Hakubi単独インタビュー 1人1人に届けるつもりでやることを 何より大切にしたい

2022.9.22 22:00

『バズリズム02』(毎週金曜日、深夜放送)では、9月から NEXTバズアーティストに1ケ月密着し、まだどこからも発信されていないそのアーティストにまつわる新情報を見つける新コーナーがスタート。最初に選ばれたのはスリーピースバンド・Hakubi。entax取材班は彼らに単独インタビューを実施。

2017年に京都で結成されたHakubiは、2021年に公開された高畑充希主演の映画『浜の朝日の嘘つきどもと』で主題歌の『栞』を担当し映画と共に大反響を呼んだ。現在配信リリースされている新曲『あいたがい』はAimer『カタオモイ』など数々の楽曲提供やプロデュースを行ってきた内澤崇仁(androp)によるHakubi初のプロデュース作品で、彼らにとって初の恋愛ソングを前面に出した楽曲である。3人に楽曲制作の裏側と、ライブに対するこだわりについて話を聞いた。

片桐(Vo./Gt.)

■ずっと恋愛の楽曲をHakubiとして出したかった

――片桐さん、マツイさんは大学の軽音サークルで出会い、ヤスカワさんはマツイさんと高校時代の時に顔見知りで、Twitterで「バンドをやりたい」と書いたヤスカワさんをマツイさんが誘ったそうですね。

片桐 私は当初、人とうまくやっていけない、自分と組んでくれる人はいないだろうと思っていて、1人で弾き語りをしていました。だから2人には、まず組んでくれたことにすごく感謝をしていて。ライブをたくさんしている時に、ここまで自分の素を出していられるのは楽だなと思いましたし、そこはすごいポイントだったかなと思います。

マツイユウキ 僕は一方的に(ヤスカワが)ライブをしているのは見たことがあって。僕も初めて組むバンドでしたし、ちゃんとバンド活動をするのだったら、1人くらい経験者がおった方がいいよな、という観点もあって、彼に声をかけました。

ヤスカワアル 僕は2人のことを、まったく知らなかったんです。だからバンドをやっていけるかどうかを考えるより、せっかくの機会だから、という感じでした。僕らは顔合わせがなくて、最初にオフ会みたいな感じでスタジオに集合したんですよね。

――Hakubiの作詞やメロディは片桐さんに任されている、というお話を伺いました。片桐さんはどのような方法で楽曲を制作されていますか?

片桐 最近は少し作り方が変わってきているんですけれど、弾き語りをしながら自分の中で考えていたことをそのまま口に出してみて、ボイスメモにその日の日記みたいな感じで残していきます。それをまた精査して、メンバーに弾き語りとして渡す、といったパターンが多くて。今、出ている楽曲の99%くらいは、そうやってできていきました。

――今回の『あいたがい』も同じスタイルで制作されたのでしょうか?

片桐 この楽曲も私の弾き語りから始まっていますが、デモをみんなに渡す段階で、「ここではギターをこうしたい」といったような構想が、すでに自分の中ではありました。でもドラムベースに関しては2人に任せようと思い、ギターについては、つめた状態で2人に渡したと思います。

手前から、ヤスカワ アル(Ba.) 片桐(Vo./Gt.)

――今回がHakubiにとって、初の恋愛ソングになるそうですね。

片桐 恋愛ソングと公言して出した曲はなかったんです。でもアルくんは「みんなが聴く楽曲って、やっぱり恋愛ソングだな」と言っていて。だからずっと「恋愛の楽曲を出したい」と言っていたんですよ。それが“恋愛曲を出そう”と思うきっかけをくれました。

――Hakubiらしさは、この楽曲のどんなところに表れていると思いますか?

マツイユウキ イントロからサビ直前まではゆったりしていて、ドラムも繊細な感じでやりながら進んでいくんです。でもサビ前で一気にギターがハウリングみたいな音になり、サビに入っていく展開は僕ららしいと思います。

――繊細さがキーだった、と。

マツイユウキ 僕の偏見かもしれないんですけれど、恋愛の曲って繊細さがすごくいるじゃないですか。だから1つ1つの音色とか、各パート大事にしながら取り組めたと思っています。

――『あいたがい』というタイトルには、どんな意味を込めたのでしょうか?

