【先週読まれた人気記事】ドラマ『約束』実は…当初は違うタイトル!?さらに、第1話に隠された“伏線”とは?多鹿プロデューサーが明かす【インタビュー前編】

2024.6.29 17:30

6月13日(木)に最終回を迎えた、ドラマ『約束 ~16年目の真実~』。深夜ドラマにもかかわらず、TVer累計再生回数は“驚異の1100万回越え”の大ヒット作となった。entaxでは、オリジナル作品として本作を一から手掛けた、多鹿雄策プロデューサーに独自インタビューを実施。作品作りのきっかけや世界観へのこだわり、当初のタイトルから変更となった裏話について詳しく聞いた。【インタビュー前編】

(以下、ドラマのネタバレを含みます)

Q:ドラマ『約束』の根本ともなる“一つの真実を追っていく”という物語は、どのようにして着想されたのでしょうか?

企画プロデュースするのは今回で2作品目で。1作目は1年前に、志田未来さんと風間俊介さん出演の、1話完結のリーガルミステリー『勝利の法廷式』(2023年)という連ドラでデビューさせていただきました。『約束』は『勝利の法廷式』を作っている最中に、次は“全10話”の“連続もの”に挑戦したいなと思い、スタートしました。

テレビドラマ・プロデューサー 多鹿雄策

自分が小学生、中学生など学生の頃に見ていたテレビドラマって、放送が終わったら「うわ〜次早く観たいな」って、翌日の学校でも感想を言い合って盛り上がっていた記憶があって。その感覚が今のテレビドラマの環境や時代で、どうやって作り出せるかなと思った時に、毎話ラストにどんでん返しが起きて、次の週何が起きるんだろうっていうところを突き詰めた、心理サスペンスに挑戦したいと思ったのがきっかけです。

そうなると、おのずと“一つの真実”にたどり着くまでにどんな謎があるのか、毎話“新たな真実”が生まれて、そこからまた“新たな謎”が浮かび上がって、という流れをとにかく繰り返して、謎も大きくなって。結果的にバディの葵(中村アン)と香坂(横山裕)の“二つの物語”が一つにつながっていくみたいな構成ができました。

バディ・香坂慧(横山裕)、桐生葵(中村アン)

Q:『約束』というタイトルにいきついたきっかけはありますか?

タイトルは、もともと…企画書では『サクリファイス(仮)』だったんです!

――作中に出てくる不破翔(細田善彦)が描いた“映画のシナリオ”のタイトルですか!?

そうなんです!キャスト陣もスタッフ陣も、オファーした時は『サクリファイス』でした。最初からずーっと、2023年の年内くらいまでかな。タイトルは仮のまま進んでいて、『サクリファイス』はさすがにないかなって空気に(笑)『犠牲』という意味なんですけど、伝わりづらい、わかりにくいというのもあって。最終的になににするか、最後まで粘りました。

――いつ頃『約束』に決まったのでしょうか?

第7話の台本を作っている最中に、脚本家さんと話している時に、遺体の特徴を“口の中の詰めたビー玉”以外に「もう一個特徴を作りたい」というお話をして。口以外の何かにしようと考えていた時に「指を立てるってどう?」という案が出ました。そこで、小指を立てる…“約束”っていう意味があるなと思って。真犯人・飛鳥桃(織田梨沙)からの一方的な葵への“約束”は早い段階から作っていたものだったので、ちょうど、“遺体の小指を立てる”イコール“約束”というワードが出て「タイトルは『約束』でいいですね!」って決まりました。

映画のシナリオを描いた不破翔(細田善彦)

――では、映画のシナリオのタイトルを『サクリファイス』に決めた理由は?

キャスト・スタッフみんなに「タイトルは『約束』、サブタイトルは『16年目の真実』にします」と伝えて。その後、自分が知らないところで、監督や助監督の方々が「16年前の不破のシナリオのタイトルどうしよう」っ考えていた時に、企画当初のタイトルを思い出してくれて、シナリオの中身も“犠牲”がテーマだし、ということで『サクリファイス』を面白がって使ってくれました。

Q:映像の色味、BGMで魅せる緊迫感など、一言では表せないシリアス感も話題となっています。世界観や画作りでこだわったことを教えてください。

僕から、監督やスタッフ全員、キャスト陣も含めてお願いしていたことは、抽象的な言葉になりますが「上質で、スタイリッシュで、かっこいいドラマにしたい」と伝えていました。ドラマの舞台である望野町(のぞみのちょう)は、東京の少し離れた郊外という設定です。深夜帯のドラマという関係で、遠いロケ地に行くわけにもいかない、泊まり込みも難しいので。実際は、東京のあきる野市で撮影を行いました。東京都内ではありますが、山とか川とか、自然の景色がきれいなロケ場所を見つけてきてくれて。その緑の豊かさを監督がどう画に起こすか考えてくださって、あの映像の質感に向かっていったと思います。

――多鹿プロデューサーの思いを突き詰めた結果ということですね。

演出や音楽、脚本、衣装、メイクなど、全部署が「このドラマを通して、何か1つ挑戦できたらいいな」って思ってて、“挑戦”というワードは大切にしていました。映像のテイストも、23時59分から始まる深夜だからこそできたことかもしれない。オリジナルだからこそ決まっていることがないので、はじめに作った自分の世界が、みんなの提案でどんどん広がって膨らんでいって、監督がまとめてくれて、その変化が楽しくて、幸せでした。キャスト・スタッフの個の力を結集してできた形だと思います。

多鹿雄策プロデューサー

――BGMで意識したことはありますか?

