SUGAが自身のトラウマと向き合い昇華していく半生を独自の世界観で展開! ラッパーSUGAたる存在感を圧倒的に魅せたステージをレポート②
2023.6.10 19:30韓国の7人組ボーイズグループBTSのメンバーSUGAの自身のソロ活動で初となるワールドツアー「SUGA | Agust D TOUR D-DAY」の日本公演が、神奈川・横浜 ぴあアリーナMMにて6月2日、3日、4日の3日間に渡り開催された。entaxでは日本公演最終日である3日目の様子をフルレポートする。
BTSのメンバーSUGAはこれまで、別名義であるAgust Dとしても楽曲を発表してきた。この名前は自身の故郷である大邱(Daegu)と町 (Town)の頭文字と、活動名であるSUGAを合わせ逆さにしたもの。ラッパーとしてBTSでは表現できなかった楽曲をAgust Dとして生み出してきた。今回のソロアルバム『D-DAY』ツアーのステージでは、もがき苦しみ葛藤を経て解放へとつながるラッパーSUGAの生きざまを十二分に見せつけられることになった。
午後17時過ぎ、3日目の公演がスタート
激しい雨と雷鳴が会場を包みこみ、前方のスクリーンに映し出されたのはバイクの事故現場で仰向けになるSUGA。韓国民俗楽器「奚琴(けいきん・韓国語でヘグム)」の音色でイントロが流れ始めると薄暗いステージでは不気味にフードを被った男たちが仰向けのままのSUGAを担いできて床に置いた。立ち上がったSUGAは黒いジャケットとパンツで登場。会場の大歓声のなかステージ上を激しく移動しながら、いきなりフルスロットルに1曲目の『Haegeum』を歌い上げた。同音異義語で「解禁」という意味を持つこの曲は、自分を制限するものから解放するという今回のSUGAのステージで大きな意味を持ち、オープニングからその世界観をまざまざと体感することになる。
ダンサーたちが登場し、黒い羽織を着せたかと思うと、その眼差しを正面にあげた瞬間『Daechwita』がスタート。繰り返す「Daechwita!Daechwita!…」の声が観客席と一体となり一気に会場は一つに。続いてスクリーン画面いっぱいのCGのSUGAの顔が映し出され、こちらをのぞき込んでいる様な様子から始まったのは『Agust D』。次第に画面はオレンジとブルーの二つに分かれ、激しく歌うSUGAの姿が線対象に映し出された。「皆さんこんばんはD-DAYショーへようこそ。最後の公演です。全力で行きます。では行ってみましょう!」と、日本語で呼びかけるとファンからは大きな声援が響いた。続いて始まったのは『give it to me』。マイクを会場に向けたり、ニヒルに笑う様子もうかがえた。
「乾杯!」SUGAの笑顔に歓喜
曲が終わるとSUGAは「ARMYのみなさん今晩は! SUGAでーす。皆さんに会えて、うれしいです。日本でのソロコンサートは初めてですごく楽しみでしたー。もう最後の公演。寂しいでーす」と日本語でコメント。オープニングから激しいパフォーマンスを繰り広げ、その世界観のすごさに息を呑んだARMY(BTSファンの呼称)たちも、いつものSUGAの笑顔を見ることが出来てうれしそうな様子。「ストリーミングを見ている方も楽しんでください。そういった意味で乾杯!」と言うとグラスの飲み物を持ち上げ乾杯してみせた。「BTSのSUGAとして初めてお見せするステージを準備しました。楽しみですか?ほんとに楽しみですか?」と会場に問いかけニコリと微笑んだ。
BTSメンバーから寄せ書きされたギター登場にファンも涙
