アニメ『ザ・ファブル』「この〇〇〇、くれてやる!」小島の暴走を止めたい海老原が、明に見せた“誠意”とは…?
2024.5.30 17:45毎週土曜24時55分より日本テレビ系にて順次全国放送中のTVアニメ『ザ・ファブル』。本作は“1年間の休業生活”を命じられた最強の殺し屋・通称ファブルが、佐藤明として普通の生活を送ろうと奮闘するアクションコメディー。6月1日放送の第9話『もしかして殺し屋……』では、ついに小島の魔の手が岬へ…。執拗(しつよう)な嫌がらせが彼女を追い詰めていく中、小島を止めたい海老原は明に協力を求め、小島を始末したい砂川はプロの殺し屋を雇う。SNSでは「ここまでずっとアホみたいなギャグアニメだったのに一気にハラハラな展開になって怖い」との声も…。小島、海老原、砂川。三者それぞれの思惑が物語を加速させていく──。
(以下、アニメ最新話までのネタバレを含みます)
◆岬の異変
「佐藤くん──あのイラスト、OKでたよ〜」。掃除中の明に岬が声をかけた。以前、『オクトパス』で請け負った仕事の件だ。市が主催する動物と触れ合うイベントで配られるというチラシのデザイン。明が試しに描いた“二次元のユーモアが全開なイラスト”が評価され、無事に納品を終えたという。「そうか──これで正式に時給900円か──」。そう思わず笑みをこぼした明を、岬が食事に誘う。もともと自分が引き受けた仕事だったこともあり、明に助けられたから奢(おご)らせて欲しいと言って。
2人は、明の歓迎会でも訪れた居酒屋へ。メニューを広げた明がサンマの丸焼きに目を奪われる中、岬はやけに明の子ども時代のことを聞きたがった。物心ついた頃、山中に放置されながらナイフ1本で生還するという、まるで“ランボー”のような生活を送っていた明は、生きるためにトカゲや虫も食べていた。
「ねぇ──、森の夜ってやっぱり真っ暗なん?さびしくなかった?その──孤独感とか…恐怖とか…」。尋ねる岬に、明は答える。「さびしくなくはないけど──音楽があった──。虫や生き物の声──川の流れる音。風と木のざわめき──あれは森のジャズやな。みんな、好きに奏でる──」。時に粋な計らいをしてくれる自然を、明は気に入っていた。他にもマムシ1匹で3日は動けること、マダニと蚊は好きになれないこと、“妹”の洋子のことなど、話題は尽きない。
そんな中、明がふと「それより…」と話題を変えた。なんでも、岬の“感じ”がいつもと違う気がすると言う。図星だったのだろう。岬は明らかに表情を強張(こわば)らせた。
実は昨夜、仕事帰りの岬をあるヤクザが待ち構えていた。「いきなり初対面で申し訳ないが〜近々、デリヘルを始めることになって──…言うてる意味わかるよなァ〜」。顔の左側、顎から耳にかけて大きな傷のあるその男は、最近15年の刑期を終えたばかりの真黒(まぐろ)組組員・小島。組長どころか、兄貴分の海老原にも内緒で始めようとしている“ビジネス”に、岬を巻き込もうとしていた。
「そんな仕事やりません!」「脅迫ですか!」と強く断る岬に対し、小島は「提案や──」と至極冷静な態度を見せながら、時折ニタリと笑ってみせる。しまいには岬の家族や友達、知人への“嫌がらせ”を匂わせると、「これは提案じゃない。脅迫ねェ〜」と、連絡先を書いた紙を岬の拳へと押し込んだのだ…。
──明の読み通り、岬は大きな悩みを抱えていた。だが、彼女はそれを誰にも言えないでいる。そんな心情を汲(く)み取ったのか、明はサンマをつつく手を止めて真っ直ぐに言った。「俺で役に立つかはわからんけど──仕事を紹介してもらったり、借りがある──。力になるぞ」。…少しの驚きの後、思わず笑みをこぼす岬。その表情は少しホッとしたようにも見えたが、彼女はすぐに「変な勘繰りやめてよ〜もう──。それ言い出したら、みんなあるよ──」と言って、話題を逸らす。山や森の話をもっと聞きたいとねだるその声は、ひどく空元気に聞こえた満ちていた。
