『そして、バトンは渡された』プロデューサー単独インタビュー ポジティブな力にあふれたキャスト陣が困難を乗り切る強さを伝えてくれた

2022.11.10 20:00

11月11日の『金曜ロードショー』で地上波初放送される『そして、バトンは渡された』。血のつながらない父と暮らす高校生・森宮優子と、夫を何度も変えて自由奔放に生きる魔性の女・梨花の人生が交錯するさまを描く物語で、永野芽郁、田中圭、石原さとみ、岡田健史、稲垣来泉らが出演している。entax取材班は田口生己プロデューサー(ワーナー・ブラザースジャパン)、古林茉莉プロデューサー(日本テレビ)に、制作当時の思い出とキャストの魅力について語ってもらった。

■ピアノを弾きながら演じるシーンは永野芽郁、岡田健史による猛練習の成果

――『そして、バトンは渡された』はピアノがキーの1つとなっていて、主役の優子を演じる永野芽郁さん、優子の同級生である早瀬くんを演じる岡田健史さんは、ピアノの練習をかなりされたと伺いました。実際に弾いているシーンも入っていますが、お2人の役への向き合い方について、感じられたことを教えてください。

田口生己 永野芽郁さん演じる優子は、子どもの頃からピアノを愛する女の子で、岡田健史さん演じる早瀬くんは、将来を嘱望されたピアノがすごく上手な男の子という役どころにそれぞれチャレンジしていただきました。

最初にオファーをした時は、2人ともピアノの経験はまったくない状態でした。映像の表現としては、ピアノを弾いているシーンは、本人が弾く、もしくはピアノを弾くことができる人の手元に置き換える、という手法があると思いますが、今回はそれをするかしないかを事前に決めて撮影には入らなかったんですね。

――そうだったんですか。

田口生己 監督を含め、私たちとしてはやはり実際に俳優さんが弾きながら演じるところが撮影できるなら、それだけ映像に説得力が出ると思っていました。そこにあまりプレッシャーをかけないようにはしつつも、かなり早い段階から時間が取れたので、2人ともピアノの練習を撮影5ヶ月ぐらい前から徐々に始めていったんですね。実際に撮影の時は、どちらが弾くか、どう弾くか、どう撮るかといったことを、まったく決めていなかったんですが、猛練習によって撮影当日までに2人ともピアノが弾けるところまでもってきたんです。

実際の劇中でも、ピアノを弾いている永野さんの表情が見える、というカットがあるんですが、しっかり役を仕上げてきてくれて、その役をやりきる気概というか、志の高さをすごく感じました。とても若い2人なのに、本当に素晴らしい俳優さんたちだなと思いました。

――主人公の優子を演じた永野芽郁さんについて、プロデューサー目線から見た魅力を教えてください。

田口生己 私は大きく2つあると思っています。まずこの役柄になぞらえて言うと、優子というキャラクターはどんなに大変なことや辛いことがあっても、前向きに生きていこうとするんです。この作品の根底に流れる力強さというか、ポジティブなパワーのようなものを、永野さんは基本的に持ち備えていて。それは画面を通してでも感じ取ることができて、お芝居の中はもちろん、普段から彼女の持つ、周りを明るくさせる力は唯一無二というか、素晴らしいものだなと感じています。

もう1つの魅力としては、目のお芝居だと思います。今回でいうと、やはり田中圭さんとの親子関係で、ギクシャクするところや、大切な人と再会するシーンなど、言葉はないけれど、無言の表情の中に、うれしさと寂しさという、複雑な心境が伝わってきて。目で訴えかけるお芝居の力は、どんなシーンにおいてもすごく説得力があるのは、彼女の大きな魅力だと思います。

■石原さとみ、撮影期間は娘役稲垣来泉ちゃんをスマホの待ち受けに

――梨花役の石原さとみさんにとっては初めての母親役への挑戦となりましたが、石原さんにこの役をお願いしたことへの思いをお伺いできますか?

