板尾創路・伊原六花、出演した印象的な作品は?「絶対家に帰ったら1回台本を読む日々」【インタビュー後編】

2024.11.8 11:55
板尾創路と伊原六花の写真

今年で6年目を迎える、劇団・お客様・審査員やスタッフなど「参加する全ての人がさまざまな形でつながる演劇祭」としてスタートした『関西演劇祭』。フェスティバル・ディレクターを務める板尾創路と、アンバサダーとして『関西演劇祭2024』を応援する伊原六花にインタビュー。演技で大事にしていることや、これまで出演した中で印象的な作品を語った。【インタビュー後編】
(前編はこちら

Q:ご自身が演じられる際、大事にしていることは?

板尾:誰でもそうだと思うんですけど、どうしても人間なので自分の心地よさで演技とかお芝居とかしてしまいがち。でもそうならないように、自己満足にならないように、観客からどう見えるかを意識して気をつけています。たまにいるじゃないですか、陶酔してる方とか…(笑)それがハマってたらいいんですけどね!(笑)自分の気持ちも、自分の間合いも大事ですけど、作品としては観ていただく方のことを考えるようにしています。

──アドリブで演じられることもありますか?

板尾:稽古の時は全然入れますね!そっちの方が面白いんじゃないかなと。動きが決まってからは、急に変えてしまうと相手の人はびっくりするので(笑)決まった中で、自分が責任の持てる範囲でやることはあります。

板尾創路と伊原六花の写真

伊原:私は…嘘(うそ)ではなく本当に板尾さんと同じことを思っていました!舞台には演出家がいて、映画だったら監督がいて、その方の頭の中にあるものをどう表現できるかなっていつも考えています。もちろん自分のやりたいようにとか、「私はこう思います」っていう提案はあったとしても、最終のバランスは前で観てくれる方が思ったことが大事なのかなって思っているので、「変に自分でやりすぎないように」って思っています。映像であれば、最終的に編集で間合いとかも詰めたりいろいろ調整があるけど、演劇にはそれがなくて。ためようと思えば10秒ぐらい間をためられちゃうから(笑)そこをどうするかって本当にバランスの感覚の話になってくると思うので、できるだけ演出家の意図を汲(く)みたいなと。自分だったら普段はこうするけど、「この演出家のこの作品だとそれは違うよね」ってなるのであれば、今回はそっちでやってみる。「そうしたらまた新しいものが見えるかも」みたいな気持ちで、できるだけ「私はこうです!」って主張しすぎないようには気をつけています。

伊原六花の写真

──演劇と映像作品で、演じる時の違いはありますか?

板尾:あまり違いはないかなと思うんですけど、やっぱり前にお客さんがいるのといないのは全然違う。映像作品は、カメラの角度とか編集とか、後からいろいろ調整するから、カメラの向こうの人のことは意識はしないけど、演劇はここでやってることが全て。前にお客さんがいるから前に伝わるようにっていう意識を持ちながらやっているので、その意識の違いはありますね。舞台上で後ろを向いていても、お客さんの位置は変わらないから。
伊原:確かにそうですね…確かに……(笑)
板尾:あははっ(笑)
伊原:今すごく“そうだな”って思っちゃいました(笑)私はカメラの時は“こっちから撮られてる”とか
意識しないようにしています。

板尾創路と伊原六花の写真

Q:これまでご自身が演じたもの、観劇したもので印象的な作品、思い出エピソードは?

板尾:初めて小演劇に出たのは、当時Piperという劇団の後藤ひろひとさんに声を掛けられた後藤ひろひと作・演出の『ニコラスマクファーソン』。本当に初めてで、まだ舞台のことなんて全くわからなくてあんなに稽古したことがなかったから、「すごいな、演劇って1か月も稽古するんや」ってすごく印象的でした。めんどくさいこともいっぱいあって(笑)そんな中でも、こんなに自由度のないことをみんな何回も何回も稽古しているから、「よっぽど演劇が好きやねんな」って思ってました。僕はお笑い芸人なので「飽きひんのかな、すごいな」って。

──大変だと思っても続けている理由は?

