人魚姫は泡となった後300年間 風の精となる・・・ラストに込められた意味は?夏休みに子ども向け新作バレエ『人魚姫』開幕へ~新国立劇場
2024.7.26 15:45新国立劇場では、2009年から「こどものためのバレエ劇場」を実施。2024年の夏は、アンデルセン童話『人魚姫』をモチーフにした新作バレエを世界初演する。
振付を担当するのは、2022年まで新国立劇場に22年間ダンサーとして在籍していた貝川鐵夫。彼はバレエ団の振付家育成プロジェクト「NBJ Choreographic Group」に参加し、数々の作品を発表してきた。
『人魚姫』は、海の外で出会う恋の喜びや悲しみ、不条理に触れる切ないラブストーリー。新国立劇場バレエ団のオリジナル作品として、全世代に向けたバレエの魅力が詰まった舞台となった。
この舞台のユニークな点は、人魚姫が人間になりたいとお願いをする相手が「魔女」ではなく、「女王」となっているところ。深海を支配する女王は、男性ダンサーが務め、通常は女性が使用するトウシューズを履いて登場する。これは、「大きな海を統べるキャラクターとして、場を支配するような存在感のあるキャラクターにしたかった」という貝川のこだわりだ。
振付 貝川鐵夫:
今作品はアンデルセンの『人魚姫』をモチーフにしました。彼女が王子との恋は実らず泡となってしまうという切ないストーリーは多くの方が親しまれているかと思いますが、実は泡となったその後 300 年間、天国に召されるまで風の精として過ごすという結末をご存知の方は少ないかもしれません。「親から愛しみを受ける子どもを見つけて私たちもほほ笑むと 300 年の試練は 1 年ずつ短くなる。逆に、親を悲しませる悪い子を見て涙を流すと 1 日ずつ長くなる」。物語のラストで人魚姫は他の風の精霊たちからそのように教わります。何か教訓めいたその示唆は、私たちに問題を出されているような、ここに大事なことが隠されていそうな…そんな思いを抱きながら作品全体を構想しました。
人魚姫は深海奥深くから、人間の魂に憧れ、未知の地上へと足を踏み入れ、様々な人間模様、喜び、おかしさ、寂しさ、醜さ、辛さを経験します。そして、人魚姫は人間の魂をどのように思い生きていくのか。この物語にはわかりやすい答えがある訳ではありません。子どもたちひとりひとりの感じるままに、このバレエをご覧いただきたいです。
貝川がこの作品を通して一番伝えたかったことは、「“いいこと”とは何なのか」という倫理観のようなものだ、と語った。舞台では、人魚姫が泡となった後の世界は描かれないとした上で、「想像することが大事」だとした。
人魚姫を務める柴山紗帆は「深海のシーンはコミカルで、子どもたちも楽しめると思うので、ひとりひとりが“何か感じてもらえる舞台“を作っていきたい」と意気込みを語った。
今回、主役デビューとなる中島瑞生は「バレエをみたことがない子どもたちにも、空気や透明感を感じてもらって、バレエって素敵だなと思ってもらえる舞台を作り上げたい」と話した。
吉田都芸術監督:
童話として親しまれている『人魚姫』をバレエにすることで、お子様やバレエにあまりなじみのない大人の方がバレエを楽しまれ、身近に感じてくださることを期待しております。バレエは言葉を発しないため、子どもたちの受け止め方は無限で、さまざまな想像をかき立てられることでしょう。「子どもたちの想像力・創造力を豊かにしたい」。貝川さんや私が「こどものためのバレエ劇場」へ向けて持つ思いです。新国立劇場、そして「こどものためのバレエ劇場」がお子様たちの未来を育む場になるよう、努めてまいります。
〈STORY〉
ある嵐の夜、人魚姫は海で溺れていた若い王子の命を助ける。
王子のことが忘れられない人魚姫は、彼にもう一度会うため、深い海を支配する女王にお願いし、声と引き換えに人間になれる魔法をかけてもらう。
回復した王子のもとに、人間となった人魚姫が現れる。二人は一緒に楽しい時を過ごし、王子には恋心がめばえる。しかし王子には既に決められた婚約者がいた…。
新国立劇場 こどものためのバレエ劇場 2024
『人魚姫』~ある少女の物語~
<新国立劇場バレエ団委嘱作品・世界初演>
Ballet for Children 2024 Story of a Little Mermaid
〈公演日程・会場〉
2024 年 7 月 27 日(土)13:00 /16:30
7 月 28 日(日)13:00/16:30
7 月 29 日(月)13:00 /16:30
7 月 30 日(火)13:00/16:30
予定上演時間:約 1 時間 40 分(休憩含む)
会場:新国立劇場 オペラパレス
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