若き天才たちと語らう成田悠輔 「どのタイミングで競争から降りて、自分の進む道を進むかっていうことが大事だ」
2023.12.13 17:30“未来の日本を作る変革者=PLAYERS”と目されたゲストがスタジオに招かれ、番組MCの経済学者・成田悠輔に質問攻めにされるトーク番組『夜明け前のPLAYERS』。番組初ロケとなった第10夜で成田は、“未来の日本を作る変革者になるかもしれない若者たち”が暮らす『SHIMOKITA COLLEGE』(東京・下北沢)にいた。
SHIMOKITA COLLEGEは寮なのだが、学校や組織には紐づいていない。寮生は別々の学校や会社に通いつつ、生活の時間を、国籍も年齢も所属も違う仲間と共に過ごす。“違う”ということから互いが自然に学び合い刺激し合い、未来のリーダーが育つというコンセプトだ。そのため入寮審査で問われるのは、どんな学びや経験を持ち、何に関心を持って何をしているかということ。結果、志の高いエリートや天才といわれる若者が集まっている。
■数学の世界に入ったきっかけを巡り 19歳の天才を質問攻め
住宅街に建つSHIMOKITA COLLEGEは5階建てとはいえ周囲に比べるとひときわ高い。屋上に立った成田の背後には、電車で10分程度離れた渋谷や新宿のネオンを間近に感じつつ深呼吸できる、大きな空が広がっていた。
「将棋崩しをしていました」というグループが成田を囲んだ。一人は1週間ほど前に入寮した大学生、桐生有喜さん。孫正義育英財団生でもあり、中学2年生から19歳の現在まで数学を研究し続けている。
孫正義育英財団は、高い志と異能を持つ若者(応募時25歳以下)を財団生とし、未来創成に資するよう支援を行っている。SHIMOKITA COLLEGEは、海外などに住む財団生が日本に来た際に宿泊できる場としても機能している。
メルセンヌ数という特殊な数字と素数との関わりに興味を持つ桐生さん。その世界に足を踏み入れたきっかけをどうしても知りたい成田。研究内容や、研究によって解きたい問題などさまざま角度から質問を投げかける成田に対して桐生さんは「きっかけの記憶がない。僕の人生最大の謎です」と言うばかりだ。
それでも食い下がった成田が「単純に、数学そのものと戯れるのが好き?」と問うたことで、桐生さんの本質が見えてくる。「与えられた問題を解くと言うよりは、自分で問題を見つけ、自分で答えを探しながらまた問題を見つけ、また解決してっていうのを繰り返すことのほうが圧倒的に好きな人です」との答えを得て、ようやく成田の質問攻めが終わった。
後に成田に対する感想を聞かれた桐生さんは「造詣の深い方。1対1で話をしたら話し飽きることはないという印象」と話すのだが、何にしてもこの2人の長い会話は専門性が高すぎた。場を囲む人たちは天才同士の話に“聞き入るモード”に入るしかなかったようだ。
■SHIMOKITA COLLEGEの多様性が 「自分の進む道を進むこと」について成田を語らせた
3日前に入寮したというベイツ大学(アメリカ)の学生、柳咲光さんは日系アメリカ人だ。休学を機に、住んだことのない日本に来たのだとか。母親との会話の半分は日本語だと言う柳さんの日本語は流暢(りゅうちょう)だ。「敬語があまり上手じゃないんで」という柳さんに「僕も上手じゃないんで」と成田も返す。
21歳、寮生の中では中ほどの年齢にあたる柳さんは、年上の、キラキラした社会人の寮生を見て「どこから自分のやりたいことを始めたのだろうと学びたくなる」と言う。一方ですごいことをしている年下の寮生たちを見て焦るのだとか。しかしその焦りは「どう自分らしい道を見つけられるのかなって考えさせられる」きっかけになるのだとSHIMOKITA COLLEGEの良さを語った。
成田も同意だ。「同じような領域で同じような世代の人ばかりいると、みんなが同じ方向を向いているような錯覚が生まれちゃう」とし「(違う学びや分野の人の集まりは)どっちが強いとか、いいとか、悪いとか考えなくてよくなる」と競争社会に対する見方を話し始める。
「例えばスタートアップで上場という節目を作って、何かが完結するかのように語られるけれど、実際には何も完結しない。別の、ちょっと違った競争が続くだけなので、どのタイミングで競争からいい意味で降りて、自分の進む道を進むかっていうことが大事だと思う」と語る成田の言葉に、寮生たちは聞き入っていた。
ロケを終えた成田は「疲れました」と一言。「大御所の方と話す時は、僕が若造なのでエネルギーを与える側なんですが、今日は僕の半分くらいの年齢のみなさんと話して、自分の老人っぷりをまざまざと見せつけられ大変疲弊しました」
それでも「未来は明るいなと思った」と同時に、「(番組名の)夜明け感が初めて出た回だったかな」と満足そうだ。今後も、聞いたことのないような場所や人を時には紹介したいとの意欲も見せた。
下北沢ロケの様子のほか『夜明け前のPLAYERS』の全話は、公式HPでノーカット版が、公式YouTubeでディレクターズカット版が配信されている。
「夜明け前のPLAYERS」
公式HP:PLAY VIDEO STORES
公式YouTubeはこちら