古林茉莉 梨花が持っている強さと明るさを表現するには、どんな俳優がいいかと話し合いをしていた中で、皆で口をそろえて「石原さとみさんにお願いをしてみたい」と、プロデューサーチームの意見がまとまった瞬間がありまして。それでお願いしたところ、ご快諾いただいたという背景があります。

実際の役作りも素晴らしくて、娘のみぃたんを演じるのが稲垣来泉ちゃんに決まり、撮影の前に母と子のような形で、石原さんと来泉ちゃん2人のコミュニケーションを取る時間を設けていただいたんです。その時間でかけっこをしたり、2人で似顔絵を描き合ったり、そういうコミュニケーションをいったんはさんで、クランクインをされているんです。

待ち受け画面をずっと稲垣来泉ちゃんにされたり、撮影期間は本当のお母さんのように接していただいて、映像ではずっと愛情たっぷりの梨花が表現されていたと思います。

――みぃたんをハグするシーンも、愛情にあふれていました。

古林茉莉 本当に仲良しの2人で、友だち親子じゃないですけれど、稲垣来泉ちゃんもすごく石原さんになついていらっしゃって。撮影現場でも実際の家族のように触れ合っていらしたので、劇中で映っているのはもちろんお芝居ではあるんですけれど、本当にああいった家族がいるような、そんな空気感の現場でした。今も稲垣来泉ちゃんは石原さんのことを「ママ」と呼ぼうとしてしまうくらい、役の中でも愛情たっぷり触れ合っていただいたんだろうな、と思います。

■永野さんはきつい撮影の時ほど笑顔で現場を引っ張っていく

――他にも撮影中の印象的なエピソードを教えていただけますか?

田口生己 まず永野さんは、卒業式のシーンが物語の中盤にあるんですけれども、撮影期間の後半で2日間撮影をしているんです。そこでピアノを弾きながら田中圭さんを見つけて泣く、というお芝居をあらゆる角度から撮っていたんですけれど、ずっと同じようなお芝居を2日間延々と撮り続けていて。体力的にも精神的にもきつい撮影だったと思うんですけれども、文句1つ言わず、弱音を上げることもなく、むしろそういう時ほど周りに気を遣って、持ち前の笑顔で現場を引っ張っていく姿は、とても感心させられたし、印象的だったと思います。

そして石原さとみさんは、先ほど古林プロデューサーが言っていたように、母親役は初めてですごく大変だったところも多いと思うんですけど、それよりも自分の子ども役である来泉ちゃんが不安な時にお話してあげたりとか、サポートしてあげていた姿が印象的でしたね。

田中圭さんは、永野さんと血のつながらない親子という関係ですが、やはりどんな時も温かく、撮影外のところでも見守っている感じがしていて。永野さんが大変な時とか、難しいお芝居の時でも「大丈夫だよ」と声をかけてあげて、お父さん役そのままといった感じで、彼女の精神的なフォローをしてくださっていたので、現場としても非常に助けていただいたと感じています。

――みぃたんを演じる稲垣来泉さんは、複数のお父さんとのお芝居がありましたよね。

田口生己 来泉ちゃんはまさに天性の女優だと思うくらい、おじさまたちのハートを次々にわしづかみにしていきました(笑)。お芝居でもそれ以外の待ち時間でも、お父さんたちと談笑している姿はすごくよく見かけましたし。どのお父さんともすぐに良い関係が築けていたので、さすがだなと思います。大人になったら、どんなお芝居をされるようになるんだろうと思うくらい、素晴らしい俳優さんでしたね。

【田口生己 Profile】
ワーナー・ブラザースジャパン ローカルプロダクション プロデューサー。近年のプロデュース作品には、『そして、バトンは渡された』(2021)、『TANG タング』(2022)など。

【古林茉莉 Profile】
日本テレビ グローバルビジネス局映画事業部 兼 コンテンツ制作局 プロデューサー。『今日から俺は!!劇場版』(2020)、『そして、バトンは渡された』(2021)など。現在担当しているドラマ『霊媒探偵・城塚翡翠』が毎週日曜よる10時30分~放送中。

11月11日(金)よる9時00分~11時34分(40分拡大)
『そして、バトンは渡された』(2021)地上波初放送

◆原作:瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』(文春文庫 刊)
◆監督:前田哲 ◆脚本:橋本裕志 ◆音楽:富貴晴美
◆出演:永野芽郁 田中圭 岡田健史 稲垣来泉 朝比奈彩 安藤裕子 戸田菜穂 木野花 石原さとみ / 大森南朋 市村正親

写真提供:©2021 映画「そして、バトンは渡された」製作委員会

クオカードプレゼントキャンペーン2024

  • Twitter
  • Facebook
  • Line

SNS

featured

text_newarticles

categories