演出・吉田鋼太郎、主演・柿澤勇人 舞台『ハムレット』開幕「新しく吉田鋼太郎さんが“ハムレット”に命を吹き込んでくれた」

2024.5.8 18:15

昨日初日を迎えた、彩の国シェイクスピア・シリーズ 2nd Vol.1『ハムレット』の取材会とゲネプロが5月6日(月)に行われた。取材会には、演出・上演台本を担当する吉田鋼太郎、ハムレット役の柿澤勇人が登場。新シリーズへの思いや注目のシーンを明かした。

『彩の国シェイクスピア・シリーズ』は、蜷川幸雄さんがシェイクスピアの全37戯曲の上演を目指し、1998年に『ロミオとジュリエット』でスタート。蜷川さんが2016年に亡くなった後、芸術監督のバトンを引き継いだ吉田鋼太郎が残り5作を担当し、2023年2月に『ジョン王』をもって25年のシリーズを完結させた。ファン、関係者から再演、新シリーズを求める声が相次ぎ、2ndが始動。本作で吉田は、演出・上演台本に加え、ハムレットの叔父クローディアス役も演じる。ハムレット役は吉田からの信頼も厚く、これまでも様々な大役に挑んできた柿澤勇人が演じる。

【取材会】柿澤勇人「新しく鋼太郎さんが『ハムレット』に命を吹き込んでくれた」

この日、取材会が行われ、吉田鋼太郎と柿澤勇人が舞台の衣装を着用し登場した。

――いよいよ初日を迎えますが、今のお気持ちは?

吉田が「ドキドキと、ワクワクです」と答えると、柿澤が「ワクワクとドキドキです(笑)」と似せて答え、笑顔を見せた。

――新しく始動するシリーズ『彩の国シェイクスピア・シリーズ 2nd』への思い

本作で演出・上演台本を担当する吉田は「1から、37作品、この先を考えると長いなぁと。これから20年、30年かけてやっていく、その長さ、重さっていうのはものすごく感じています。あと20年、30年とやっていくと、僕が95歳くらいになるかもしれない。その時にはひょっとしたらいないかもしれないし、誰かにまたバトンを渡して続けているだろうし、そうなって欲しいと思います」とシリーズへの思いを語った。さらに「今スタートに立って、重大な責任、重圧を感じております。もちろん、いい責任と重圧だとは思うんですけども(笑)今まで感じたことがないワクワク感があります」と胸の内を明かした。

柿澤は「この劇場に初めてお世話になったのは、蜷川さんの作品『海辺のカフカ』で24歳~25歳の頃です。いわゆる有名な千本ノック…嫌な思い出しかないですけど(笑)」と苦笑い。その理由は「すごい大変で、稽古中、何やってもダメ出し。“へたくそ”、“帰れ”、“やめちまえ”、“才能なし”みたいな罵詈(ばり)雑言を受けて、40度の熱が出まして…だから嫌な思い出と言ってしまいましたが…」と有名な演出家である蜷川幸雄さんとのエピソードを告白。

本作については「今回のハムレットもものすごく大変な役で、稽古も過酷で同じように高熱が出た。体も痛いし心も壊れているし、ボロボロ…自分で言うのもなんですけど満身創痍(そうい)。それくらい追い込まないと…自然と追い込まれたんですけど、元気いっぱいひょうひょうとやる役ではないんだなと改めて思いました」と語り、「新しく鋼太郎さんが『ハムレット』に命を吹き込んでくれたので、やりきって最高の時間にしたいな」と笑顔で明かした。

――本作の注目シーンは?

吉田は「ハムレットが旅役者に触発されて、“僕は何もしてないじゃないか!”と、もう1回“頑張って復讐(ふくしゅう)をするぞ”と誓いなおすところ。そこの柿澤君はすごくささりますね、推しのシーン」と柿澤の演技を称賛。

柿澤は「最後の言葉…小田島雄志さんの翻訳にもありますけど、“あとは、沈黙”といって、天に召されるんですけど…」と注目のシーンを明かした。「早くそれを言いたいなと(笑)上演時間が3時間半とすると、3時間ずっとしゃべってるんです。しゃべりすぎだろってくらい。途中心が折れそうになるくらい(笑)やっとその沈黙で終わるので、早くその時がこないかなってずっと思ってます(笑)」と膨大な台詞(せりふ)の量に苦笑いを見せた。

――最後に観劇を楽しみにしている方々へメッセージ

柿澤 いよいよ始まります。僕自身、こんなに過酷な役、濃密で深い稽古は役者人生で本当に初めてでした。まだまだ課題がいっぱいありますし、千秋楽を迎えるまでにもいろんな発見があると思います。少しでもシェイクスピアが書いたハムレットはなんなのか、世界中の役者たちがやりたいと言うのはなぜなのか、正直稽古の中ではまだ見つかっていません。本番をやって見つかるかもしれないし、わからないままかもしれないし、全く未知です。それくらい大変な役であり作品です。でもこのカンパニーは芝居バカが集まって日々稽古してきたので、みんなで手をつないで最後まで1人もかけることなく、ゴールテープを切りたいです。

吉田 ハムレットが最後に亡くなるまで、壮大な心の旅をしている。その工程を辿(たど)っていけたらと思います。皆さんにも「見てやろう」という意気込み、気概を持って劇場に足を運んでもらいたい。お客さんと勝負と言ったらおかしいですけど、そういう緊張感を持ちながら、一緒にこの空間にいられたらいいなと思っています。その空気を体験しに劇場まで来てください。

【ゲネプロ開催】
この日は、初日の前日。ゲネプロが行われ、クローディアス役の吉田、ハムレット役の柿澤をはじめ、ハムレットの恋人・オフィーリア役の北香那、ハムレットの友人・ホレーシオ役の白州迅、ハムレットの母・ガートルード役の高橋ひとみらが出演。愛や裏切り、憎しみ、運命を見事に演じあげ、ゲネプロとは思えない仕上がりを見せた。本日幕を開けた舞台『ハムレット』は、『彩の国さいたま芸術劇場 大ホール』にて5月26日(日)まで開催される。※宮城、愛知、福岡、大阪公演あり

クローディアス(吉田鋼太郎)、ハムレットの母・ガートルード(高橋ひとみ)
ハムレット(柿澤勇人)
ハムレットの恋人・オフィーリア(北香那)
ハムレットの前に現れたのは父の亡霊か…
オフィーリアの父・ポローニアス(正名僕蔵)とハムレット
ハムレット
ハムレットとオフィーリア

彩の国シェイクスピア・シリーズ 2nd Vol.1『ハムレット』
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
2024年5月7日(火)~26日(日)
宮城、愛知、福岡、大阪公演あり

写真:©entax

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