ジョン・レノン 栄光の裏の人物像に迫るドキュメンタリー公開 DVの過去や親友の死も

2022.12.4 10:00

ドキュメンタリー映画『ジョン・レノン〜音楽で世界を変えた男の真実〜』がジョン・レノンの命日である12月8日に、ザ・ビートルズのデビュー60周年を記念して日本で初公開となる。ジョン・レノンの生い立ちと、彼の人格、後に彼の音楽に影響を与えた出来事を、未公開の歴史的映像・資料や友人、関係者へのインタビューを交えながら深く掘り下げていく貴重な映像は必見だ。

本作では、父親代わりの伯父・ジョージ、母・ジュリア、親友のスチュアート・サトクリフの死など、ジョン・レノンを形作ったエピソードを年代順に紹介。1962年に結婚した最初の妻であるシンシア・パウエルをデートに誘った時の模様や、現在ではショッキングな印象を抱かせてしまうかもしれないDVのエピソードなど、ジョンの栄光の裏の、真の人物像に迫った内容になっている。

今回の日本公開を前に、ロジャー・アプルトン監督のオフィシャルインタビューが届いた。

ロジャー・アプルトン監督

Q:なぜこの映画を作ろうと思ったんですか?

A:5歳のころ(1963年)からビートルズのファンでね。ジョン・レノンのソロアルバムについてのドキュメンタリーを見た。そこでインタビューされていたアメリカ人のプロデューサーのある回答に、僕はとても腹が立ったんだ。「ジョン・レノンは、60年代の申し子だった」と言っていてね。ジョンは1960年代を作り上げる一端を担った人物で、1960年代に形作られた人間じゃない。どんな出来事が彼を形作ったのか語りたかったんだ。その人の幼年期と青年期を理解し、どのような世界で育ったかを理解すれば、その有名人がどういう人物なのかも理解しやすくなると思うからね。

英国ナショナル・フィルム・アワードでは最優秀ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた

Q:どのようにして本作を作りましたか?

A:映画には数人の歴史家も、全体に文脈を与えるために出演しているけど、それ以外の出演者は全員ジョン・レノンを直接知っていた人たちにしたよ。 ジョンの最初のバンド、ザ・クオリーメンに会うことは大事だった。例えば、演奏するジョンを写した最初の写真がある。彼がチェックのシャツを着て、ギターを持ち、マイクをつかむために体を傾けている、リヴァプールのストリート・パーティでの写真だ。その写真を撮った男性は存命だったから、ザ・クオリーメンのドラマー、コリン・ハントンと一緒に現場に行って、その日その場所にいた2人の重要な目撃者に、当時の出来事を語ってもらった。当時実際そこにいた人たちに語ってもらうことが、僕が一番大事にしたことなんだよ。

左から、ジョージ・ハリスン、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー

Q:本作で初めてインタビューに答えた方はいますか?

A:映画に出てくるスタン・ウィリアムズという男は、ジョンを6、7歳のころから知っていた。映画では違うエピソードを入れたけど、『ペニー・レイン』の歌詞についてのエピソードも話してくれた。歌詞の一部にトレイにのせたケシを売っている看護婦が出てくるんだけど、スタンによると、14、15歳のころ、ペニー・レインの環状交差点のバス停のようなところにジョンが2〜3人の友達とやってきた。彼らの共通の女友達がペニー・レインの角に立ってトレイにケシをのせて売っていたんだそうだ。『ペニー・レイン』のほとんどはポール・マッカートニーによって作詞されたけど、トレイにのせたケシを売る部分は、ジョンが書いたものだ。

ポール・マッカートニー(左)とジョン・レノン(右)

Q:ジョンと、前妻のシンシアのデートについてのエピソードも面白かったです。

A:ジョンとシンシアの交際の始まりについて直接語れる人がいて、とても幸運だった。ジョンとシンシアはとてもとても親しくて、お互いに愛し合っていたということも強く言っていた。でも、難しい関係でもあって、当時ジョンはまだ自分探しの途中だったのだろうと思う。劇中、ジョンのDVについてもでてくるよね。実際、この映画に出てくるハンター・デイビスというビートルズの歴史家も、彼の曲の一つ『ゲッティング・ベター』に「俺は恋人を殴る男だった」という歌詞がある、と話している。ジョンとシンシアの関係は複雑だったんだろう。シンシアが当時の彼の人格を安定させたんだと思う。

(下段左から)ジョン・レノン、最初の妻シンシア・レノン(上段左から)トニー・カニカー、ジョン・ヘイグ

Q: 2022年にDVの話を聞くと、かなりショッキングなんですけれど、当時はそれほど珍しいことではなかったと思います。監督はどうしてDVのエピソードを入れることにしたのでしょうか?

