主演・中村アン、バディ・横山裕のドラマ『約束 ~16年目の真実~』プロデューサーが“オファー理由”&“最終回の裏話”などを振り返る【インタビュー後編】
2024.6.19 18:006月13日(木)に最終回を迎えた、ドラマ『約束 ~16年目の真実~』。深夜ドラマにもかかわらず、TVer累計再生数は“驚異の1,100万回越え”のヒット作となった。entaxでは、オリジナル作品として本作を一から手掛けた、多鹿雄策プロデューサーに独自インタビューを実施。主演を務めた中村アン(桐生葵役)、共演者の横山裕(香坂慧役)をオファーした理由や2人の魅力、最終回クライマックスの撮影裏話などについて詳しく聞いた。【インタビュー後編】
(以下、ドラマのネタバレを含みます)
Q:中村アンさん(桐生葵役)と横山裕さん(香坂慧役)のバディとしての心情が変化していく姿も「早く次回が見たくなる」ポイントでした。お2人にオファーした理由を教えてください。
葵は、16年間加害者家族として生きてきて、悲しみや辛さ、たくさんのものを背負っているけど、真実を知りたいという強い一つの信念で最後まで走り切らないといけない。日曜劇場『DCU』を1年ほど前にちょうど見返していて、第3話での船上のアンさんの表情がすごく印象的で、“女優・中村アン”としての記憶がすごく残っていました。それが葵の強く信念を持って突き進んでいく桐生葵にリンクして、アンさんの「強く、美しく、戦う姿」を見てみたいと!
もう一つは、葵と香坂が2人で並んで立った時に、とにかくめっちゃかっこいい!黒い服を纏(まと)って、ただ立っているだけでかっこいい!そんな画を作りたいと監督と話していました。アンさんのモデルとしての活躍も拝見していたから、より葵のビジュアル面でのイメージも膨らんでいきました!
――横山裕さんはいかがでしたか?
アイドルとしての横山さん、バラエティーや情報番組での横山さん、俳優としてもいろんな作品に出られている横山さん。香坂を演じてもらうなら「横山さんのいろんな顔が見られる台本」を意識して作り、そんなメッセージを台本に込めて、渡し続けてきました。実際、香坂のミステリアスさ、過去を抱えた悲しみ、仲間を想う人間らしさ、真相に迫っていく優秀さ、色んな一面を見せてくれて幸せでした。
横山さんへのオファーは、過去作の『ザ・クイズショウ』や『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』『舞いあがれ!』を見ていたので、葵を疑っていく序盤でのミステリアスさは、横山さんなら絶対に面白くなるなと。中盤から、葵を支え始める香坂のカッコ良さや葵とのツンデレ感も、いつも素に近い横山さんの姿をテレビで拝見していたからこそ、香坂の”人間らしい一面”を横山さんに育ててほしいと思いました。そんな「俳優・横山裕とご一緒したい」という気持ちと、アイドルやバラエティーなどで知る「”横山裕”という“人”とお仕事してみたい」このふたつの気持ちと共に、オファーしました。
Q:犯人を発表せず撮影を進められたとのことで、SNSに投稿されていた台本も驚きました。
このような手法で撮影された意図を教えてください。
初めて主演の中村アンさんに、企画説明と本作への思いをお伝えした時、最終回までのあらすじもお話しようと思ってたんです。そしたらアンさんが「真犯人を知らずに、撮影に挑みたいです」とおっしゃって。アンさんの中では自分だけが知らずに、ということだったんですけど、それならキャスト全員に伏せて進めよう!と思って、この形になって、話題にもつながっていって、アンさんにも見てくれた方々にも感謝です。
だけど、真犯人の織田梨沙さん(飛鳥桃役)と関谷瑠紀さん(高校生の飛鳥桃役)、桃の過去を知る森優作さん(井出尚哉役)の3人には、真犯人とラストの展開を、はじめにお伝えしました。
――3人の方は真犯人が誰かバレないように過ごさないといけなかったということですね!
はい。キャストの皆さんには「真犯人を演じる方には、真犯人とご本人にお伝えしてます」と言っていたので、撮影の合間はキャスト陣で真犯人が誰か?をよく推理していました。だから特に織田さんは大変だったと思います。真犯人を知らない自分を撮影の合間も演じないといけないので……。でも完全に隠されていました。
Q:望野警察署では、一条健人(岡部たかし)と木崎拓斗(坪倉由幸)の優しさが垣間見られるキャラも人気でした。岡部さん・坪倉さんとの撮影はいかがでしたか?
