シンガーソングライター秦 基博単独インタビュー「ライブではお客さんに自分たちが作った景色に入ってもらい、気持ちを交換したい」
2023.4.28 12:004月7日放送の『バズリズム02』に出演された秦 基博さん。entax取材班が行った独自取材の第2弾は、アルバムタイトル『Paint Like a Child』にちなみ、絵に関連した質問に答えてもらった。また4月29日からスタートするツアー『HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2023-Paint Like a Child』の見どころについても伺った。
■絵を描くことと曲を書くことの共通点は“視点”
――秦さんは幼い時、絵を描くのがお好きだったそうですが、どのような絵を描かれていたのでしょうか?
絵といっても、たいしたものではないですよ。漫画を模写していた感じです。『ドラゴンボール』とかを、チラシの裏に描いていました。
――絵を描くことと音楽制作は、共通するものを感じられることがありますか?
自分にとっては、曲を書くことは絵を描くことと少し似ています。景色を描いていくとか、実際どんな色なのかとか、そこに何があるのかとか、構図とか。
あとは視点ですね。どこに視点があるのかによって景色が変わってくるし、その中で何を切り取って絵にするのか、何を切り取って曲にするのか、という視点が似ているかもしれないですね。
――今、心ひかれる絵のジャンルはありますか?
それこそアルバムの曲(4曲目『Life is Art !』)の歌詞の中にも入れたように、ピカソとかゴッホとか。以前ゴッホの展示も見に行きました。筆致というんでしょうか。なんだか圧倒されました。でも、絵に関してはまったくくわしくはないんですよ。
――今回リリースされたアルバム『Paint Like a Child』のジャケット写真とブックレットには、46人の子どもたちが描いた巨大な絵が使われています。子どもたちの作品を見て、どのようなことを感じられましたか?
幼稚園生の子たちが描くところに立ち会っていたんですけど、本当に自由というものをみんなが表していて。ルールもないし、発想に関しても固定概念がない。自分だったらある程度“こうやって描くのかな?”というイメージのもとでやると思うんですけど、色の合わせ方や筆の使い方、線の描き方など、そこに出てくるものはそれぞれに本当に自由で。子どもが描く線というのは、本当に自由なんだ、というのを改めて感じました。
――アルバム1曲目の『Paint Like a Child』にも、<もっと 自由になれるよ>という歌詞がありますね。どうしても大人になると、自由さを失いがちになります。
成長していろいろなことを知識として得ていったり、経験を積んでいったりするのは自然なことだし、それは悪だとは思わないんですけれど。その先にまた、ある意味ピュアなものや無垢(むく)なものが待っているんだとすれば、表現というものはすごく面白いものだな、と思います。
ピカソは偉大すぎるのであまり参考にならないのですが(笑)、僕の近しい、10年、20年さらにキャリアを積んでいる先輩方を見ても、やはりいつも音楽を本当に楽しんでいると感じます。真剣に遊んでいるというさまは、すぐ近くでも感じているので。『Paint Like a Child』という言葉は、そういうことに近いのかな、と思っています。
――4月末から全国ツアーが始まりますね。どのようなライブになりそうですか?
1つはアルバムツアーなので、『Paint Like a Child』というアルバムの世界をライブで再構築する、ということではあるんです。ただバンドと一緒に回る全国ツアーもすごく久々なんですよね。全国の方々とそれこそ音楽の楽しさを共有できるようなライブ作りができたらいいな、と思っています。
――バンドと回ると、どんなところが面白いと感じられますか?
アルバムの世界を、いろいろなアンサンブルで届けることができるので。弾き語りでライブをしたりすることも多いですけど、また違う魅力がそこに生まれてくるかな、と思います。
楽曲の世界をどう色づけていくか、作っていくか、自分とバンドを含めて描いていくんですけど、たぶん来てくださった方がそこにどういうものを加えてくださるか、またはお互いに交換できるかで、それこそその時にしかないライブになると思うので。そこが未知数ではあるんですけど、楽しいところなんです。
まずはこちらが作った景色に入ってもらって、いろいろな気持ちを交換しながらライブを作っていくことができたら、本当にその時にしかない音楽になるんじゃないかと思います。
【秦基博 Profile】
宮崎県生まれ、横浜育ち。2006年11月シングル『シンクロ』でデビュー。2014年、映画『STAND BY ME ドラえもん』主題歌『ひまわりの約束』が大ヒット、その後も数々の映画、CM、TV番組のテーマ曲を担当。“鋼と硝子で出来た声”と称される歌声と、叙情性豊かなソングライティングで注目を集める一方、多彩なライブ活動を展開。