れて遊んで「ラララホホホ」とか言ってる時間にネタができたのが『CRAZY WORLD』です。録音してたものにメロディーとかを考えつつデモを清書して歌詞を書いたんですけど、その頃はもうちょっと規模の小さいCRAZY WORLDだったんですね。私の結構近い範囲のクレイジーな人たちに向けて書いてた曲だったんです、もともと1番は。1番はそれだったんですけど、なかなかリリースするタイミングを逃し続けていた楽曲で、私はこの曲めっちゃカッコいいと思ってたから、すごい大事に温めてたけど、もう逆に今しかないって思ったタイミングがこの2022年だったんですね。このCRAZY WORLDを出すんだったらもう今しかないと思って、2番を今年に書いたんですね。だから1番は結構前に書いた歌詞で、2番は最新に思っていること。もともと違う作品をもとに考えてた楽曲だったんですけど、『寄生獣』っていうマンガが頭の中に浮かんできて、その世界観が入ってたりします。今自分たちが生きてる世界の中で思うことを、私はSNSで「強くいよう」みたいに発信する精神状態じゃないんです。社会とか世界に関して、情報量がまだ私は少ないと思ってて、まだ勉強中だから声高らかにSNSというメロディーが付いてない世界では言えないんですけど、音楽だったらすらすら今思ってることを乗せられるなって思って『CRAZY WORLD』の2番には全部詰め込んでるし、中盤で出てくる言葉を詰め込んでいる部分に関しては本当にリアルな感じで書いています。

この曲をどう捉えてほしいかって言うと、もちろん共感も欲しいし、歌ってる時にいちいち考え込ませられたりとかするから、それはすごくいい存在だなって思いますね。狂っていても結局自分が住んでる場所だし。じゃあどうする?みたいなことを歌うたびに、いちいち考えさせられるので良い薬だと思ってます(笑)。自分への戒めもありますね。“思い上がってる地球人”は私かもしれないし。沖縄の言葉で「うちあたい」って言うんですけど、グサッと来るような感覚、思い当たる節があるみたいな気持ちになってほしいし、私もいつでも(うちあたいに)なってたら、この曲が存在する意味があるなって思いますね。

■毎日の朝一杯の水のような“浄化ソング”

——『Saturday Kiss』はさわやかでピースフルなナンバーですが、アルバムのクライマックスに持ってきた理由は何でしょうか?

浄化ですね、私の中では。テーマがとても強い曲が多くて、それもすごい私らしいなって思うんですけど、正直に作ってそのまま乗せたような感じだった。でも、やっぱり心安らぐ時間も欲しいよねって思って。『Angel voice』っていう曲もあるんですけど、結局最終的にドラマチックになっていくので、瑞々しい楽曲も必要だよねって思った時に『Saturday Kiss』は『CRAZY WORLD』とはまた違う見方で世界を見てるっていうか、普通に生活してる中で、街のざわめきが海のさざ波に聞こえることもなくもないかもしれないとか、イマジネーションを働かせて生きてるところを曲にできたらいいなと思った。

曲ができたきっかけは、大阪のラジオ局のパーソナリティーさんが私のことをすごい応援してくれてて、カバー曲を毎月披露するコーナーを1年以上やらせてもらってた時があって、その卒業式にサプライズでその方に向けて書いた曲が『Saturday Kiss』だったんですね。土曜日の番組だったので。離れていても声で届けてたり、思いで何かを届けてる人、その方もそうだし、ほかの仕事に就いてる人でもそうだろうなと思ったので、毎日の朝一杯の水みたいな曲になったらいいなと思った“浄化ソング”です。

——現在開催中の全国アルバムツアーについて

今回のツアーは、いつもそうなんですけど、ループ・ペダルでツアーをまわっていて、その場でギターのフレーズを録音して、ギターのたたいた音でリズムを作ってコーラス入れて、楽曲を表現していくっていうスタイルなので100パーセント私が生み出した音で、その場でできていくっていうライブです。ある意味、あのアルバムよりもまたちょっと違う形の“濃ゆさ”で楽曲を聞いてもらえてるなっていうのはあって、どんどん公演ごとに変化していってるのがわかるんですね、自分自身で。もちろんセトリの流れもそうですけど、楽曲の中にこれを足そうとか、これは引いた方が曲が活きるだろうとか、常に楽曲と対話してるような気分にもなるし、お客さんが楽曲を育ててくれてるっていう感覚もすごいあって、公演ごとに来る人たちの性格も違うし、乗り方、揺れ方も全然違うから、それによって全然リズムも変わる。今日は早かった遅かったとか、後でスタッフと話すんですけど、そこも楽しみながらこのアルバムを改めて咀嚼(そしゃく)してるような気分ですね。

【Anly プロフィール】
1997年1月、沖縄・伊江島生まれ。2015年メジャーデビュー。ループ・ペダルを駆使したライブや、アコースティック・ギター弾き語りなど、イベントや会場にあわせてスタイルを変えるパフォーマンスが魅力。日本国内にとどまらず、香港や台湾、ドイツなど海外でもライブを行っている。

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