◆海老原の誠意
岬との食事を終えた後、明は市民病院へと足を運んだ。入院中の海老原から“会って話がしたい”と携帯にメッセージが届いたのだ。自身の弟分である小島が“危ない橋”を渡っているのではと危惧していた海老原は、「な──佐藤ォ──、小島が何してるか…何をしようとしてるか──…調べられんか?」と、病室のベッドに横たわったまま語りかける。一度は断った明だが、「俺に貸しを作っといて損はないぞォ〜」と笑う海老原の売り文句に渋々行動を開始する。
黒のニット帽に黒の手袋…、つま先から頭のてっぺんまで黒一色に身を包んだ明は、真黒組の組員が“倉庫”と呼ぶアパートの一室へ侵入。部屋には明以外、人の気配はない。カードサイズのマルチツールケースでライトを付けると、さっそく何冊かの風俗情報紙が目に飛び込んでくる。棚には、どこぞのデリヘル店が出しているチラシが乱雑に置かれていた。
ふと明は部屋の戸襖(とぶすま)が気になった。ここだけが、周りに比べてやたらと新しい。明はツールケースからレターオープナーを取り出すと、襖(ふすま)の真下、フローリングの一部をカリカリと削り始める。ナイフの刃先に僅かにこびりついた、赤い異物…。明はそっと鼻を近づけると、それが血痕であることを確信。現場を後にすると、さっそく海老原に連絡を入れる。
「電話やから遠回しに話すぞ。“ハコ”には入った──今、帰るとこや」。明は室内に散見されたデリヘルのチラシなどから、小島が“そっち”に手を出すつもりであろうことを報告。加えて、不自然に新品の襖やいくつか見つけた焦げ跡などから、小島が“火薬で飛ばすロケット花火”を持っている可能性を告げる。そして現場に残された血痕は、あの部屋で誰かが“火傷(やけど)”したことを意味していたことも…。
調査報告を一通り終えた明は、海老原が事態を飲み込む前に「これ以上関わってトラブルに巻き込まれたくない」と告げて電話を切った。できればこの1年、静かに暮らしたい。それが明の望みだった。だが、なんとか小島を“助けたい”と考える海老原は手術前夜にも関わらず病室を抜け出すと、組が保有する“明の自宅”へと向かう。
家のガレージにて、対峙(たいじ)する2人。海老原は「俺に手、貸してくれ。佐藤ォ」と、改めて小島の調査を依頼する。…が、明も簡単には聞き入れない。すると海老原は、愛車であるハコスカのルーフをバンっと力強くたたいた。「この車、くれてやる!おまえが別に車や金に興味ないの知ってる!でも俺がこの車、どれだけ大事にしてきたか知ってるやろ!」。プロとして自身を買ってくれている男の誠意に、明はただ真正面から向き合うのだった──。
一方、小島の周囲では、事態がすでに動き出していた…。小島によって舎弟を殺されたと確信していた組のナンバー3・砂川が、自身のしのぎを邪魔されたとして組長の浜田に“小島の始末”を進言。だが、確証もないのに“眠たい話”をわざわざ持ってくるなと聞き入れてもらえず、砂川は独断、プロの殺し屋を雇うことを決める。
深夜の河川敷、砂川は側近の舎弟とともに一台の車を迎え入れた。助手席から出てきた長身の男は、タバコを取り出すなり「ぶっそうな世の中だね〜。ま〜だから何でも屋のウチも食ってけるワケやがァ──」と笑う。男は単なる交渉人。肝心の“プロ”は運転席に座ったまま、ハンドルに体重を預けている。迷彩柄のパーカ。被ったフードの隙間からのぞく冷徹な視線が、じっとこちらをうかがっていた…。