坪倉さんには、まだ序盤の撮影の時に、お伝えしていたことがありました。第1話で天草(森永悠希)から恋愛事情を聞かれた葵が「……私はもう、そういう人生じゃないから」と答えるシーンがあります。葵の16年間の生き方がわかる、特に思い入れのあるセリフです。このセリフの通り葵は、人に愛情を与えるなんて自分はできないと思って生きている。そんな葵が最終話のそば屋のシーンで一条と再会し、香坂ら捜査第一係のメンバーと接して「自分ってこんなに愛情をもらっていたんだ」と思ってもらえるラストを迎えたいと当初から考えていました。だから坪倉さんには、そう思えるような捜査第一係のチームを作ってほしい、その役目を木崎に託しています、と伝えていました。
坪倉さんがどこまで考えてくれていたかは、わかりませんが……(笑)捜査第一係を一つにして、笑いが絶えない現場にしてくれて、撮影の合間もアンさんとよく話していました。横山さんは、バディとして隣で支え続けて、坪倉さんは捜査第一係を一つにするためにみんなの間に入ってくれました。僕の中でも木崎への愛が大きくなって、それは坪倉さんが木崎を魅力的な人間に育ててくれたからだと思います。
――岡部さんはいかがでしたか?
岡部さんは、いつも岡部さんなんです。(笑)いい感じの適当さもあって、だけど、勝負のお芝居に入ると、鳥肌が立つくらい、ひきこまれていく。それも、お芝居が大好きでドラマも舞台も大好きなんだって、岡部さんから感じるから、周りもそれに応えたいと思う。一条という人間を愛してくれたし、葵のことも『約束』の世界も愛してくれていると感じました。
カットが掛かると、監督やプロデューサー陣に向かって「いい感じ?」「できた?」「どう?」って、笑顔で無邪気に聞いてくれて、僕たちもみんなで「(両手で)マル!」って返したりして。みんなが、岡部さんを愛したくなる空気が自然とできていくんです。そんな岡部さんの人間性がそのまま一条に乗り移っていたし、キャスト・スタッフみんなが「一条ほんとに好きだな」イコール「岡部さん好きだな」って。
Q:最終回の葵が桃と対峙(たいじ)する場面は圧巻でした。
まさにオールアップの日が、最終回で葵が監禁されるシーンの撮影でした。最終話の台本をお渡しした時、織田さんに「この『約束』のラスト、織田さんに託します!すべて賭けてます!」とお伝えしました。
――ラストの織田さん…素晴らしい怪演でした
すごくプレッシャーだったと思います。だけど、織田さんは準備を重ねて、台本の意図も事前に話し合いながら、当日は台本以上のお芝居で応えてくれました。織田さんと監督とで「最後まで思い切って、振り切ったシリアルキラーを!」見せることができた、と自信を持っています。
――最終話の葵と桃の対峙で、特に意識したところは?
「飛鳥桃だけ、違う世界で生きている……理解できない……」と視聴者の皆さんに感じてもらうこと。香坂たちが助けにきて、ラストの桃が手錠をかけられるシーンでの桃の表情がたまらない。怖すぎて、監督と「桃の表情、ここまでいって大丈夫?大丈夫よね?」って、最後に確認し合ったくらい(笑)。ぜひTVerで「違う世界を生きている桃」をもう一度見てほしいです。
Q:桃をかばい続けた、井出の取り調べでの涙や回想シーンで、改めて登場人物の深さを感じました。
井出も映像研究部の面々も、高校時代と現在の大人のそれぞれを見て「ドラマ本編では描き切れない、どんな16年を生きてきたか?なんとなく視聴者のみなさんの中で想像できるようなつながり」が生まれてほしいと思っていました。
高校時代のみんなは、オーディションでお会いした後オファーしたので、見た目や映像研究部での立ち位置、人間性なども大人に寄せていました。それも第1話から入り込みやすい世界を作ることにつながったのだと思います。だけど、同級生間の関係性や5人での空気感は、監督が中心となって作りながらも、高校時代を演じる子たち、大人の方たち、それぞれが互いに見て参考にして、寄り添ってくれたのだと思います。
Q:最後に、多鹿プロデューサーが作品作りで“ここだけは譲れないこと”はありますか。
サスペンスが大好きなので、これからもサスペンスは企画し続けたいと思っています。
前作のドラマ『勝利の法廷式』だと2023年、『約束』だと2024年。その年や時代感とタイアップしているような作品を届けることは大切にしたいです。ドラマと違う話になりますが、SMAPさんの『世界に一つだけの花』って、平成を象徴した、まるで平成という時代とタイアップしたような作品だなと思っていて、今もずっと聞いています。これからの2025年、2026年がどんな年になるのか、日本でなにが起きるのか、日本のテレビドラマはどんな立ち位置で、どんな環境で見られるのか?を考えながら、企画していきたいと思っています。
ドラマ『約束 ~16年目の真実~』
第1話~第3話・最終話がTVerで配信中!
本作は、読売テレビ・日本テレビ系2024年4月期プラチナイト木曜ドラマとして放送された、予測不能×完全オリジナルの“心理サスペンス”。
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