アニメ『葬送のフリーレン』“シュタフェル”の華麗な1分ダンスシーンにファン歓喜「圧巻で気づいたら時間過ぎてた」

2023.12.20 06:30

12月15日に放送されたアニメ『葬送のフリーレン』第15話では僧侶ザインの戦闘シーンが初めて描かれた一方で、旅の道中で出会った貴族・オルデン卿からの頼みを受けたシュタルクとフェルンが“社交会”に参加することに。原作漫画で少しだけしか描かれなかった2人の“ダンスシーン”が大幅に追加されており、くっつきそうでくっつかない“シュタフェル”の様子にヤキモキしているファンからは「もう付き合っちゃえよ」「さっさと結婚しろ!」などと愛にあふれたツッコミが飛びかった。

(以下、アニメ最新話までのネタバレを含みます)

◆仮初めの親子

勇者ヒンメルの死去から29年。“一級魔法使い”の資格を取得するため魔法都市オイサーストを目指すフリーレン一行は、巨大な城壁に囲まれた要塞都市フォーリヒへ到着。目的地までの道のりは、ここでようやく半分といったところだった。「本当に長い道のりですね」。感慨にふけるフェルンをよそに、街で物資を補充しようとフリーレンが歩き出す。するとそこへ、背後から聞きなじみのない声がかかった。

「おい、そこのお前」。振り向くとそこには1台の馬車と、こちらへ近づいてくる身なりの整った男が2人。身につけた装飾品や立ち振る舞いから、どこかの貴族であることだけは分かった。男たちはなぜかシュタルクを挟み込むように立ち止まると、サワサワとその体を“物色”し始める。腕周りや腰、顔、風体……。シュタルクは予想外の出来事にただ困惑することしかできなかった。そのうち、より身分が高そうな眼帯の男が言った。「いい体だ。容姿も悪くない。お前、私の屋敷に来い」。強引な物言いと訳の分からない状況に流されるまま、一行は眼帯の男、オルデン卿の屋敷へと案内されるのだった。

応接間へ通されるや否や、オルデン卿はさっそくシュタルクへ問いかける。「名はなんという?」。やや高圧的ともとれるその姿に、シュタルクはすっかり萎縮気味だ。少し強引ではないかと諭すフリーレンにも、「私は今、シュタルクと話している」と突き返す。いったいなぜシュタルクにこだわるのか?その疑問が解決せぬうちに、オルデン卿は足を組んで言った。「依頼がある。金なら出す」。あまりに唐突な、そして失礼な物言い。さっさと立ち去ろうとするフリーレンだったが、ふとフェルンの手のひらに乗せられた6枚の銅貨に目がいく。ピンとこないフリーレンにザインがつぶやいた。「手持ちの路銀だってさ」。長旅で資金が尽きかけていた一行は結局、素直にオルデン卿の話を聞くことにした。

眼帯の貴族オルデン卿(画像左) 実はオルデン家は北側諸国の三大騎士に数えられるほどの優秀な家系だ

1階と2階をつなぐ大きなホール階段の途中に、これまた大きな肖像画が飾られていた。絵を見上げてオルデン卿がいう。「長男のヴィルト。私の後継ぎにして、この街の英雄だ」。赤みを帯びた髪に、キリッとしながらも優しさをたたえた瞳。その姿はまるで……。「シュタルク様に似ていますね」。一目でそう感じたフェルンに、「うり二つだ」とオルデン卿もうなずく。前髪を上げているせいか、シュタルクの兄・シュトルツにもよく似ていた。話を聞くと、オルデン卿の家系は元々、シュタルクの出身である中央諸国クレ地方の「戦士の村」の一族だという。

自身の長男とうり二つなシュタルクに、オルデン卿は改めて今回の依頼を話す。実はひと月前に起こった魔族との戦いで長男のヴィルトは亡くなっていた。敵の将軍と相打ちだったという。大規模な乱戦だったため、ヴィルトがすでにこの世にいないことを知っているのは、オルデン卿と一部の腹心だけ。彼の依頼とは、消耗した兵力を立て直すまでの間、シュタルクにヴィルトのフリをしてほしいというものだった。