おもむろにギターを手にして椅子に座ったSUGA。ピックガードが螺鈿細工でデザインされたギターをよく見ると表板には様々な寄せ書きがされている。このギターはARMYたちの間ではすでに知られた、BTSメンバー6人からの寄せ書きがされたものなのだ。4月末に自身の公式Instagramでそのギターを使って演奏する動画が公開されるや、ギターに寄せ書きされたメンバーのコメントはSNSなどでもファンによる翻訳が広まり大きな話題となった。ギターには「けが無く無事にツアーを楽しんできてね。テレビで見るよ」(JIN)、「Safe tour!!」(RM)、「ユンギヒョン、無事にツアーを完走出来ますように。Love U bruh-」(J-HOPE)「元気にいってらっしゃい-リトルジェリー-」(JIMIN)「ファイティン、ユンギ♡」(V)、「ユンギ メリーミー♡ 病気しないように!ファイティン!」(JUNG KOOK)と、ソロツアーに向けて頑張るBTS次男のSUGAに向けた暖かな応援コメントが書かれていた。そんな6人分の思いの詰まったギターを持って登場しファンも感激しきり。ステージ中央の椅子に座ると、おもむろに調弦しBTSの『Trivia 轉:Seesaw』を歌い始めファンを大いに喜ばせた。
続いて、ドリンクを片手にステージの下へ降りたSUGA。ランプが置かれたサイドテーブルの隣にあるカウチに座り歌いだしたのは『SDL』。スクリーンにはブラウン管のテレビ画面の中で歌っている姿が映し出された。曲の終わりに「んーっま!」とキスの音が響き渡ると会場を沸かせた。
静かな歌い出しで始まったのは『People』。ステージ中央で歌う姿がスクリーン映し出され、会場の埋め尽くすアミボム(BTS公式ペンライト)の光を時折見つめるような様子を見せた。そしてこのライブで使用されているSUGAのマイクとイヤホンは螺鈿細工のデザインが施されていて、大きく画面に映し出される度、ひときわその美しく飾られた手元や耳元に目が行ってしまう。
IUが参加している曲『People Pt.2(feat.IU)』が始まると、「皆さん一緒に歌いましょう、One ! Two! Three!」とIUのパートを観客に任せ大合唱が響き渡る。その声に耳を傾けたり、うなずいたり「アイ、アイ」と相槌を入れたりと、ファンとともに歌い上げた。「ではもう一度雰囲気を変えてみましょうか?」と会場に問いかけると「OK 、OK、OK、、、」と始まったのは『Moonlight』。髪をかき上げながらリズムを取り時折嬉しそうな表情覗かせた。
赤い炎の中、背中を向けた姿で登場して始まったのは『Burn It』。天井へ向けて噴き出す炎がステージを取り囲み、炎の中を飛び跳ねるようにステージを進むSUGA。この頃、ステージが一つ二つと吊り上げられていく様子に気が付く。ステージは15枚ほどのパネルで構成されていて、少しずつステージの形が変化していくようだ。
ユンギ・SUGA・Agust D の3つのアイデンティティが交錯する
会場ではオープニング映像の続きを思わせる映像が始まった。事故現場に倒れていた黒い服を着たSUGAが現れ「Yunki EXIST IN MEMORY」が始まった。続いて「SUGA LOST IN MEMORY」というタイトルとともに白い服を着たSUGAが現れ、煙草を吹かす。部屋のドアの覗き窓から外の様子をうかがうと黒い服を着たSUGAが銃口を向けていた。「Agust D THE CHASER」のタイトルで始まった映像はモノクロームの世界観。目元に傷のあるSUGAはAgust D の様。血液を思わせる黄色い液体が部屋のあちらこちらに残されており、己の手のひらにもべったりと液体が付いているところで映像は終わる。ユンギ・SUGA・Agust D の3つのアイデンティティが交錯する映像はまさにSUGAが自身の過去のトラウマと向き合い昇華していくプロセスを描いている様だ。
【PROFILE】BTS/SUGA
韓国の7人組ボーイズグループBTSのメンバー。グループではリードラッパーとして、RM、J-HOPEらとともにラップパートを担当。これまで、BTSは世界各国のヒットチャートで記録を更新、『Dynamite』『Butter』などの記録的ヒット曲でさらなる地位を獲得。国内外の名だたるミュージックアワードで数々の賞を受賞するなど快進撃を続けていたが、メンバーの兵役にともない現在はそれぞれが個人活動に邁進中。SUGAはソロ名義であるAgust Dとして初の公式ソロ・アルバム『D-DAY』をリリース。現在ワールドツアー「SUGA | Agust D TOUR D-DAY 」で世界各地を巡り公演中。