SUGAが自身のトラウマと向き合い昇華していく半生を独自の世界観で展開！　ラッパーSUGAたる存在感を圧倒的に魅せたステージをレポート③

韓国の7人組ボーイズグループBTSのメンバーSUGAの自身のソロ活動で初となるワールドツアー「SUGA | Agust D TOUR D-DAY 」の日本公演が、神奈川・横浜 ぴあアリーナMMにて6月2日、3日、4日の3日間に渡り開催された。entaxでは日本公演最終日である３日目の様子をフルレポートする。

速報はこちら①から。フルレポート前半はこちら②から。

10曲を終え、後半がスタート。BTSのラップラインの曲も

不気味な装束の集団が奥から登場し近づいてきたかと思うと、その中から白い衣装に身を包んだSUGAが登場。ダンサーからのスマホのフラッシュを向けられる中、歌い出したのは『Interlude : Shadow』。無数のカメラのシャッター音で終わる様子は特に印象的だ。続いて、銃口の画が映し出されて始まったのは『BTS Cypher Pt.3: Killer（feat. Supreme Boi）』。BTSメンバーJ-HOPEやRMが歌う声も会場に響き、昨年開催された釜山ライブでのラップライン3人が繰り広げた記憶に新しいシーンを思い出し、特別な思いで見守るファンも多い様子。「I love. I love. I love myself」と会場を誘うように始まった『BTS Cypher 4』。舌をぺろりと出すと大きく体を揺らして会場をあおり、右手に取った水のボトルを高く頭の上にあげたかと思うと顔にかける場面も。水のしたたるSUGAが、濡れた髪をかき上げると『UGH!』が始まった。SUGAが歌うと会場全体が「OK！OK！」と反応する一体感は圧倒的だ。『DDAENG』ではまたステージの一部が吊り上げられていき、続いて『HUH?!（feat.j-hope）』を歌い上げた。

会場が一瞬「？」になるも、SUGAの「ARMYしか勝たん！」が最高に甘すぎた

Supremeの白いグローブを外しながら日本語でコメントを始めたSUGA。「メンバーがいなくて一人で歌うとすごく寂しいですね。でもみなさんが一緒に歌ってくれて心強かったです。みなさん一緒にいきましょう」と誘うように「I love！ I love！ I love myself !～」　と、『BTS Cypher 4』の一節をアカペラでリードし、会場との壮大なコラボレーションが起こった。アミボムで埋め尽くされた会場を見ながら胸がいっぱいになった様子で「ARMYしか勝たん！」 と述べたSUGA。一瞬会場は聞き取れなかったようで「？」と無反応。その様子を感じて自信無さげに「しかかたん？すかかたん？」と再度言うと、突如理解した会場はSUGAからの甘い言葉がもらえたことに気づき大歓声となった。「さっきの日本語は違ったみたいですね」とつぶやき、少し照れながらピアノに移動。ドリンクをその上に置いたかと思うと指を慣らすように端から端まで鍵盤に触れて見せ『Life Goes On』がスタートした。会場を見てニコリとする場面もあり、弾き語り熱唱するなか時折咳込む姿も見られSUGAの一生懸命な様子が胸に刺さるシーンとなった。

坂本龍一氏が参加した楽曲『Snooze』では、敬愛する人を前にSUGAの嬉しそうな表情が印象的な映像も

スクリーンに映し出されたのは3月にこの世を去った日本を代表する音楽家・坂本龍一氏と対面したときの様子だった。ピアノに向かい『Snooze』のメロディーラインの一節を坂本が確認するように奏でるシーンが映し出され、傍らに立つSUGAは、うれしさが隠せない様子で微笑みながら、敬愛してやまない坂本の指先を見つめている姿が印象的だ。ピアノを弾き終えて立ち上がる坂本がSUGAに歩み寄り肩を抱き寄せ「いいじゃない。いい子だ」と声をかけた。映像は「長い旅路が平穏でありますように　R.I.P SAKAMOTO RYUICHI」とSUGAのコメントで締めくくられた。会場からは拍手が沸き『Snooze』が始まった。スクリーンに映し出された、雲海の先に輝く太陽や清々しい木々が並ぶ樹海、海面に映し出される一筋の太陽の光など、この曲の壮大な世界観に引き込まれるようだ。続いて『Polar Night』を歌い終えるとステージがまた一つ上がっていった。

「皆さん盛り上がっていますか？本当に盛り上がってますか？ほんま盛り上がってますか？」と、関西弁まで盛り込み問いかけるSUGA。「ストリーミングをご覧のARMYのみなさんもちゃんと楽しんでらっしゃいますか？　公演は僕がやっているのになぜ通訳が声がガラガラなんだろう（笑）」と通訳に触れる場面も。続けて日本語で「僕にとっても幸せな時間でした。あっという間の3日間でした。明日も会いたいですね。最後のステージも全力で楽しみましょう。準備はいいですか？」と会場を指さし「Make some noise～！」と歓声を求めた。最後に選ばれた曲は『AMYGDALA』。ヒビの入ったミラーのような背景スクリーンにはそれぞれのピースにSUGAが映し出され過去のSUGAの姿もその一つピースに組み込まれている。父親のガン、母親の心臓手術やこれまでの自身の精神的な苦悩の記憶と向き合い書かれたこの曲は、それらの過去の苦悩を昇華させ最後にSUGAたるを完結させる。歌い終えたSUGAはステージ上に倒れこみ、オープニングと同様に装束をまとった不気味な男たちに担ぎ上げられ運び出されていった。

