韓国の美容室でスカウト 異色経歴の日本人アーティスト・NOAの魅力

2022.5.20 12:00

タイのヒットチャートで1位を獲得するなど、東南アジアで人気を誇る日本人アーティストNOAさん。世界で活躍する韓国のグループBIGBANGに憧れて小学生の頃に韓国に渡り、現地の大手事務所の練習生を経て、退所し帰国後日本でデビューしました。
3ヶ国語を操り、グローバルな注目を集めるNOAさんの今までの歩みや、TVCMで話題の新曲『It Ain’t Over』について語ってもらいました。

■BIGBANGに憧れて小学6年生で韓国へ

――小学生のときに韓国の美容院でスカウトされたのがこの世界に入ったきっかけということですが、当時韓国に住んでいたのですか?

韓国で所属していた芸能事務所・YGでの練習生時代のNOAさん

元々、BIGBANGに憧れて韓国の芸能界を目指そうと、日本から母親と一緒に移住していたんです。それが小学6年生の1月ですね。移住してから現地のダンススクールに通って実力をつけてからオーディションを受けようと考えていました。

――そして美容院でスカウトされたんですね?

韓国で所属していた芸能事務所・YGでの練習生時代のNOAさん

はい。母親が友人から「BIGBANGが所属するYGエンターテインメントの人が通っている美容院がある」と聞いて、ファンが聖地巡りするような気持ちで行ったんです。そうしたら担当してくださったヘアメイクさんから「芸能には興味ないの?」というお話をいただいて、僕が「実はBIGBANGに憧れていてYGに入りたいんです」と答えたら、その場で事務所の偉い方に電話をしてくれたんです。そこからオーディションを経てYGに入ることができました。日本人というより外国人で初の練習生だったそうです。

――その時、韓国語はある程度話せたのですか? 

いや、全然。あいさつと自己紹介くらいしか話せなかったので、美容院でも少し英語を交えながら翻訳機を使って会話していました。

韓国で所属していた芸能事務所・YGでの練習生時代のNOAさん

――では言葉の壁はもちろん、ダンスや作曲など色々苦労したのでは?

韓国語は慣れるまで2~3年かかりました。最初のうちは翻訳機を使ったり、英語が話せる先輩方……具体的にはiKON(アイコン)やWINNER(ウィナー)のメンバーとは英語で会話していました。そのうち、みんなで何かをつくり上げる作業が楽しくなって、休みの日も事務所へ行って作業するほど居心地が良くなりました。練習やレッスンがきつくても乗り越えられたのは、周りの仲間の存在が大きいですね。

■帰国のきっかけはONE OK ROCK!  本格デビュー前から東南アジアで大人気

――では日本に戻って来ようと思われたのはなぜですか?

K-POPのミュージシャンはグループ活動が中心なのですが、1人で活動している海外のアーティストさんたちの存在を知って新たな憧れを抱きました。もちろん、練習生の間に何度もデビュー寸前までいったけどできなかった、という繰り返しがあったので、その中でどうしても燃え尽きてしまう部分もあったんだと思います。でも好きなものは続けたいし、どうしよう……となったときに、アーティストとしてソロで活動する選択肢が出てきました。そんな時期に、ソウルでONE OK ROCKさんのコンサートを拝見して、“日本のミュージシャンでも海外を舞台に活躍している方がいるんだ!”と衝撃を受けました。そこから、自分も日本人として日本から何かを発信していきたい、というのが大きな目標になりました。

――日本に戻ってからどうやってアーティスト活動をスタートさせたのですか?

帰国後はまずオーディションを探して、現在の事務所のオーディションを受けて所属させてもらえることになりました。その後、すぐにInstagramを開設してカバー動画を上げるなど発信していきました。YGの練習生時代からのファンがいてくれたので、その方たちに向けて何か発信したいという気持ちがずっとあったんです。

――2020年にリリースされた『TAXI feat. Tofubeats』がタイのSpotifyバイラル・チャートで1位を獲得するなど、本格デビュー前から東南アジアでも大人気だったそうですね。それは意図した広がりでしたか?

いや、意外でしたね。K-POPが東南アジアで人気というのは聞いていたんですが、まさか僕のファンの方がそんなにいてくださるというのは知らず、ものすごくびっくりしました。でも何よりも嬉しかったです。(コロナの影響で)リアルに会えないので、世界各地のファンの方とつながりたくてインスタライブを週1回ペースで実施しています。ファンの方からは、ものすごくいろいろしてもらっているんです。例えば誕生日に、トゥクトゥク(タイの三輪タクシー)に僕の看板を何枚も手づくりしてつけていただいたり、本当に応援がありがたくて……少しでも恩返しができたらと思っています。

■新曲は自身で作詞・作曲・プロデュース

――新曲『It Ain’t Over』は、TVCMのためにご自身で作詞作曲したそうですね。

お話をいただいた時は、自分自身よく見ていたCMだったので嬉しかったですね。ただ”即、戦力。”というテーマは、今まで自分が書いてきていないものだったので、楽しみな反面、きちんと期待にお応えできるかな、という不安もありました。自分の中でも新しい挑戦でしたが、いつもとは違うテイストが出せたと思います。

――歌詞に出てくる『It ain’t over till it’s over』という言葉は、勝負事やスポーツなどで「(まだ)終わってみないと結果はわからない」といった意味のようですね。

『It ain’t over.』というフレーズは、最初にぱっと思いついたのがぴったりきたので、そのまま最後まで使うことにしました。強い意志や何かに立ち向かっていく感じが、ビートと言葉の響きで表現できていると思ったので、最終的にタイトルにもしてサビで繰り返すようにしました。

――作詞作曲だけではなく、ミュージックビデオもご自身の提案が反映されているとか?

はい、そうですね。ミュージックビデオや衣装に関しても自分で意見を出させてもらいました。今回、曲やビジュアル、すべてにおいて自分の新たな魅力を見せたいという思いがあったので、それが伝わる映像になっているのではないかと思います。撮影しながらすごく楽しかったですし、何かをつくり上げるクリエイティブな作業が大好きなので、何でもできるようになりたいです。

――今後の目標や、どんなアーティストになりたいというのはありますか?

帰国のきっかけとなった”日本から世界に発信していきたい”というのが常に大きな目標としてあるので、状況が落ち着いたら実際に海外のファンの方に会いに行って、アジアツアー、ワールドツアーを実施したいです。一つの国に収まらず、どんどんいろいろな国のアーティストさんとコラボしたり、いろいろな音楽を発信し続けていきたいと思っています。

【NOA Profile】
2000.3.13 東京生まれ。作曲、作詞、ダンスの振付まで手掛ける、トリリンガル(日本語・英語・韓国語)ソロアーティスト。
12歳の時、滞在先の韓国の美容院でスカウトされ、大手事務所YGエンターテインメント初の日本人練習生として韓国で6年間生活し、2018年に帰国。 アミューズに所属する。
2020年1月にデビューし、同年6月リリースの2nd デジタル・シングル『TAXI feat. tofubeats』が、タイのSpotifyバイラル・チャートで1位を獲得。2021年にユニバーサルミュージックからメジャーデビュー。3か月連続デジタル・シングルが各国でチャート入りし、日本人でありながらグローバルな注目を集める。2022年10月スタート・TBS火曜よる10時放送のドラマ『君の花になる』に「久留島巧」役で出演予定。

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