日曜劇場『ブラックペアン』とか、たくさんの話題作を担当されてきた木村秀彬さんと奇跡的にご一緒できることになって!木村さんが作るサスペンスの曲はすごくかっこいいなと思っていたのでうれしかったです。音楽で意識した点で言うと、本編のタイトルに入る前に流れる、視聴者の皆さんも一番耳にしているメインテーマ。このドラマの特に1~2話は、“静”と“動”でいうと、すごく“静”を強く大切にしていて。葵と香坂が2人で並んだ時のかっこよさ、刑事ドラマなのに全然走らないし、言い合いも全然しないし(笑)、感情も露わにせず、静かに淡々と詰め合うみたいな(笑)そんな作品なので、メインテーマは、”静”を先導して、サスペンスを煽(あお)るように、テンポを「ちょっと速めにしたい」と、木村さんにお願いしました。

Q:第1話で登場した『悲しみの丘』は、作中でも印象的なシーンでした。

『悲しみの丘』は、脚本家さんがゼロイチで提案してくれた設定です。どんなドラマでも、第1話の作り方が難しい。1話で引き込ませるために、謎をただただ提示し続けるだけでは良くないと思っていて、一つのヒューマンドラマを1話の中で作らないといけない。失踪した女の子がどこにいたのか。1話の中で回収できるミステリーで、かつ、そこにヒューマンドラマも乗っかる、それを表現するために、『悲しみの丘』に登っている、という設定を作り出してくれました。

――最終回の最後にも登場した『悲しみの丘』。一つの“キー”になっていたんでしょうか?

1話を作った時は、10話でその設定が再登場なんて一切考えていなかったです!1ミリも!最終話の脚本を作っている最中で、香坂がどうやって葵の元にたどり着くか。「やばい何も思いつかない!」ってなった時に、「『悲しみの丘』使いますか?」って(笑)全話作る中で、うまく伏線を張って、回収していったつもりではありましたが、あの『悲しみの丘』の部分だけは、行き当たりばったりで生まれたかも……!でも、SNSで最終回の感想を見ていたんですけど「ここで悲しみの丘の話に、戻ってくるんだ!」ってあってうれしかったですね。

――SNSでは深夜にもかかわらず、考察合戦が繰り広げられていましたね!

作中では、いろいろな伏線があって。これは監督が仕掛けてくれたことなんですけど。1話でタイトルに入る前の同級生たちが紹介される映像があるんですけど。真犯人の桃だけ、1人違う方向を向いているんです!桃が向いている方向は、人間の心理的に違和感を感じるようで。本当に驚きましたね。
(第1話はこちら)

真犯人となった、洋食店シオンを経営する桃

Q:SNSのキャストの方々の“笑顔のオフショット”も話題となっていましたが、撮影現場の雰囲気を教えてください。

現場の雰囲気は、SNSに投稿しているカウントダウン動画とかオフショットのまま、明るくて、笑い声が絶えない、本当にそのままです。
(公式Xはこちら)

――SNSと本編のギャップも楽しみの一つでした。

真逆に作ろうとしていました。シリアスな作品だけど、SNSはとにかく楽しく、と考えていましたね。現場は考えられないくらい明るく、楽しく、仲が良くて。撮影スケジュールも大変だったと思うし、アンさんも横山さんも、ずっと出っぱなしで。特に横山さんはセリフも多かったので、大変だったと思います。でも、キャストもスタッフも一つの大きな輪になっていました。その輪をつないでくださったのは、横山さんと坪倉さん(木崎拓斗役)だなと思います。その輪が“一つのゴール”に向かっていけたのも、アンさんの作品への覚悟がみんなに伝播(でんぱ)していたから、真っすぐ進んでいったなと思います。

後編インタビューに続く ※6月19日18時00分 配信予定

ドラマ『約束 ~16年目の真実~』
第1話~第3話・最終話がTVerで配信中!
本作は、読売テレビ・日本テレビ系2024年4月期プラチナイト木曜ドラマとして放送された、予測不能×完全オリジナルの“心理サスペンス”。

<多鹿雄策プロデューサー>

読売テレビ 2017年入社。4年間のマーケティング業務を経てドラマ制作の道へ。

『勝利の法廷式』(2023年)、『約束 ~16年目の真実~』(2024年)を担当。

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写真提供:©読売テレビ

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