SUGAが去ったステージは気が付くとほとんどが吊り上げられ、最後の一つとなっていた。会場には「ミン・ユンギ」のコールが響き渡りアンコールを待つARMYたち。スクリーンには、そんなファンが掲げるパネルがカメラに抜かれ映し出されていく。「BTSが一緒なら年を取るのも怖くない」「ユンギの笑顔は世界を救う」など映し出されると、それを見たファンが共感し合いSUGA不在の会場を盛り上げていった。

アンコールで再登場し3曲を熱唱

止まらない「ミン・ユンギ」コールに応えるように映像が始まった。これまで見てきたストーリーの続きの様だ。目に傷の入った黒い服装のSUGAが洗面所に倒れているところからスタートする。扉を開けて外に出ると窓の外から顔を近づけているのは白い服のSUGA。そしてマッチに火をつけ箱の中に火を放つ。そしてまたその炎に包まれる箱を見つめているのは黒い服のSUGAだった。映像が終わるとともに始まったのは『D-DAY』。「みなさん準備はいいですか？」黒いTシャツにデニム姿でSUGAが登場。ニヤリと笑ったかと思うと歌いながら観客と同じフロアに降りていく。ファンが伸ばす手にタッチをしようかしまいかそぶりを見せると、会場は大いに沸き、数人にタッチをしたところで歌詞を飛ばしてしまった様子のSUGAが笑顔になった。「皆さん一緒に！」と会場に呼びかけ、ステージ脇の吹き出す炎に会場のボルテージも上がり最高潮に。

その流れから「バンドのみなさんを紹介します」とメンバー紹介が始まった。何人かのメンバーはスマホの画面で「ユンギ大好きすぎる」と書かれたハート付きのSUGAの画像や「ありがとうございました。ARMY♡」と日本語で書かれた画面を見せてくれる場面も。最後にチームSUGAのダンサーたちが登場。SUGAと一緒にお辞儀をし、拍手が巻き起こった。

「次は7人で来ます」とＢＴＳメンバーと来日することを約束

ライブも終盤、SUGAが最後に語り始めた「日本公演はいつも楽しくて幸せですね。お分かりだと思うんですけど、僕今日実はコンディションが100％ではありません。今は60～70％まで上がってきました」と、コンディションが万全ではなかったことを打ち明けた。ファンの間ではジャカルタでのライブから公演中に咳こむSUGAの様子が心配されていたのだ。「はじーまん！（日本語で「でも」）」と、茶目っ気のある言い方で切り返し、「100％は次回僕が来たときに確認できると思います。皆さん今日は本当にいい思い出をつくってくださりありがとうございます。僕の公演そしてBTSの公演だけでなく、どこの公演に行っても皆さん今日の様に遊んでください。本当に残念ではありますが、本当に最後の公演になります」と次の公演を示唆しつつ、コロナ禍を経てようやく本来のライブの様に声援を楽しめたファンへの思いも語った。さらに、「次回僕が日本で公演をする際には7人で公演を行います。皆さんの思い出の中に素敵な思い出だけが残ることを願っています」と続け、BTSで戻ってくることをファンに約束。最後は日本語で「本当に本当にありがとうございました。今日みなさんがしてくれた応援忘れませーん。またみんなで楽しみましょう。準備はいいですか？　さーけーべー！」と呼びかけると、会場からはこの日最大の大絶叫が巻き起こり、SUGAはそれを見てうなずきながら腕を振り回してさらに客席をあおり盛り上げた。

アミボムだけの光が美しい会場の景色の中、鳴り響くユンギコール

『Never Mind』では時折せき込む様子を見せながら歌うSUGA。「ミン・ユンギ」コールが鳴り響く中アミボムが輝く会場を見上げるとSUGAは砂糖のように甘い笑顔を垣間見せた。日本公演は海外公演とは異なり、公演中にスマホを向けている観客がいない。SUGAにとっても、ファンが自分たちの目だけでまっすぐにSUGAをみつめ、純粋にアミボムの光だけが広がる景色は日本公演ならではの特別なものになったに違いない。

気が付けばもうステージは全て上に吊り上げられてしまいアリーナの観客と同じフロアでフィナーレを迎えていた。23曲目最後は『The Last』。格子状に防犯カメラのような映像であらゆる角度から映し出されるSUGA。歌い終えるや、こともなげにそのままステージを去っていった。一見そっけなく感じられる終わり方だが、そこにはSUGAの清々しい解放が感じられるようだった。

【PROFILE】BTS/SUGA
韓国の7人組ボーイズグループBTSのメンバー。グループではリードラッパーとして、RM、J-HOPEらとともにラップパートを担当。これまで、BTSは世界各国のヒットチャートで記録を更新、『Dynamite』『Butter』などの記録的ヒット曲でさらなる地位を獲得。国内外の名だたるミュージックアワードで数々の賞を受賞するなど快進撃を続けていたが、メンバーの兵役にともない現在はそれぞれが個人活動に邁進中。SUGAはソロ名義であるAgust Dとして初の公式ソロ・アルバム『D-DAY』をリリース。現在ワールドツアー「SUGA | Agust D TOUR D-DAY 」で世界各地を巡り公演中。