片桐 自分の中では“相手も自分も、思い合っているのにすれ違ってしまう”というのが大きなテーマとしてありました。タイトルをどうしようか考えた時に、人を愛することを間違う・すれ違ってしまうという意味と、お互いにという意味で“愛違い”“相互い”で。ひらがなで“あいたがい”としたら、どちらの意味にも取れていいんじゃないかな、と思ってこのタイトルにしました。

――「会いたい」という思いも入っているのかなと思ったのですが。

片桐 実はラジオのお仕事の時だったと思うんですけど、「『あいたがい』には会いたい、会いたがるという気持ちが入っているよね」と言われて、「え!? 確かに」と、その時に気づいたんですよ。今日も「“会いたい”という意味も含まれているんです」と言えば意味が3つになったのに。言えばよかった(笑)。

マツイ 今後、それも使っていきます!

左から、ヤスカワ アル(Ba.) 片桐(Vo./Gt.) マツイ ユウキ(Dr.)

――Hakubi初の恋愛ソングということで、曲を聴いたファンの方からの感想で印象的だったことは何でしょうか?

ヤスカワアル 『あいたがい』の配信のキャンペーンでラジオなどいろいろ出させていただく中で、自分の恋愛話をしたら、お客さんに引かれました。

マツイユウキ それ、曲の反響じゃないよね(笑)。

――でも恋愛ソングは、聴いていると自然に自分の話もしたくなってしまうのかもしれないですね。

ヤスカワアル これまで恋愛とはかけ離れている世界観で曲をリリースしてきたので、ラジオや取材の時に「そういう話もしてください」と言われたことがありました。だからこういった話題を話すのは、新鮮でしたね。

片桐(Vo./Gt.)

■生きている音と言葉があってこそ、ライブになる

――片桐さんはライブ前にルーティーンでミット打ちをされているそうですが、どういうきっかけで始められたのですか?

片桐 実は最初にボクシングにはまったのはアルくんで「ボクシングやらへん?」ってずっと誘われていたんです。そうしたら音響のPAさんがボクシンググローブとミットを買ってきて、「ちょっとやろうよ」となったんですよ。毎回ライブが始まる前に、全員3分間ミット打ちをやっていました。でも次のツアーになったら、私しかやっていなくて。

――片桐さんはストイックですね。

片桐 最初は3分だったんですけれど、4分に増え、今は4分半になりました。それが自分のスイッチを切り替えるタイミングになって、神経を研ぎ澄ます感じですね。ライブ前は集中力を高めるタイプと、逆にいつもどおり過ごしてフラットな気持ちでステージに上がった方がやりやすい人といると思うんですけれど、私は前者で。でも2人は普段どおり過ごして、すっとライブに入る方が楽みたいですね。

――ちなみにヤスカワさんとマツイさんのライブ前のルーティーンは何ですか?

ヤスカワアル ルーティーンって言うと、特にないかもしれないですね。

マツイユウキ 僕はYouTubeのバラエティを見て、気持ちをリフレッシュしています。

片桐 ちょっと前までは2人とも応援してくれていたんですよ。今はただ、私の「うおー!」っていう声だけ聞こえるという(笑)。だからさみしいです。

マツイユウキ 対バン相手や友だちとかは、ミット打ちをやっている姿を見て「すごいぜ、あいつ」みたいな感じですが、僕らは慣れてしまって。たぎっているから近寄ってもいじってもらえないし、そっとしておこうって(笑)。

左から、ヤスカワ アル(Ba.) 片桐(Vo./Gt.) マツイ ユウキ(Dr.)

――Hakubiのライブの魅力はどういった点だと思いますか。

片桐 いろいろな考えがあると思うんですけど、私は生きている音と言葉があってこそ、ライブになると思っています。例えばすごく泣いている子がいたら、その子に向かってかける言葉があると思うし、つまらなそうにしている人がいたら、その人にかける言葉もたぶん違ってくるでしょう。フロアを見て、できることをするのがライブだと思うんですよ。なので本当にその日その日で、まったく違ったものになります。

あと、100%で言葉を届けないと、たぶん聴いてくれている人には伝わらない。だから“皆さん”じゃなくて、“あなた”だと思っていて。自分たちが大切にしているのは、本当に1人1人に届けるつもりでやっていることですね。お客さんが「届きました」と言ってくれるのは、すごくうれしいですし、それがHakubiの私が、言葉を吐く身としてやりたいことだと思っています。

【Hakubi Profile】
2017年結成、京都発スリーピースバンド。地元京都を中心に全国で活動中。Vo/Gt. 片桐が紡ぎ出すストレートな言葉と、その弱さを押し殺すように訴えかける力強い歌声が早耳のリスナーから支持を受ける。インディーズ時代からフェスやサーキットイベントでは入場規制が続出し、ライブバンドとして人気を集めた。20年10月にメジャーデビューを発表。21年に先行配信リリースした楽曲たちはTVドラマ、映画、アニメ等に起用された。

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