報酬として提示された金額は、シュトラール金貨10枚。フェルンいわく「1年は三食おやつ付きで生活できますよ」とのこと。その大盤振る舞いにフリーレンは「魔導書も付けて」と前のめり。ひとり肩を落とすシュタルクに、「路銀のためです」とフェルンも追い討ちをかける。依頼の最終目標は三か月後、この地方の有力者が集まる社交会で“ヴィルト”の健在を示すこと。かくしてシュタルクは、オルデン卿の側近から貴族としての立ち振る舞い、そして作法の全てをたたき込まれることとなった。

シュタルクが“作法”を身につけている間、フリーレンたちはのんびりと過ごしていた

◆ただ一つの違い

馬術、教養、社交会で踊るワルツ……。早朝から繰り返される貴族としての生活に、シュタルクはなんとか耐えていた。“作法の特訓”が始まってしばらく経ったある日、屋敷の廊下をフラフラと歩くシュタルクにフェルンが進捗(しんちょく)を尋ねる。シュタルクは体を揺らしながら「地獄だぜ……」と一言。その顔からは明らかに生気が消えていた。

ところが直後、そのまま片膝をついたシュタルクは不意にフェルンの手をとって、彼女の目を見つめた……。つかの間、時が止まる。「どうかな?」。何事もなかったように尋ねるシュタルク。そう、彼はただワルツに誘う練習をしていた。気づいたフェルンから「……似合ってない」と返されたシュタルクは、再びフラフラと向こうへ歩き出す。その背中を追っていたフェルンの目線は、気づくと、シュタルクが触れた彼女の左手へとうつっていた。

シュタルクが外の空気を吸おうとホール階段を降りると、そこにはオルデン卿の姿があった。息子の肖像画をひとり見上げている……。「オルデン卿」と声をかけると、「父上と呼べといつも言っているだろう。どこに人の目があるか分からん」と、お叱りを受ける。仮初めの親子に徹するオルデン卿に、シュタルクは思うところがあった。息子を亡くしたばかりなのに少し冷たすぎるのではないか。ヴィルトを悼む時間をちゃんと過ごすべきではないのか。そんなモヤモヤをシュタルクはついに口にする。するとオルデン卿は「私は息子の遺言に従っているだけだ」と厳しい表情のまま答える。だが刹那、確かにあまり気分のいいものではないなと、寂しそうに笑うのだった。不器用な人だと、シュタルクは思った。

オルデン卿と2人、庭へ出る。そこではヴィルトの弟・ムートが木剣を振っていた。「ムート。もっと背筋を伸ばせ」「はい、父上」。言葉だけの親子のやりとり。懸命に汗を流す次男を尻目に、オルデン卿はその場を離れながらつぶやく。「後継ぎになるというのに、なかなか上達せん」。……どこか既視感のある風景に、シュタルクは自身の過去を思い出す。村の英雄であった兄と比べられ、父親から“失敗作”の烙印(らくいん)を押された幼き日。優秀な兄、厳しい父、出来の悪い弟。全てが重なって見えた。やはりこの人も……。そう思った矢先、オルデン卿はムートのことを「努力家だ」と話した。積み上げてきたものは決して裏切らない。だからいつか自分よりも強い騎士になるだろうと。ホッとしてシュタルクは「それ、ムートに言ってやった方がいいぜ」と自身の経験から言葉をかける。すると彼は「いつも言っている。だから調子に乗ってなかなか上達せん」と、小さく肩を落とすのだった。

厳しい戦士の村で育ったシュタルクにも唯一優しい兄がいた(画像は第12話より引用)

◆その手に残るもの

依頼を受けて三か月。ついに社交会の日がやってきた。豪華な食事とオーケストラによる生演奏。多くの貴族たちが会話に花を咲かせる中、正装に身を包んだフェルンが会場の隅で肩を落としていた。「ここ1か月、地獄でした……」。どうやらシュタルクの“お相手”として、フェルンもまた厳しいレッスンを受けていたようだ。「路銀のためだろ」。以前、シュタルクに対して放った自らの言葉がブーメランのように飛んでくる。フェルンはすっかり反省の色に染まっていた。

