多国籍バンドALI単独インタビュー 「残酷なものもリアルなものも、素直に書いていった」
2023.5.2 13:00待望のフルアルバムを完成させた多国籍バンドALI。『MUSIC WORLD』というタイトルで、音楽で世界を、宇宙を一周するような気持ちにさせたいという思いで制作されたが、彼らの原点である日本を象徴する作品も収録されている。それが山下達郎のカバー楽曲『SPARKLE』なのだが、なぜ彼らはこのナンバーを選んだのか。その背景と、アルバムができあがった手ごたえについて尋ねてみた。
■日本を表現するのは山下達郎さんのカバーだと思った
――今回のアルバム7曲目には、山下達郎さんのカバー楽曲『SPARKLE』が収録されています。ALIと山下達郎さんの楽曲というのは、意外な組み合わせだと思ったのですが、どういった経緯でこのナンバーをやろうと決められたのでしょうか?
LEO アルバムを『MUSIC WORLD』と名付けて、世界、世界と言うけれど、お前らの来たところを忘れちゃいけんだろうと、リトルLEOもずっと言っていて(笑)。それでMADE IN TOKYOというか、MADE IN JAPANを大事にしながら、世界に行きたかったんです。日本から出るのではなくて、日本は世界の一部だから、自然にやれば世界じゃないか、と思っているんですよ。そのルーツをちゃんとやらなきゃ、ということで、達郎さんの曲をやりたい、となって。
でも達郎さんはカバーをやる時に、“その曲に何か勝てる部分がなくてはやらない”と言われていたので、俺らも1番象徴的なリフをまったく弾かずに、ど派手に、ラテンにしようと決めました。
――なぜラテンだったんですか?
LEO 急に理由もなく降りてきたんですよね。「ラテンでやるわ」とみんなに伝えてポンっといった感じでやって、2時間ぐらいでできたんですよ。
CÉSAR そうでしたね。
LEO 「これだ!」って確信しましたね。それで達郎さんと吉田美奈子さん(『SPARKLE』の作詞を担当)は、カバー申請した楽曲を聴いてくださるんです。正直なところ、最初は無理かなと思っていたんですけれど、すべてOKをいただいて。本当に感謝しています。
CÉSAR バンドでいろいろあって、この先、音楽はできないかもしれないという真っ暗な時に、とりあえず毎週スタジオには入っていて。その時に勉強のためだったり、何かをしていないと落ち着かなかったので、いろいろカバーしていたんです。
達郎さんの曲をいくつもやったんですけれど、『SPARKLE』ももちろん入っていて。
でも今回、別アレンジとしてこういうラテンのフレーバーにして。1回、日本でできたものがハワイに行って、ラテンの要素を持ってきて日本でまた出せるというのが、遠回りしていて面白いなと思います。
そもそも僕らは、達郎さんがラジオや雑誌で紹介する音楽とすごくハモっているんですよ。LEOさんが「これをやろう」と言った曲が、達郎さんがラジオで紹介していた曲だったり。僕がレコードを掘っている時にいいなと思った音楽は、達郎さんが紹介されていたり。
達郎さんは日本で1番の音楽ラバーだと思いますし、シュガー・ベイブの時からチームですごく楽しんで音楽をやっていらっしゃる姿勢も非常にリスペクトしていて。“日本代表で僕たちが出すんだったら、達郎さんの曲だ”と思ったんです。
■世界中から届く感想がうれしい
――ラストは壮大で胸に迫ってくる『(BUT)WONDERFUL』で締めくくられます。
LEO 『(BUT)WONDERFUL』は『NEVER SAY GOODBYE feat.Mummy-D』とオセロみたいになっている曲で、同じ目線というか、生き様ということについて触れています。
歌詞としても、この世は本当に散々なことだらけだけど、何を見てきて、何を求めて生きていくの? という、そういう声に対して戦う曲というか。基本的に俺は戦ってばかりで、全曲ファイトソングなんですよね。何に戦っているかというと、人生を戦っている。その人生のいろいろな側面が、聴いている人のある一面と重なり合ったら、もうそれだけで十分幸せで、そういういった面で素直に書けた曲だと思います。
タイトルについては、この世は嫌なニュースが多いし、この先どうなるんだろうと思うけれど、せめて音楽を聴いている時だけは、さっきCÉSARが言っていたように、その人の子どもの時の記憶とか、自分の特別な記憶と一致して、“人生は美しいと思う瞬間が描けたら”という意味で、『(BUT)WONDERFUL』にしました。基本的には世界がどうしようもないものだということも肯定した上で、それでもすばらしいと、両方肯定したいという願いも入っていますね。
LUTHFI 制作時はLEOがめちゃくちゃ忙しくて。“こういう曲”というイメージをもらって、“任せるから”と言われたんです。それでいろいろやり取りをしていったんですけれど、僕が書いた歌詞がかなり通っていて。僕が表す言葉とLEOが言いたいことが一致して、同じことを考えていたんだな、というのが分かって、すごくうれしかったですね。
――ファンの方にとっても本当に待望の作品で、さらにまたここからたくさんのリスナーを獲得していく1枚だと確信していますが、実際にできあがっていかがでしたか?
LEO 今回は内面にひたすらフォーカスを当てて、残酷なものもリアルなものも、なるべく素直に書こうと思って作ったので、終わった後は結構しんどくて。これから2年ぐらい、どうすればいいか分からないな、と思っていたんです。
でも今は、さっそくやりたいことに向かって次に進めていて。おそらく“ALIって何だろう?”と思ったら、ずっと聴かれるアルバムにはちゃんとなったので、よかったなと思います。
またそれができたことによって、もっと挑戦したいことというか、フォーカスしたいことができているので、幸せですね。今は世界中からいろいろな人の感想が届いていて、それを1つずつ訳しているんですけれど、本当にうれしく思います。
【ALI Profile】
Vo.でリーダーのLEOを中心とした全員ハーフの多国籍バンド。東京/渋谷発。FUNK、SOUL、JAZZ、LATINなどのルーツミュージックをベースにHIP HOP、ROCK、SKAなどをミックスしたクロスオーバーな音楽性で注目を集めている。TVアニメ『呪術廻戦』第一期EDテーマの『LOST IN PARADISE feat.AKLO』が日本のみならず世界的バイラルヒットとなった。