邦画アニメ初!『かがみの孤城』がロッテルダム国際映画祭に正式出品 原恵一監督とのQ&Aを実施

2023.2.4 12:00

辻村深月のベストセラー小説を劇場アニメ化した『かがみの孤城』。現在全国公開中のこの作品が、第52回ロッテルダム国際映画祭のLimelight部門に邦画アニメでは史上初となる正式出品を果たした。原恵⼀監督がオランダへ渡り、現地時間2月1日の上映会前には観客に向けて挨拶。「お越しいただきありがとうございます。この映画が皆さんの⼼に優しい感動をもたらすことを願っています。さて、準備はいいですか!? 鏡の向こうに待っているファンタスティックな旅へ共にくり出しましょう!」と英語で呼びかけた。上映後、観客からは⼤きな拍⼿と歓声が贈られ、観客とのQ&Aを実施。この記事ではQ&Aの内容を紹介する。

後日、entaxが独自に取材した、オランダ滞在中の原監督と櫛山プロデューサーのインタビュー内容を掲載するので乞うご期待!

【Q&A】

Q:この作品は原監督のオリジナル作品か、それとも別の原作を基に描かれましたか?

A:この作品は、⽇本で有名な辻村深⽉さんという⽅が書かれた、累計発⾏部数170万部を超える⼩説が原作ですので、僕のオリジナルではありません。

⼩説や本作で取り上げている、‟何らかの事情を抱えて学校に⾏けない⼦どもたち”は、オランダでもいると思うんですけど、⽇本では現在23万⼈程いると⾔われており問題になっています。原作の読者や本作の鑑賞者に共感を得られたのは、この問題をテーマに扱ったからだと思います。

Q:映画では細かい部分で、原作からアレンジしているシーンもありましたが、どのような点を意識して映画を作っていきましたか?

A:原作は分厚い本で、それを2時間以内にまとめなければいけなかったので、映画にするには沢⼭の苦労がありました。原作では、孤城に集まる7⼈それぞれのバックストーリーが丁寧に描かれているのですが、映画で同じように描いてしまうと2時間に収まりきらないため、‟安⻄こころ”という⼥の⼦を中⼼とした物語として、しかし原作のストーリーを損なわないよう構成しました。

Q:「こころ」という名前は、⽇本語で「⼼”heart”」という意味ですよね。

A:とても重要なポイントですね。そうなんです。ヒロインの名前は「こころ」で、⽇本語「⼼”heart”」という意味なんです。

Q:マサムネの声優は有名な某名探偵の声優と同じで、劇中で某名探偵の決め台詞が使われていて驚きました。

A:オランダでまさかこのような質問が来るとは思ってなかったのですが(笑)某名探偵は⽇本ではとても有名なアニメーションですが、その「真実はいつも⼀つ!」という決め台詞をパロディで⾔ってもらおうと思い、遊びました。 ちなみに僕が⻑年監督を務めた「クレヨンしんちゃん」のしんちゃんの声を演じていた⽮島晶⼦さんがある役で出演していますが、わかりましたか?(観客:わかりました!)ありがとう、素晴らしいです。

Q:この映画を通して伝えたいメッセージは?

A:⽇本でもオランダでも学校に⾏けない⼦はたくさんいると思うけど、そういう⼦は親も友達も誰も助けてくれないと思ってすごく孤独の中にいるかもしれないけど、それはずっと続くことではなく、きっと誰かが味⽅をしてくれるから信じて欲しいということが、この映画の伝えたいメッセージです。

I believe you are not alone.(あなたはひとりじゃない)

【ロッテルダム国際映画祭について】

毎年オランダの都市ロッテルダムで開催されるロッテルダム国際映画祭は、新⼈監督の登⻯⾨的な存在として多くの若⼿映像作家の作品を紹介しており、1972年に始まり、2023年で52回⽬を数える。毎年約600作品が上映され、来場者数は30万⼈を超えるヨーロッパでは重要な国際映画祭のひとつ。また、近年では世界三⼤映画祭となるカンヌ国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭、ベルリン国際映画祭に次ぐ最も重要な映画祭の⼀つに数えられている。

本作は、この年の映画界で注⽬を集めるハイライト作品で構成される「Limelight」部⾨に選出され、この部⾨での出品は邦画アニメ初。2017年には『海よりもまだ深く』(2016年/是枝裕和監督)、昨年は『ドライブ・マイ・カー』(2021年/濱⼝⻯介監督)も出品された部⾨で、世界が注⽬する⽇本映画として、国内外で期待の声が⾼まっている。「Limelight」部⾨は観客賞・NETPAC賞(Network for the Promotion of Asian Cinema=最優秀アジア映画賞)が対象となり、早くも本年度の賞レースに名乗りを上げた形。授賞式は現地時間2月3日(⾦)17:00〜(⽇本時間:2月4日(⼟)1:00〜)。

【原恵一監督Profile】

1959年7月24日生まれ。『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(01)で大きな話題を集め、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(02)、『河童のクゥと夏休み』(07)で日本での数々の賞を受賞。また、アヌシー国際アニメーション映画祭で受賞した『カラフル』(10)、『百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』(15)ほか、『バースデー・ワンダーランド』(19)など、海外でも高い評価を受ける日本を代表するアニメーション監督。2018年には芸術分野で大きな業績を残した人物に贈られる紫綬褒章を受章。アニメーション映画監督としては、高畑勲監督、大友克洋監督に次ぐ史上3人目の快挙を成し遂げ、国内外から新作が待ち望まれている。

【作品情報】

『かがみの孤城』 12月23日全国公開

<声のキャスト>

當真あみ 北村匠海

吉柳咲良 板垣李光人 横溝菜帆 ・ 高山みなみ 梶裕貴

矢島晶子 ・ 美山加恋 池端杏慈 吉村文香 ・ 藤森慎吾 滝沢カレン / 麻生久美子

芦田愛菜 / 宮﨑あおい 

<スタッフ>

原作:辻村深月「かがみの孤城」(ポプラ社刊)

監督:原恵一

主題歌:優里「メリーゴーランド」(ソニー・ミュージックレーベルズ)

脚本:丸尾みほ

キャラクターデザイン/総作画監督:佐々木啓悟

ビジュアルコンセプト/孤城デザイン:イリヤ・クブシノブ

音楽:富貴晴美

企画・製作幹事:松竹 日本テレビ放送網

制作:A-1 Pictures

©2022「かがみの孤城」製作委員会

【映画『かがみの孤城』Story】

学校での居場所をなくし部屋に閉じこもっていた中学生・こころ。ある日突然部屋の鏡が光り出し、吸い込まれるように中に入ると、そこにはおとぎ話に出てくるようなお城と見ず知らずの中学生6人が。さらに「オオカミさま」と呼ばれる狼のお面をかぶった女の子が現れ、約1年間の期限内に「城に隠された鍵を見つければ、どんな願いでも叶えてやろう」と告げる。

戸惑いつつも鍵を探しながら共に過ごすうち、7人には一つの共通点があることがわかる。互いの抱える事情が少しずつ明らかになり、次第に心を通わせていくこころたち。そしてお城が7人にとって特別な居場所に変わり始めた頃、ある出来事が彼らを襲う。

果たして鍵は見つかるのか? なぜこの7人が集められたのか? それぞれが胸に秘めた<人に言えない願い>とは?

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