成田悠輔　「こういう人になりたいとか、なくてもいいんじゃないかな」と桃を食べながら悩める学生を困らせる

2023.12.13 16:30

番組MCの経済学者・成田悠輔が気になることをゲストにぶつけるトーク番組『夜明け前のPLAYERS』。通常は“未来の日本を作る変革者＝PLAYERS”をスタジオに招くのだが、第10夜で成田は、東京・下北沢に2020年に完成した日本初のレジデンシャル・カレッジ、『SHIMOKITA COLLEGE（シモキタカレッジ）』に向かった。

SHIMOKITA COLLEGEは、学校や組織に紐づかない寮として約100名の学生や社会人が生活している。年齢も、所属する組織や学ぶ分野も違うからこそ、共に暮らすことで学びを得ることができるというコンセプトの元に集う若者たちは、意欲も意識も高い。夜な夜な寮生たちが交わす熱い議論にこの日、ふらっと訪問した成田も参戦することになった。

■大学教員になったのは「好きな時に寝て起きて、好きな時間にふらふらしていたい」から？！

SHIMOKITA COLLEGEの広い共有スペースでは、さまざまなスタイルでくつろぐ何組ものグループがいた。ふるさと納税の返礼品だという福島県川中島の桃を「食べます？」と差し出され、成田は誘われるがまま2人組のテーブルに歩み寄った。

一人はベンチャー企業に勤める橘菫さん、もう一人は大学でリベラルアーツを専攻する水戸部友治さん。「見た目だけで、働いているか学生かを見分けるのは無理ですね」という成田の言葉から2人は、この日初めて11歳違いであることを知る。「ここにいると、みんな友だちみたいになっちゃうんです」と橘さん。

「もう一ついいですか」と桃に手を伸ばした成田の目に、水戸部さんのPC画面が留まった。「桃食べながらする話の議事録をとっているんですか？」

SHIMOKITA COLLEGEには、委員会や部活動、個人プロジェクトといった寮生主体の活動があり、カレッジの全体予算から期ごとに活動資金が分配される。分配を担うのはSHIMOKITA COLLEGEの大蔵省のような委員会。所属する2人は、下期の配分基準や付与方式の検討を、桃をほおばりながら行っていたのだ。

そんな“大蔵省”の委員長を務める水戸部さんには受験に対する悩みがあるようだ。「どういうモチベーションで（大学院を）受験したんですか？」と成田に声を掛けたことから、成田の大学院進学は「働きたくない以外にモチベーションがなくて」というモラトリアムだったことが明かされる。

さらに大学教員という選択も「好きな時に寝て起きて、好きな時間にふらふらしていたいので、要は勤務時間や上司などがいない環境が大事でそれ以外はどうでも良かった」と話す成田に、水戸部さんは少し困惑顔だった。

だが成田の話には続きがあった。「だから、はっきりした“こういう人になりたい”ということがなくてもいいんじゃないかな。どちらかと言うと“こういうことはやりたくない”とか、“あの人みたいにだけはなりたくない”というのも大事じゃないかな」と悩める若者にとって金言のような言葉で結んだ。

■「絶対に放送しないでください」　日本の大学教育の危機をエグる

さらに成田は、施設を案内してくれていたSHIMOKITA COLLEGEの創設者、小林亮介さん（HLAB 共同創業者）を「はっきりした目標があって（今の生き方に）たどり着いたんですか」と巻き込んだ。

首を横にふりつつ小林さんは、大学の教員だった親を通して感じた大学運営に対する疑問を思い出す。「素人なのに大学を作っていることに対して、才能の無駄遣いだなって思っていた」。そこで成田がつっこむ。「じゃあ、大学の運営を経営や運営のプロに委ねられるようにするためにはどうしたらいいんですかね」

起業以来、先進的な寮という観点から日本の教育を見てきた小林さんと成田の話は、大学が学生にとって有益な大学運営をするためにどうやって運営資金を集めればよいかという話に至る。文部科学省と大学の関係、制度などをドラスティックに変えなければならないとエッジの効いた話まで飛び出した。

「今のところ、絶対に放送してください」という成田に対して「絶対にしないでください（笑）。話しながら言葉を選んじゃった」という小林さん。しかし、大学が学生に使えるお金が、日本では多い大学で学生一人あたり200万円ほど、対してハーバード大学やイェール大学、スタンフォード大学といった世界の大学では4,500万円ほどと大きな差があることを示した。

「（日本の大学は）長期的戦略的に収入をどこから得るのがいいのかって考えて、断定した経営ができないと（アメリカとの）差は開く一方だと思います」と小林さん。日本の大学教育への危機感、そんな超オタクな話も含めてSHIMOKITA COLLEGEでの成田の夜は続く。