A:レッテルを貼るようなことはしていないと思うし、このシーンはせいぜい、1分か2分のものだよね。でもジョンの人格を正直に描写するならば、これも入れるべきだと思った。入れたことによって、ジョンという人物をより理解しやすくなったと思う。このエピソードから、ジョンが人間的に、短期間でどれだけ成長したのかも理解できる。それに、DV加害者だった人間が、10年後には平和を我らにと歌うようになるんだから。誰もが憎しみではなく愛を考えるべきだと訴えているジョンは、1958年にシンシアを殴った人物とはまったくの別人だとわかると思う。

息子のジュリアン・レノンと

Q:ロシアのウクライナ侵攻があり、本作のポスターがロシアを連想されるものであることから、本作のポスターを嫌う人もいるのですが、ポスターのアイディアはどこからきたのですか?

A:イギリス版のポスターはリヴァプールの地図の上にジョンの顔が重ねられたものだったんだ。でも、リヴァプールの地図だということはイギリス人にしか通じないと判断したんだと思う。実はこの海外バージョンはプロデューサーが作ったんだ。4年前に作られたビジュアルで、意図としては、ジョン・レノンには色々な面があって、マトリョーシカ人形みたいに、映画がジョンのレイヤーを剥がしていって、その人物像の核を見せるものだと示唆したかったんだろう。残念ながら、今の世界情勢を考えると、タイミングが悪いね。

本作のポスタービジュアル

Q:ビートルズのドキュメンタリーは他にもあるのですが、本作はどういうところが異なるのでしょうか?

A:まず、2曲を除けば、映画にはビートルズの音楽は入っていない。ジョンが成長する過程で聴いていた音楽を使いたかったんだ。それに、個人的に体験したエピソードを語れる人にしかインタビューしなかった、という点も他と違うと思う。映画の舞台をリヴァプールに設定した点もだね。1980年頃、当時の保守的な政府の政策の一つは、リヴァプールを衰退させて、ほとんど消滅させようというものだった。その結果、アウトサイダー的、負け犬の街という雰囲気が出来上がった。そういうことを理解すると、ビートルズやジョンの始まりについても、まったく違った理解が得られるでしょう。

少年時代のジョン・レノン

Q:読者にメッセージをお願いします。

A:1963年から、そしてアメリカでは1964年から、ビートルズが世界の文化を席巻した。60年代の文化の大きな要素を理解するには、ビートルズのルーツを理解する必要があると思う。ビートルズをリードしたのはジョン・レノンで、彼のルーツを理解することができるのがこの映画だ。だから、それを理解したいと思う人には、この映画を見てほしい。

なお、映画館での上映時には、トークイベントも続々決定している。
(上映時間が記載されていない劇場は、後日SNS及び映画館の公式サイトにて発表。)
初出のエピソード満載の貴重な映像をぜひ映画館で鑑賞してほしい。

【トークイベント一覧】
■アップリンク吉祥寺
日時:12月8日(木) 11:20の回上映後
登壇者:真鍋新一 (編集者・ライター)  MC:南圭介

日時:12月17日(土)
登壇者:ピーター・バラカン (ブロードキャスター/本作字幕監修) MC:南圭介

■池袋シネマ・ロサ
日時:12月8日(木)13:30の回上映後
登壇者:藤本国彦 (ビートルズ研究家/本作字幕監修) MC:南圭介

日時:12月17日(土)
登壇者:ピーター・バラカン (ブロードキャスター/本作字幕監修) MC: 南圭介

■名演小劇場(名古屋)
日時:12月8日(木) 19:15の回上映後
登壇者:小川真一(音楽評論家) MC:南圭介

日時:12月10日(土) 10:00の回上映後
登壇者:藤本国彦 (ビートルズ研究家/本作字幕監修) MC:汐月しゅう

■ほとり座(富山)
日時:12月8日(木) 19:00の回上映後
登壇者:宮永正隆(ビートルズ大学学長)

■アイシティシネマ(松本)
日時:12月9日(金)
登壇者:藤本国彦 (ビートルズ研究家/本作字幕監修) MC:南圭介

■サツゲキ(札幌)
日時:12月11日(日)
登壇者:真鍋新一 (編集者・ライター)

■青森松竹アムゼ
日時:1月21日(土)
登壇者:ピーター・バラカン (ブロードキャスター/本作字幕監修) MC:南圭介

『ジョン・レノン〜音楽で世界を変えた男の真実〜』
12月8日(木)よりアップリンク吉祥寺、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

予告編

公式サイト:https://lookingforlennon.jp/
Twitter:https://twitter.com/johnlennonjp
Facebook:https://www.facebook.com/johnlennonjp

写真提供:©SEIS Productions Limited

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