板尾:僕みたいな者でも誘ってくださる人がいる。「こいつもうええわ」って思われたら多分声も掛かってなかったけど、ありがたいことにそれなりに演劇には声を掛けてもらっているので、今にいたっています。最初の頃は演劇の世界はあまりよくわからなかった、お笑いとは全然違うなとは感じましたね。演劇はお笑いとは違うメッセージ性みたいなものがすごくあって、大人数で一つのものを作り上げていく面白さや仲間意識から、だんだん演劇の楽しさや魅力に気が付いて、今も続けている理由になっていますね。

板尾創路の写真

伊原:私は、この前出演させていただいた、後藤ひろひとさんの『ダブリンの鐘つきカビ人間』という作品です。私が出る前にやっていた公演の台本をいただいて、それが面白すぎて!台本でこんなに興奮したの初めて
っていうぐらい!今まで3回やられてた公演のDVDがあったんですけど、それをすぐ買ってすぐ全部観ました!これまではストレートプレイだったけど、今回はミュージカル化することになって、音楽も全部オリジナルで!もう…楽しみすぎて、出演が決まってから稽古までの間に何個かお仕事があったんですけど、“絶対お家に帰ったら1回ダブリンの台本読んで”っていう日々を過ごしていました!(笑)もう本当に稽古が楽しみで!

伊原六花の写真

伊原:稽古の間もすごく楽しかったですし、後藤さんも何度か来てくださって、「台本は今回ルールブックだと思って、ルールブック通りすればもちろん面白いし、逆に破ったらもっと面白くなるかもしれないので、皆さん自由にやってください」とおっしゃってくださって。ほかにも、「遊気舎でのダブリンを観てて今回参加します」っていう松尾貴史さんがいたり、演出のウォーリー木下さんも「元々遊気舎で観てて」っていうのがあったりして、その『ダブリンの鐘つきカビ人間』に対するその熱量がすごく私は好きで。ミュージカルなんですけど、ミュージカルすぎない、ちゃんと演劇の面白さみたいなのも盛り沢山の作品になっています。「日本でのオリジナルミュージカルの正解ってここなんじゃないかな」と思うぐらい、すごく好きな作品でした!

Q:最後に、『関西演劇祭』を楽しみにされている方、気になっている方にメッセージをお願いします。

板尾:もしチケットを買っていただいている人がいるなら、間違いなく演劇の面白さの新たな1ページが始まると思います。1日とは言わず、何日か来ていただけたらもっとこの『関西演劇祭』の魅力に取り憑(つ)かれるような気がします。実は、劇場で演劇を観るのはあまり得意じゃないんです、長時間で結構つらかったり。『関西演劇祭』は45分間の公演、その後にティーチイン、休憩という流れを大体1日3回くらい。僕はフェスティバル・ディレクターなので朝から晩まで6本お芝居観るんです。最初「こんなん絶対無理やわ。1日6本なんて死んでまうわ」と思ってたんですけど(笑)不思議なもので…全然観れるんですよね。その不思議な感覚は本当に体感していただかないとわからないと思う。観るのが得意じゃない、集中力もないこの僕が言うんやから間違いない!(笑)皆さんにも朝から晩まで…(笑)たくさん観ていただくと良さが伝わると思いますので、よろしくお願いいたします!

板尾創路と伊原六花の写真

伊原:皆さん趣味があって、お金を使いたいものってそれぞれあるとは思うんですけど、本当にこの演劇っていうものは板尾さんもおっしゃったように体感してもらわないとなかなか言葉だけでは伝えにくいものがあると思っています。「なんか良かったな」とか「なんか突き刺さったな」とか、漠然とした思いでもちょっと自分の心の日常では動かない部分が動いたりする瞬間、強制的に動かされる瞬間があると思うんです。体験にお金を払うみたいな感覚で、ちょっと覗(のぞ)いてみていただけたら、「面白い!」ってハマっていただける方が増えるんじゃないかなと。ぜひ、まずは1公演、2公演でもいいので観に来てもらえるとうれしいです!私もどんな劇団のどんな作品が観れるのかまだわかっていないので、未知なところはあるんですけど、それがちょっと楽しみだなと思っています!

『関西演劇祭2024』
<日程>2024年11月16日(土)~24日(日)
※11月19日、20日は休演日※11月16日(土)オープニングセレモニー(セレモニー後に公演あり)
※11月24日(日)表彰式のみ
<場所>COOL JAPAN PARK OSAKA SSホール(大阪市中央区大阪城3-6)
<参加劇団>暁月-AKATSUKI-、EVKK/エレベーター企画、エンニュイ、劇団☆kocho、劇団さいおうば、
The Stone Ageヘンドリックス、teamキーチェーン、つぼみ大革命、fukui劇、WAO!エンターテイメント
<アンバサダー>伊原六花
<フェスティバル・ディレクター>板尾創路(お笑いコンビ130R・俳優・映画監督)
<公式サイト>はこちら

写真:©entax

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