シュタルクは、落ち込むフェルンの前にスッとひざまずく。あの日のようにフェルンの手を優しくとると、せっかく練習したのだからとワルツに誘う。その身のこなしは、三か月前とは別人のようだ。「本当に似合っていませんね」。フェルンは笑って、シュタルクの手に身を任せた。

踊り始めてすぐ、シュタルクはフェルンの不安気な表情に気がついた。緊張で頬はこわばり、目線は足元のステップに必死だ。だが、積み重ねてきたものは決して裏切らない。シュタルクは自信を持ってダンスをリードした。その凛(りん)とした表情に、フェルンも次第に緊張をほどいていく。シュタルクに身を委ね、大きく腰をそって手を広げる。シュタルクの手がフェルンの体をグッと引き寄せる。いつしか2人は互いにほほ笑みあっていた。

社交会が無事に終わり、ヴィルトのフリをするという依頼は終了した。三か月をともに過ごした仮初めの親子は、月明かりが差し込む薄暗い部屋で静かに向き合っていた。「お前さえ良ければ……」。オルデン卿が切り出すと、シュタルクは「俺はあんたの息子の代わりじゃないぜ」とその言葉を遮った。「そうだな。私もお前の父親の代わりではない」。笑って返すオルデン卿の顔には、どこか寂しさが隠れていた。

少し間をおいて、オルデン卿が本音をこぼす。「息子とはケンカ別れだった。些細(ささい)なことでの言い争いだ。『お前の顔なんて二度と見たくない』と、そう言ってしまった。心にもない言葉だった」。シュタルクを見つけた時、彼は『奇跡だ』と思ったという。息子の遺言のため、街を守るためにオルデン卿は行動してきたが、その実は、息子にもう一度会って謝りたかっただけなのかもしれない。

そんなオルデン卿の思いを受け取ったシュタルクは、「なおさらここには残れない」と返す。「俺も心にもない言葉を言っちまったんだ。育ての親にさ。だから旅の土産話をたっぷりと持って帰らないとダメなんだ」。シュタルクはそっとほほ笑んで、まぶたを閉じる。そこには師アイゼンの姿が浮かんでいた。その顔を見てオルデン卿は、「そうか」と、ただ笑うのだった。

翌日、報酬の魔導書を熱心に選ぶフリーレンをよそに、シュタルクは窓の向こうに目をやる。庭ではムートが相変わらず懸命に剣を振っている。そして、その隣には剣を教えるオルデン卿の姿があった。「兵力の立て直しにはまだまだかかりそうだ」と話すザインに、シュタルクは笑って答える。「少なくとも、後継ぎには困らなそうだ」

アイゼン(画像右)も過去、シュタルクとのケンカ別れを悔いてると吐露していた(画像は第1話より引用)

◆製作陣のこだわりも詰まったダンスシーンに反響

今回の放送を受け、SNSで最も盛り上がりを見せたのが社交会でのダンスシーン。原作ではわずか2コマというさりげないシーンだったが、今話の“アニオリ”として約1分、力の入った映像に仕上げられていた。本作のアニメーションを手がけるマッドハウスの公式Xなどによると、CGなどは使っておらず全てアニメーターの手描きによるものだという。

“シュタフェル”の華麗なワルツを見た視聴者からは、「ダンスシーン完璧すぎる」「フェルンの表情から緊張が消える演出に拍手」「圧巻で気づいたら時間過ぎてた」など称賛の声が多数。さらにXでは「シュタフェル」がトレンド入り。くっつきそうでくっつかない、2人のじれったい関係に「もう付き合っちゃえよ」「さっさと結婚しろ!」と急かすファンも。今後の展開では2人の関係がどう変わっていくのかにも注目したい。

次回『葬送のフリーレン』第16話「長寿友達」は12月22日(金)、「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」(全国 30 局ネット)にて放送予定。

©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

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